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2006 年 1 月 23 日
独立行政法人 理化学研究所
「科学研究上の不正行為への基本的対応方針」制定のお知らせ
独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、平成 17 年 12 月 22 日付けで「科学研究上の不正行為への基本的対応方針」を制定しました。
研究不正行為に対する対応措置について、事前の研究者自身の倫理涵養に重きを置 き、これら問題が発生した際は、組織として、適正かつ厳正な対応をし、不正が認定された場合は原則公表するということにより、問題を隠蔽することなく一般社会への 説明責任を果たします。
また、この基本的対応方針に先んじて理研科学者会議 ※ 1 は、平成 17 年 11 月 2 日付けで「科学研究における不正行為とその防止に対する声明」 ※ 2 を発表しています。 一昨年冬、理化学研究所では、研究所職員が発表した研究論文に不正があったことを公表しています。このような不正に対する深い反省と社会的責任の自覚から、「研 究不正」を許さないとする声明について科学者自らが発議をし、また、研究所として 「不正行為」に対する方針を定めました。
今後、このような科学研究上の不正が起こりにくい体制を構築し、理研全体の意識 改革を図るとともに、やる気のある科学者が誇りを持って研究活動が出来、社会に役 立つ研究成果が生み出せるよう、日々努める所存です。
1. 制定の経緯等
平成 16 年 8 月に理研内部研究者により研究論文の不正発表疑惑について内部告発があり、調査委員会による調査の結果、 2本の論文について不正があり、1本については不正があった可能性が高いことを確認しました。同年 12 月にこの問題を公表した際、今後の再発防止対策として「科学研究の不正行為」に対する理研の基本的考え方の策定を約束しています。
平成 17 年 4 月、所内リスク等の防止と告発対応業務等を担当する監査・コンプライアンス室を本部に設置し、不正行為防止策等について、さまざま検討が重ねられました。
その結果、理研科学者コミュニティである理研科学者会議から「科学研究におけ る不正行為とその防止に対する声明」が発表され、科学者自らが研究不正の問題に 対して強く関心を払い、不正問題に対して断固とした姿勢が打ち出されました。 理研としては、研究不正を未然に防止する為の方策ならびに研究不正が疑われる 問題が起こったときの事後対応策等について「科学研究上の不正行為への基本的対 応方針」を制定しました。
2. 科学研究上の不正行為への基本的対応方針【全文】
平成 17 年 12 月 22 日
理事会決定事項
科学研究上の不正行為への基本的対応方針
1. はじめに
科学研究上の不正行為は、科学者として倫理にもとる行為であり、それゆえ、これを行った研究者は倫理的に非難される。しかも、これにとどまらず、独立行 政法人理化学研究所(以下「研究所」という。)に所属する研究者が不正行為を行 うことは、職員の体面を汚すとともに、研究所に対する名誉と信用を著しく傷つ けることにより、研究所に重大な損害を与えるものである。
本基本的対応方針は、研究所に所属する研究者らによる研究不正の防止を図る こと及び研究所において研究不正問題が発生した場合の迅速かつ適正な解決に資 することを目的として、研究所における研究活動の行動規準及び遵守事項、並びに研究所に所属する研究者らに科学研究上の不正行為に関する疑義が生じた場合 の、研究所の対応及び関係者のとるべき措置などを定めたものである。
2. 研究不正
「研究不正」とは、科学研究上の不正行為であり、研究の提案、実行、見直し 及び研究結果を報告する場合における、次に掲げる行為をいう。ただし、悪意のない間違い及び意見の相違は研究不正に含まないものとする。(米国連邦科学技術政策局 : 研究不正行為に関する連邦政府規律 2000.12.6 連邦官報 pp. 76260-76264 の定義に準じる。)
( 1 )捏造( fabrication ) : データや実験結果を作り上げ、それらを記録または報告すること。
( 2 )改ざん( falsification ) : 研究試料・機材・過程に小細工を加えたり、データや研究結果を変えたり省略することにより、研究を正しく行わないこと。
( 3 )盗用( plagiarism ) : 他人の考え、作業内容、結果や文章を適切な了承なしに流用すること。
3. 対象者
研究所の研究業務に従事する全ての者を対象とする。
4. 行動規準及び遵守事項
4-1 行動規準
研究業務に従事する者は、研究所職員としての誇りを持ち、かつ、その使命を自覚し、次に掲げる事項をその職務に係る行動規準として活動しなけれ ばならない。
( 1 )研究不正を行わないこと。
( 2 )研究不正に荷担しないこと。
( 3 )周りの者に対して研究不正をさせないこと。
4-2 遵守事項
各研究室、研究チームなどの主任研究員、グループディレクター、チームリーダーらは、健全な研究活動を保持し、かつ、研究不正が起こらない研究環境を形成するため、次に掲げる事項を遵守するものとする。
( 1 )各研究室及び研究チームなどにおいて、研究レポート、各種計測データ、実験手続きなどに関し、適宜確認すること。
( 2 )研究員、テクニカルスタッフ、学生ら研究に携わる者には、ラボノートブックなどが個人の私的記録ではなく、「研究成果物の取扱について
(改正平成 17 年 3 月 31 日通達第 14 号)」の有体物により各研究室などの所属長が適切に管理するものであって、「定年制職員就業規程」、「任期制職員就業規程」、「基礎科学特別研究員制度実施細則」などの 研究成果の取扱規定により研究所に帰属し、「会計規程」などに準じて研究所が管理すべきものであるという意識を持たせるとともに、ラボ ノートブックの記載の方法に関し指導を徹底すること。
( 3 )ラボノートブックと各種計測データなどを記録した紙・電子記録媒体な どは、論文など成果物の発表後も一定期間(特段の定めがない場合は5年間)保管し、他の研究者らからの問い合わせ、調査照会などにも対 応できるようにすること。
( 4 )論文を共同で発表するときには、責任著者と共著者との間で責任の分担を確認すること。
5. 研究不正に係る事実関係の説明責任
研究所に所属する研究者らで研究不正に係る疑義を生ぜしめた者は、研究所に対し、事実関係を誠実に説明する責任を負う。
6. 研究不正への対応及び措置
6-1 疑義発生時の対応
監査・コンプライアンス室は、研究不正に関する相談や調査の依頼又は通報を随時受け付ける。監査・コンプライアンス室長は事案に応じて予備調査 の要否を決定するものとする。
また、研究所に関する研究不正の問題がマスコミ報道などによって発覚した場合も同様に対応する。
6-1-1 予備調査の実施
監査・コンプライアンス室長は、前項による調査が必要であると決定した ときは、研究不正の疑義が生じている研究分野における所内の専門家らの協力を得て予備調査を実施する。
6-1-2 調査委員会の設置
監査・コンプライアンス室長は、前項の予備調査の結果を理事長に報告し、理事長が本調査の実施が必要と認めた場合、「相談等に関する調査委員会の設置に関する規程」に基づき、速やかに外部専門家を含めた調査委員会を設 置する。
6-1-3 調査時の措置
監査・コンプライアンス室長は、調査に必要な資料を保全するため必要と 認めるときは、関係各部署などに対し、次の各号を実施するに必要な措置を 要請することができる。
( 1 )研究不正の疑義を受けた者(以下「被疑者」という。)の出勤禁止 (有給)
( 2 )被疑者の当該調査に係る利害関係者との接触禁止
( 3 )所属研究室などの一時閉鎖
( 4 )調査に係る物品の確保
( 5 )その他必要な措置
6-1-4 研究室員らの業務遂行手段の確保
監査・コンプライアンス室長は、被疑者以外の研究室員らの業務遂行手段 を確保するために、関係各部署などに必要な措置を要請するものとする。ま た、閉鎖研究室において試料などの保全を必要とする場合も同様とする。
6-2 被疑者からの弁明の聴取
調査委員会は、被疑者の弁明を必ず聞くものとする。
6-3 調査結果の開示
監査・コンプライアンス室長は、調査結果を調査関係者に開示する。
6-4 不服申立
監査・コンプライアンス室長が開示した調査結果に対し、調査関係者において不服があるときは、調査結果を開示した日から起算して 10 日以内に、監査・コンプライアンス室長に不服申し立てを行うことができる。
6-5 研究不正が認定された場合の対応措置 6-5-1 研究不正の認定を受けた者の処分
理事長は、調査委員会の調査結果に基づき、被疑者の研究不正の事実を認 定したときは、所内規程に基づき設置された懲戒委員会の議を経て、研究不 正の認定を受けた者(以下「不正認定者」という。)の処分を決定する。
6-5-2 研究費使用の禁止
不正認定者には、研究所の指示する日以後禁止が解除されるまでの間、内外の競争的研究資金を含め(研究機器などの維持以外の)研究費の使用を禁 止する。
6-5-3 研究費の返還
不正認定者には、既に使用した研究費について、その全部または一部を返還させることがある。
6-5-4 調査結果の公表
調査委員会の調査結果の概要などは、原則として公表するものとする。
6-5-5 所属長らへの対応
当該不正認定者に関係する研究室の所属長らに管理責任があると認められるときは、就業規程に照らし別途必要な措置を講ずる。
6-6 研究不正が認定されなかった場合の対応措置
調査の結果に基づき、理事長が被疑者の研究不正の事実はないと認めたときは、監査・コンプライアンス室長は、関係各部署などに次の各号に示す必要な措置を要請するものとする。
( 1 )研究不正に係る疑義が生じた際に講じた対応措置の解除
( 2 )全ての調査関係者へ被疑者の発表論文などが適正であることの通知
( 3 )被疑者の不利益発生防止策の実施並びに名誉回復にかかる措置(必要に応じて公表も含む。)
( 4 )被疑者への精神面も含めた支援の実施
( 5 )その他必要な措置
7. 留意事項 7-1 活動支援
研究所は、被疑者以外の室員らについて、調査開始後、速やかに精神面も含めて可能な限りの支援を行う。
7-2 調査協力者らに不利益をもたらす行為などの阻止
( 1 )研究所は、研究不正の対応及び措置に関し、調査協力者らが不利益を受けることのないよう十分に配慮するものとする。
( 2 )研究所は、予備調査結果を含め、調査結果において十分な根拠がない場合に研究者らを陥れることを目的とした行為があったときは、それを研究妨害とみなし、当該行為者に対し、就業規程に従って必要な措置を講じる。
7-3 協力義務
役職員らは、研究不正の調査等について協力しなければならない。
(問い合わせ先)
独立行政法人理化学研究所 監査・コンプライアンス室
室長 加部 文和
Tel : 048-467-4794 / Fax : 048-462-4798
(報道担当)
独立行政法人理化学研究所 広報室
Tel : 048-467-9272 / Fax : 048-462-4715
Mail : koho@riken.jp
http://www.riken.jp/~/media/riken/pr/topics/2006/20060123_1/20060123_1.pdf
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