http://www.asyura2.com/13/nature5/msg/330.html
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理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーは9日の記者会見で、STAP細胞論文の不正問題について初めて釈明した。データの改ざんや捏造(ねつぞう)があったとする理研の調査委員会の報告書に反論したが、主張を裏付ける新たな科学的証拠などはなかった。会見内容を吟味していくと、小保方氏の主張に対する疑問はますます大きくなってしまう。
小保方氏は、問題となっている論文について「現象論を記述したもので、最適条件を記したものではない」と繰り返した。翻訳すると「この論文を見ただけではSTAP細胞が作れなくても仕方ない」と言っているのに等しい。うまく作るためのコツ、料理で言えばレシピは明かせないという。
STAP細胞の論文が発表された当時、書いてある通りにすれば簡単に作れるかのような印象を与えた。ところが、世界の名だたる研究者が再現しようと試みてもうまくいかない。論文の不正のあるなしは別にして、再現性がないならSTAP細胞そのものの信ぴょう性もなくなる、との指摘が出ていた。
今になって、論文は現象論を説明しただけで、レシピとは違うと言われても納得いかない研究者は多いだろう。「再現できないからといって、STAP細胞は否定されない」とも聞こえる。生命科学のある専門家は「逃げ口上のようだ」とあきれたように語った。
小保方氏は会見で、これまでにSTAP細胞の作製に「200回以上成功している」とも明かした。しかし、重要なのは何をもって1回成功したと数えるかだ。論文への疑惑が次々に浮上し始めた頃、理研内で小保方氏以外の研究者が新たにSTAP細胞に近いものを作ったとの情報が流れた。
本当に作れたと言えるためには、元の細胞を受精卵に近い状態にまで戻す初期化と、そこから様々な細胞に成長できる多能性をしっかりと示さなければならない。理研で新たにできたとされる細胞は、こうした変化に関連する遺伝子が働いていたとされるが、それだけでは不十分だ。細胞をマウスの胚に入れ、成長とともにそれが体中に散らばったキメラマウスになることの確認などはできていなかったという。
キメラマウスを200匹も作ろうとすれば、何年もかかるだろう。小保方氏が「成功した」と言うのは、実は遺伝子の働きをチェックしただけかもしれない。証拠として新たに作ったキメラマウスなどを見せてほしかった。会見では、ほかにも小保方氏とは独立にSTAP細胞を作った研究者がいるものの名前は明かせない、としたが、これも「何ができたのか」がはっきりしない。
もう一つ、注目すべきことがある。論文で示されたSTAP細胞は、実は受精卵から作られ再生医療研究でよく使われているES細胞(胚性幹細胞)をとらえていただけではないかとの声が出ている。この疑問に、小保方氏は「研究室でES細胞の培養は一切していなかったので、混入はあり得ない」と断言した。
確かに研究室内では培養していなかったかもしれない。しかし、隣の部屋から持ってきて性質を比べるといったことはできたのではないか。調査委の中間報告が出た時の記者会見で、理研の竹市雅俊発生・再生科学総合研究センター長は「マウスのES細胞は特別の管理下にはなく、他の細胞と同じように扱われている」と明かした。内部の研究者なら、誰でも入手できたわけだ。
STAP細胞の研究は理研の上司、笹井芳樹氏らのほか、米ハーバード大学のチャールズ・バカンティ教授とも共同で進めた。バカンティ教授は細い管に細胞を通して刺激を与えた上で、酸で処理して細胞を初期化して幹細胞にする方法を提唱している。もともとバカンティ教授は、小さな幹細胞が体内に存在すると考えていた。
小保方氏が学生時代に博士論文にまとめた研究はバカンティ教授の方法に近く、細胞を細い管に通していた。会見で小保方氏は、調査委が捏造とした画像に関連して「様々な細胞に刺激を与えると幹細胞になるが、どの細胞を使ったかの記載が(画像に付記されて)ない」と述べた。
もとの細胞や手法が多少違っても、小保方氏にとってはたいしたことない、との考えなのかもしれない。しかし、iPS細胞の例からみても、もとの細胞の種類や作製法はできあがった細胞の性質を大きく左右する。小保方氏の説明は、科学的な厳密さを欠いていると言われても仕方ない。
小保方氏が理研に出した不服申立書は、論文の問題が理研の内部規定と照らし合わせて不正と言えるかどうかがポイントになっている。しかし、そうした論点とは別に、科学的な論理や常識と照らし合わせてよくわからないことをざっとあげただけでもこれだけある。
会見で小保方氏は「未熟な私に研究者としての今後があるなら、STAP細胞が誰かの役に立つ技術になるまで発展させたい」と語り、涙をぬぐった。その言葉が本物なら、何よりもまずSTAP細胞を作るレシピを公開し、世界の研究者の疑問に自らのデータをもとに丁寧に答えることによって、濃くなる一方の霧を晴らしてほしい。
(編集委員 安藤淳)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGG0902X_Z00C14A4000000/?dg=1
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