http://www.asyura2.com/13/nature5/msg/224.html
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以下の記事は、難波紘二 広島大学名誉教授の発行するメールマガジンの転載です。
http://blog.goo.ne.jp/motosuke_t/e/00f0c35b5abd548bd3098066400c1a9f
【STAP細胞論文:剽窃の証拠】
1. 第1論文の構造:小保方第1論文には8人の著者がいる。
そのうち一番責任が重いのは論文執筆者で、この論文の場合、小保方と笹井芳樹が担当したとある。文章能力とか英文作成能力の問題があるから、同僚なり上司が執筆に大きなウェイトを占めることはままあるが、いずれにしても執筆者は研究の内容を理解し、執筆内容が真実であることに責任を負わなければならない。
しかし、今回の事件の場合、理研の笹井芳樹氏の名前は全然出て来ず、もっぱら山梨大に移った、実験担当者の一人に過ぎないはずの若山照彦教授が表に立っているのはどういうわけだろう。
実験を担当したのは、小保方、若山照彦、笹井芳樹、移植実験は小島が行った、と論文には明記してある。
一般には、実験を行ったら、手順と結果を「実験ノート」(英語ではログ・ブックという。航海日誌の意味である)に記載し、蛍光など結果が一過性で保存がきかないものや計器の読み取り数値などは、画像として保存する。
これは各実験者が管理しており、上司や同僚は不審点があればいつでもログ・ブックをチェックできる体制になっているはずだ。また画像や計測値などのデータは、各実験者が保存しており、論文としてまとめる段階で、執筆者が最適の画像やグラフなどの論文用資料の提出を求めるのが普通である。
2/25「産経」は<若山氏は「不作為の単純ミスだと思う。画像は数百枚あり、小保方さんが勘違いで同じものを使ってしまったようだ。私を含め、共著者全員のミス」と話した。>
http://sankei.jp.msn.com/science/news/140225/scn14022508010000-n1.htm
と報じているが、数百枚の画像データを執筆者の小保方が管理するというのは、共同研究のシステムからみて、考えにくいと思う。騒ぎを小規模に収めるために、若山教授が貧乏くじを引いて、泥をかぶろうというのなら別だが。
第1論文は、以下のように8つの小見出しに分かれている。
1.Low pH triggers fate conversion in somatic cells.
2.Low-pH-induced Oct4+ cells have pluripotency.
3.STAP cells compared to ES cells
4.STAP cells from other tissue sources
5.Chimera formation and germline transmission in mice
6.Expandable pluripotent sell lines from STAP cells
7.Discussion
8.Method
この区分は、この種の原著論文には異例というべき、5つの組合せ図により図解されている。
図1=「刺激により惹起されてリンパ球がOct4-GFP+細胞になる」=この図は上記1の小見出し及び本文にほぼ対応している。
Oct4という遺伝子の発現は「多潜能細胞」の特徴である。この遺伝子にgfpという「蛍光タンパク」を作る遺伝子をくっつけた「人工遺伝子Oct4-gfp」をあらかじめC57BL/6という系統のマウスに遺伝子導入しておく。これが実験動物である。
実験1:この遺伝子導入マウスの生後1週間めの新生児脾臓から、まずリンパ球分画を取りだし、ついでフローサイトメーター(FACS)を使ってCD45+の細胞だけを取り出す。これが実験対象の細胞である。CD45は「白血球共通分化抗原」とも呼ばれ、リンパ球、顆粒球など白血球に広く分布している分化抗原である。
実はこの箇所は一文が5行あり、1)脾臓からリンパ球分画を取り出した後で、FACSによりCD45+細胞を回収したのか、2)それとも脾臓からCD45+細胞をいきなり回収したのかが、かならずしも明瞭でない。
ともかくこのCD45+細胞をpH5.7、30分というストレスに曝した後、培養液にLIF(白血病阻止因子)とB27という物質を加えて7日間培養すると、Oct4-gfp遺伝子の活性化が起こり、細胞が緑色の蛍光を発するようになる。
ここまでの実験を著者らは30回繰り返し、すべてに蛍光細胞の出現を認めたとしている。
これが全実験の基本である。
次に著者らはこのCD45+細胞を「T細胞」、「B細胞」、「造血幹細胞」の3種に分け、それぞれに実験1を繰り返し、蛍光細胞が出現するかどうかを調べている。
T細胞の分離にはCD90という分化抗原による識別が用いられている。
B細胞の分離にはCD19という分化抗原による識別が用いられている。
造血幹細胞の分離にはCD34という分化抗原による識別が用いられている。
その結果、T細胞とB細胞の場合、実験1の方法で、7日後に生存細胞の20〜50%にOct4-gfpの蛍光が認められ、CD34+細胞の場合は2%以下の細胞が蛍光陽性になったにすぎないとしている。
【こりゃダメだ】ここまで書いてきて、ふとネットを見たら興味あるブログ「小保方晴子のSTAP細胞論文の疑惑」に接した。
http://stapcells.blogspot.jp/
ここにはとんでもない指摘が行われている。小保方第1論文には「方法」の頁があり、そこに核型分析の方法が述べられている(p.9)が、10行にわたる文章はドイツ・ハイデルベルグの研究者J. Guoらの論文(In Vitro Cell Biol Anim. 2005: 41(8-9), 278-283)からの丸写しであることが指摘されている。それでいて、著者らはこの論文を引用していない。
みながブログを仔細に点検するいとまがないかと思われるので、ここに要点を再掲する。
上記、Guo J.らの「マウス胎児性幹細胞のマルチカラー核型分析」と題する論文には以下の文章がある。
<Metaphase spreads of the ES cells were performed as follows. Subconfluent ES cells were arrested in metaphase by adding colcemid (final concentration 0.270 μg/ml) to the culture medium for 2.5 h at 37° C in 5% CO2.
Cells were washed with PBS, treated with trypsin-ethylenediaminetetraacetic acid (EDTA), resuspended into cell medium and centrifuged for 5 min at 1200 rpm. To the cell pellet in 3 ml of PBS, 7 ml of a prewarmed hypotonic 0.0375 M KCl solution was added.
Cells were incubated for 20 min at 37° C. Cells were centrifuged for 5 min at 1200 rpm and the pellet was resuspended in 3–5 ml of 0.0375 M KCl solution.
The cells were fixed with methanol/acetic acid (3:1, vol: vol) by gently pipetting. Fixation was performed four times prior to spreading the cells on glass slides. >
この論文の本文は無料では見られないが、ここにあることは間違いない。
http://link.springer.com/article/10.1290/990771.1#page-1
小保方論文はこうなっている。
<Karyotype analysis was performed by Multicolor FISH analysis (M-FISH). Subconfluent STAP stem cells were arrested in metaphase by colcemid (final concentration 0.270 µg ml−1) to the culture medium for 2.5 h at 37 °C in 5% CO2.
Cells were washed with PBS, treated with trypsin and EDTA (EDTA), re-suspended into cell medium and centrifuged for 5 min at 1,200 r.p.m. To the cell pellet in 3 ml of PBS, 7 ml of a pre-warmed hypotonic 0.0375 M KC1 solution was added.
Cells were incubated for 20 min at 37 °C. Cells were centrifuged for 5 min at 1,200 r.p.m. and the pellet was re-suspended in 3–5 ml of 0.0375 M KC1 solution.
The cells were fixed with methanol/acetic acid (3:1; vol/vol) by gently pipetting. Fixation was performed four times before spreading the cells on glass slides. >
赤字部分(< >)が両論文に共通した文章で、これだけの一致が偶然に起こることはありえない。
しかも原文には正しく表記されているのに、剽窃文では「EDTA(EDTA)」とEDTAが二重表記されたり、HCl(塩酸)が「HC1」となるなど、明らかな誤りがある。
画像の食い違いは1枚か2枚だから「単純ミス」という言い逃れがきくが、このような10行にもわたる文章が偶然に一致することなどありえない。論文コピーを手元に置き、写し取ったものと結論できる。これは明らかに剽窃であり、犯罪行為である。まったく同じ手順を用いたのなら、論文を引用して「Guoらの方法によった」と書けばすむことである。それをしないで文章のみをコピーしたのは悪質であり、悪意の存在を示すと考えて良い。
この行為だけでネイチャーから論文取り下げに値する。実際他の雑誌で剽窃のため論文取り下げになったり、大学を辞職した研究者はたくさんいる。
こういう証拠があるのなら、それ以外の証拠を探しても意味がない。
理化研やネイチャーやハーヴァード大や早稲田大がどういう調査結果を出すか分からないが、私自身に関してはもう結論が出た。「この論文は完全な食わせ物である」と。
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