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2017年08月18日 17:16 公開
米南北戦争の戦いが終わってから150年以上がたつが、敗れた側を歴史にどう残すかについて、今も激しい議論が繰り広げられてる。
全米各地には、南部連合に捧げられた像が何百と現存している。南部連合とは、米政府に反旗を翻した南部各州のことだ。そしてこの像がしばしば、奴隷制や黒人抑圧という米国のいやな歴史を思い起こさせるものとなっている。
各地の地方自治体がこのところ、こうした像の撤去を相次ぎ決定した。それに対して複数の集団が、それは米国の歴史と南部文化を破壊しようとする動きだと声高に反発している。
ドナルド・トランプ大統領は17日、論争に割って入り、議論の的となっている数々の記念碑を「美しい」とツイート。銅像の禁欲的な美が各地から失われてしまうのは、「非常に残念だ」と嘆いた。
いつ設置されたのか
南部連合の記念碑のほとんどは、南北戦争が1865年に終わった数十年後に建てられた。戦後復興期の資金不足が主な原因だ。
19世紀末から20世紀初頭にかけて、解放されたばかりの奴隷から平等な市民権を奪うため、南部の州で様々な黒人差別法が施行された時代になって、南部軍の記念碑が公共の場に次々と設置されるようになった。
記念碑建立の第2波は1950〜1960年代、人種隔離廃止とアフリカ系米国人の権利平等を求める公民権運動の時代に押し寄せた。
ヘイト集団や公民権運動を追跡するアラバマの南部貧困法律センター(SPLC)による報告書は、「公民権運動は、人種分離主義者の反発を引き起こした」と指摘する。
南部連合の像は700体以上あり、そのほとんどは南部にあるが、一部は南部連合ではなかった州にもある。
どういう人たちの像なのか
記念碑の一部は南部連合の歩兵たちに捧げられたものだが、多くはロバート・E・リー将軍やトマス・「ストーンウォール」・ジャクソン将軍など、著名人の像だ。
ジャクソン将軍の子孫は16日、バージニア州議会議事堂から同将軍の像を撤去するよう求めた。バージニア州シャーロッツビルでの白人至上主義者の集会において、「南部連合の像が存在することによって、人種差別主義者に主張の拠り所を与えてしまうと分かった」からだと説明している。
将軍の子孫がバージニア州政府に宛てた公開書簡の内容が、ツイッターで広く拡散し、それと共に、「記念碑は撤去しなくては(Monuments Must Go)」というフレーズが米国のツイッターでトレンド入りした。
白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン」(KKK)やネオナチ支持者による「右派の団結」集会の後、リー将軍の玄孫は「不寛容や憎悪のメッセージを推進する人たちが、リー将軍の思い出を間違って利用する」ことを非難した。
極右行進の参加者たちは、名目上はリー将軍像撤去の市議会決定に反対するため、シャーロッツビルに集まっていたからだ。
なぜ問題なのか
南部連合のシンボルを擁護する人のほとんどは、記念碑は奴隷制を記念するものではないという立場だ。
擁護派は、南部連合軍は奴隷制維持のために戦ったのではなく、「州の権利」を守り連邦制に反対するための戦争だったと主張する。南部連合の「戦旗」のようなシンボルは、南部の歴史と文化を記念するものだと言うのだ。
しかし歴史家のほとんどは、南北戦争の原因が奴隷制度だったと一致している。人種的少数派、特に黒人の米国人は、公共の場にそのシンボルが存在するのは、不快だし侮辱的だと感じている。
メーン州のポール・ルページ知事は17日、像の撤去は単に歴史のうわべを取りつくろうだけだと述べた。
メーン州のラジオ局WGANラジオに出演したルページ知事は、「歴史を消してしまうなら、未来の世代はどう学べるのか? 吐き気がする」と話し、像の撤去は2001年9月11日の同時多発テロ事件の記念碑を、世界貿易センターや国防総省から撤去するようなものと「そっくり」だと付け足した。
「私にしてみれば、今すぐニューヨークに行って、9/11で命を落とした人たちの記念碑を撤去するようなものだ。そう言うことだろう」
トランプ大統領もまたこの言い分を応用し、独立宣言を起草したトマス・ジェファーソン第3代大統領やジョージ・ワシントン初代大統領についても、奴隷主だったことを理由に記念碑を撤去しようとリベラル派が言い出すまで時間の問題だと主張した。
なぜ今になって像が問題に
2015年に南北戦争の終戦150周年を祝ったわずか数日後、サウスカロライナ州の黒人教会で白人男性が信者9人を殺害する事件が起こった。
南部連合旗の前でポーズを取る犯人の写真は、多くの米国人の見方を変えた。南部連合旗は無害な文化や反骨精神のシンボルだとは、もはや思われなくなったのだ。
サウスカロライナ州政府が州議会議事堂から南部連合旗を撤去すると決めた後、多くの地方自治体が、地元にあるシンボルを撤去して後に続いた。
そして今、シャーロッツビルでの暴力事件がきっかけとなり、記念碑撤去の第2波が起きている。
今週だけでもオハイオ州、ノースカロライナ州、メリーランド州で、南部連合の記念碑が次々に損壊された。
ノースカロライナ州では今週、怒る群衆が兵士の銅像を引き下ろした。しかしノースカロライナ州など一部の州では、地方自治体は議会承認なしに南部連合の記念碑を撤去できないと条例で定められている。
米マリスト大学による今週の世論調査では、米国人の62%が「歴史的なシンボル」として像を残すべきと考えており、やや意外なことに、アフリカ系米国人の44%がこれに同意していた。
(英語記事 Why the fuss over Confederate statues?)
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