http://www.asyura2.com/13/nature5/msg/372.html
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STAP細胞論文の「事実上の立役者」とも言われる理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹副センター長が16日、不正問題発覚後、初めて記者会見した。STAP細胞ができるという現象(STAP現象)は本当なのか「何度も自問自答している」と揺れる思いを吐露。自らに言い聞かせるように「存在を前提にしないと容易に説明できないデータがある」と強調したが、どれも存在を示す決定的証拠とは言い切れない。
笹井氏がSTAP現象を否定できない根拠の第1にあげたのが、特殊な動画撮影装置でとらえたSTAP細胞生成の瞬間だ。同センターが誇る「ライブ・セル・イメージング」と呼ばれる技術で、思い入れも強いようだ。論文発表時、テレビのニュースなどでも動画が繰り返し放映された。
そこにはうごめく細胞の一部がいくつかの塊を作り、活発に動いて緑色の蛍光を発する様子が写っている。この蛍光は、細胞が様々な組織の細胞に育つ「多能性」に関連した遺伝子が働いていることを示すとされる。ただ、受精卵から得られる万能細胞のES細胞(胚性幹細胞)が混入していると疑う声や、死んだ細胞が自家発光しているとの見方も出ていた。
笹井氏は装置が全自動に近いため、途中で人為的な操作をするのは不可能で、別の細胞を混ぜるといった不正は考えられないと主張した。しかし、装置に入れた細胞が本当に、論文どおりに血液細胞の一種であるリンパ球を酸で処理して作った細胞なのか、はっきり証明したわけではない。笹井氏自身は「ピペットを持って実験はしていない」。細胞はすべて小保方氏が作っており、ほかの人は独自には再現できていない。
STAP細胞は増殖できず、比較的短期間で死んでしまうので、様々な実験に使うには増殖能力を持たせたSTAP幹細胞に変える。iPS細胞もES細胞も優れた増殖能力をもつ。英誌ネイチャーに載った小保方氏らの論文や追加で公表した作製手順によると、STAP幹細胞からは、リンパ球から変化したことを示す遺伝子レベルの「目印」を確認できなかった。理研でSTAP現象の検証実験に取り組む丹羽仁史プロジェクトリーダーによると、そもそもこの方法で目印をとらえられる確率は極めて低いという。それなら、もっと別な確実な方法で調べているかというと、そのようなデータは出ていない。笹井氏は「ゲノム(全遺伝情報)解析で簡単に(細胞の種類が)わかる技術もある」と述べたが、具体的なデータは示さなかった。
理研には所属していない研究者によると、ライブ・セル・イメージング技術は、設定を変えれば死んだ細胞を比較的容易に画像で識別できるという。死んだ細胞ではないと断言するからには、その証拠となる画像も示してほしいところだ。
小保方氏はSTAP細胞の万能性を調べるため「奇形腫(テラトーマ)」と呼ばれる特殊な組織を作り、写真を撮って論文に載せたとされる。ところが、理研の調査委員会は、これが博士論文の画像の流用とみられると判断した。小保方氏によると、その後、「真正」の写真を撮り直して、ネイチャー論文の修正用として編集部に送ったという。
問題は、これが真正と言える根拠は何かだ。笹井氏は、写真を撮り直したテラトーマの切片が2012年に血液細胞をもとに作製したSTAP細胞から作ったテラトーマの切片と、「同じ箱(ボックス)にあった」と説明。「形も同じだったので(真正であるという小保方氏の主張の)信ぴょう性は高い」と強調した。
テラトーマの切片を作る作業は、ロースハムの塊を薄くスライスする場面を想像するとわかりやすい。ここで言っているのは、以前に2番目のスライスで写真を撮ったが仕上がりがいまひとつだったので、残っているすぐ隣の3枚目のスライスを使ったようなものだ。しかし、細胞は非常に小さい。どんなにがんばって薄い切片を作っても、「隣のスライス」は「別の細胞」を見ていた可能性がある。真正であるとは言い切れない。
論文が出た時にもっとも関心を集めたものの1つは、STAP細胞が従来の万能細胞では不可能な胎盤にもなったことを示す画像だった。これにもその後、疑義が生じている。本当は胎盤にならなかった、あるいはES細胞、胎盤にのみ成長するTS細胞と呼ばれる細胞などが混ざり、それが胎盤になっただけだとの指摘もある。笹井氏の言い分では、こうした細胞が混ざった場合にはまとまった塊を作りにくく、胎盤を作れるような状態にまで持って行けない。かといって、作ってみたらだめだったという画像もない。
笹井氏は酸などの刺激でSTAP細胞ができるという現象が、「存在しないと思っていたら共著者にはならなかった」と断言した。しかし、小保方氏と一緒に仕事を始めた頃、博士論文に目を通したわけでもないし、以前にネイチャー誌に投稿して、拒絶された論文も詳しく読まなかったという。では、なぜ早い時点から存在すると判断したのだろうか。STAP細胞に深入りすることになった動機も、結局のところやぶの中だ。(編集委員 安藤淳)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGG1603K_W4A410C1000000/?dg=1
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