http://www.asyura2.com/13/nature5/msg/307.html
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「研究者(著者)が慎重にすべての生データを検証するという当然発揮すべき研究のチェック機能が果たされていなかった」。新しい万能細胞として大きな注目を集めたSTAP細胞論文について、理化学研究所の調査委員会は1日、画像に捏造(ねつぞう)などがあったと認定し、小保方(おぼかた)晴子・理研研究ユニットリーダー(30)だけではなく共著者らの責任に言及した。
不正の舞台となった理研発生・再生科学総合研究センター(CDB)で、新たな万能細胞と脚光を浴びることになった「STAP細胞」の研究が始まったのは2010年7月。だが、詳細を知る人は発表までわずかだった。CDB創設にかかわった研究者は「すごい仕事があるとは聞いていたが、研究所内でも極秘で進められていた。論文を見て『これだったのか』と(思った)」。科学史上に名を刻む不正論文が世に送り出された背景には、「極秘プロジェクト」という異例の経緯があった。
小保方氏が、CDBでSTAP細胞の研究に取り組み始めた頃、かっぽう着姿で実験する姿は見られていたが、研究内容を知る人は限られていた。13年3月に研究ユニットリーダーとして採用されても、研究所内の定例セミナーで、発表することはなかった。セミナーは、論文発表前に研究の矛盾点や課題を指摘し合う重要な場であり、若手研究者にとって避けて通れない鍛錬の場だ。
ある理研研究者は「セミナーに一度も出ないのは極めて異例。(競争の激しい)幹細胞分野で隠したい側面があったかもしれないが、結果として不幸なことになってしまった」と話す。
11年に博士号をとったばかりでリーダーとなった小保方氏の助言者に、笹井芳樹・副センター長と丹羽仁史プロジェクトリーダーというベテラン研究者がついたことが、秘密主義を加速させたとみられる。
あるCDB研究者は「秘密主義は笹井先生の方針だった」と指摘する。「極秘にするのが笹井先生のやり方。共同研究者にすら自分のデータを渡さない。その悪い面が出てしまった」。笹井副センター長は、日本を代表する再生医学研究者。研究資金も多く、英科学誌ネイチャーなど一流科学誌に毎年のように論文が掲載される実力者で、表立った批判は少なかった。
当然ながら、国内外の研究者が参加する学会で発表したこともなかった。人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製した山中伸弥・京都大教授でさえ論文発表の約1カ月前、一部のデータは伏せたものの、研究成果の概要を国際学会で発表している。
「生物学の常識を覆す発見」は、小保方氏と助言者らだけの「密室」で生まれ、研究チーム以外の批判の目にさらされることなく、発表された。
http://mainichi.jp/shimen/news/20140402ddm001040225000c.html
崩壊・STAP論文:/中 ゆがんだ研究競争 有名誌への掲載、過度に重視
「今回の問題は、インパクトある研究成果をよりすぐる(英科学誌)ネイチャーなどの有名誌自身の責任も大きい。事実を偽るような重圧に研究者を追い込む環境を作っている」
2013年のノーベル医学生理学賞を受賞したランディ・シェクマン米カリフォルニア大バークリー校教授(細胞生物学)は、毎日新聞の取材に対し、STAP細胞の論文不正問題への危機感をあらわにした。シェクマン教授はノーベル賞受賞決定後、ネイチャーなどの編集方針を「商業主義」と批判し、同誌のほか「サイエンス」「セル」の有名3科学誌に今後論文を投稿しないことを宣言した。
科学誌のランクは、部数ではなく、米情報企業が毎年公表する「インパクトファクター」(IF)という特有の指標による。「ある学術誌に載った1本の論文が一定期間に平均何回、別の論文に引用されるか」を計算したものだ。STAP細胞論文を掲載したネイチャーの最新のIFは総合科学誌トップ。シェクマン教授は「日本の研究者は重要論文を投稿する際にIFを過剰に重視していないか」と分析する。
IFは、科学誌側の権威付けや宣伝、さらには研究者の業績評価にも使われる。脳科学者の宮川剛・藤田保健衛生大教授は「有名誌に論文が出るかどうかで人事、研究費に影響が出る。実験の再現性は二の次で、論文掲載が重視される現状を根底から変える必要がある」と訴える。
この「IF至上主義」が科学界に広がって研究現場をゆがめる一因となっているほか、STAP細胞研究を含む「再生医学研究」分野特有の事情もある。
京都大の山中伸弥教授がヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)の作製に成功したと「セル」に発表した07年以降、政府は再生医学・医療分野の研究費をiPS細胞研究に集中し始めた。安倍政権は昨年、この分野に今後10年間で1100億円の国費を投入すると表明。これらの研究費はiPS細胞研究への投入が柱となり、実用化を推進する関連法も整備された。ある発生生物学研究者は「iPS関連でなければ予算がつきにくくなった」とこぼす。
STAP細胞論文の責任著者の一人で、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹副センター長は、日本が誇る胚性幹細胞(ES細胞)研究の第一人者だ。笹井氏をよく知る理研関係者は「iPS細胞への対抗心が強い笹井先生にとって、今回は巻き返す魅力的な機会に映ったのではないか」。
論文を発表した1月末、理研は記者会見で配った補足資料に、作製期間の違いを強調するため、STAP細胞は魔法使いが作り、iPS細胞は牛が人を引っ張るイラストを添えた。この資料に山中教授は「iPS細胞の作製は大幅に改善されている」と猛反発。複数の関係者によると、2月中旬にこんなことがあった。
笹井氏が山中教授を訪れ、他の研究者が見守る中、「申し訳ありません」と繰り返したという。そして、STAP細胞論文の不正が濃厚となっていた3月18日、理研は「誤解を招く表現があった」と、この資料を撤回することになった。
「ES細胞でもiPS細胞でもない、新たな万能細胞」。再生医学研究の過当競争を勝ち抜くため、STAP細胞論文は、2年近く前から有名誌を狙って投稿を繰り返した末、ネイチャーに採用された。【八田浩輔、須田桃子】
http://mainichi.jp/shimen/news/20140403ddm002040089000c.html
崩壊・STAP論文:/下 「博士」増員あだ 政府が支援、30年で3倍
◇教員足りず放置状態/就職難で質も低下
研究不正に関する教育は大学院からでは間に合わない−−。大阪大は今年度から、リポートや論文の書き方を説明した冊子を全新入生約3500人に配り、授業で活用する。教育担当の東島(ひがしじま)清理事・副学長は「大学1年から他人のリポートを写して合格していると、『これで大丈夫』と思い、だんだん大きな不正につながる。初めからの教育が必要と考えた」と説明する。
冊子は「阪大生のためのアカデミック・ライティング入門」。著作権や文献引用の作法、文章の組み立て方などを分かりやすく示し、コピペ(コピー・アンド・ペースト、複写と張り付け)については「試験のカンニングと同じ」と強調した。冊子に沿い、授業でリポートを書く訓練をする。
STAP細胞論文では、「(切り張りを)やってはいけないという認識がなかった」との小保方(おぼかた)晴子・理化学研究所研究ユニットリーダー(30)の発言が公表され、世間に衝撃を与えた。小保方氏については博士論文にも大量コピペ疑惑が浮上しているうえ、小保方氏と同じ研究科では他の人の博士論文にも多くの疑問点が指摘され、大学が調査に乗り出す事態になっている。
米国立衛生研究所(NIH)で主任研究員を務めるある日本人研究者は、日本人の若手研究者全体の実力低下を感じている。研究の進め方や、論文の書き方から教えなければならないケースが増えているためだ。いずれも大学院で習得しておくべき内容だ。
この研究者は「日本のポスドク(ポスト・ドクトラル・フェロー、博士研究員)のレベルは米国の博士課程の学生にも達していない。一方、安易に成果を求めがちになっている」。ポスドクとは、博士号取得後、常勤職に就かず研究に取り組む研究者。以前は、「日本人は真面目で勤勉」と海外の研究機関で高い評価を得てきた。「今は日本人以外の博士を採用する方が、研究室にプラスに思える」と、この研究者は嘆く。
だが、大学院の学生や、そこで教育を受けた博士のレベル低下の原因は大学側にもある。
政府は、第1期科学技術基本計画(1996〜2000年度)で、科学技術立国を支える人材としてポスドクの増産を目指し、「ポスドク等1万人支援計画」を打ち出した。1981年度に4753人だった博士課程入学者数(全分野)は、2003年度は1万8232人に達し、12年度も1万5557人と、この約30年で3倍まで増えた。
一方、少子化などのあおりで大学経営が厳しいことなどから、学生1人当たりの指導教員数は減る傾向にある。簡単には比較できないが、大学教員数はこの30年で1・7倍にしか増えていない。大学院の学生を増やすだけで、大学院教育の充実が後手に回ってきた恐れがある。
ポスドクを巡る問題に詳しい榎木英介・近畿大講師(42)は「大きい研究室では学生一人一人への指導が行き届きにくく、学生が放置されている状態」と訴える。また、「博士大量生産」の結果、大学院修了後の就職先が確保できず、博士の魅力が低下した。「優秀な学生が博士課程へ進まず、一層の質の低下を招いている。さらに今回の研究不正問題で、日本の博士号の価値が海外から信頼されなくなる恐れがある」と榎木さんは危機感を募らせる。【根本毅、斎藤有香】
http://mainichi.jp/shimen/news/20140405ddm002040029000c.html
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