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「非正規から正規へ」雇用の転換が始まった――“反アベノミクス”に反論
http://nikkan-spa.jp/883248
連載07【不安の正体――アベノミクスの是非を問う】
▼増えているのは非正規雇用だけ?
非正規雇用者の増加をもって「アベノミクスは失敗だ」と否定する人々について反論を重ねてきました。それでも正規雇用が増えなければ今の雇用状況が改善していると納得できない人がいるのは確かです。そこで、アベノミクスをどうしても否定したい方にとって残念なお知らせを一つ。非正規から正規への雇用転換はすでに始まっていて、それを裏付けるデータがあるのです。
⇒【資料】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=883250
確かに図1を見ると非正規雇用者だけが増加し、正規雇用者数は増えていないため、非正規から正規への雇用の転換など起こっていないかのように見えます。しかし、これはデータ全体を眺めているからそう見えるのであって、中身はすでに変化を始めているのです。
▼非正規雇用→正規雇用への転換はすでに起きている
雇用データの中身を詳しく見てみると、増加している100万人以上の非正規雇用者の約9割が、60歳以上の男女(6割)と60歳以下の女性(3割)であり、54歳以下の男女については1割程でしかありません。しかしながら、54歳以下において雇用状況に何も変化がないのかというとそうではありません。非正規から正規雇用に転職した人、正規から非正規雇用に転職した人の推移をみてましょう(図2)。
⇒【グラフ】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=883251
一目瞭然なのですが、2013年のアベノミクス開始以降、非正規から正規雇用に転職した人が、正規から非正規雇用に転職した人を上回っています。
つまり、54歳以下の生産労働人口において、非正規雇用から正規雇用への転換が始まっていたということになります。新聞テレビは、非正規雇用が100万人増えているという事象だけを報じてきたため、重要な変化、現役世代である15〜54歳における「非正規から正規への転換」が見えなくなっていたのです。
また、60歳以上の男女と、59歳以下の女性の非正規雇用者が増えた理由について、「生活が苦しくなって働かざるをえなくなった人が増えた」と主張するエコノミストが存在します。以前『“反アベノミクス”に反論。「雇用の質は改善していない」のウソ』で説明したように「不本意非正規雇用者数」が減少していることからも、それは間違いであることがわかります。
⇒【グラフ】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=883252
不本意非正規雇用者とは、本当は正社員になりたいが、正社員になれなかった、もしくはほかに適当な仕事がなかったために「不本意ながら非正規雇用に甘んじている人」のことを指します。不本意非正規雇用者が非正規雇用者に占める割合は20%以下と意外に少なく、しかも徐々にその割合は減少傾向にあります。つまり、80%以上の非正規雇用は、望んで非正規雇用の仕事に従事しているのであって、いやいや非正規で働いているわけではありません。
そもそも、企業は消費需要が増えるなどして、新たに人手が必要になったから従業員を増やすのであって、非正規雇用者が増えた理由は単純に雇用需要が増えたからです。民主党政権時代は雇用者数が減ってしましたが(図4)、当時は庶民の生活が豊かになって働く必要がなくなったから雇用者数が減ったというのでしょうか? 違いますよね。
⇒【グラフ】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=883253
つまり、アベノミクス開始以降は景気が回復し、人手不足が起き、定年退職した男性を非正規雇用で雇い入れる企業が増えた結果、55歳以上の男性の雇用が増加したのです。また、小売や外食産業が人手不足のため時給を引き上げ(図5)、パートやアルバイトの募集枠を拡大したことから「時間もあるしパートで働いてみようか」という年配の女性が増えたのだと思います。働きたい人が増えたから雇用者が増えるようなことはありえません。因果関係が逆です。もしそれが正しいなら雇用が増えるか否かは国民の働く気持ち次第になり、経済対策は不要です。むしろ景気を悪くすれば、雇用者数が増えることになるので、いかに無茶苦茶な論理であるかということがわかります。働こうと思えば働ける仕事がある。それが好景気というものです。
⇒【グラフ】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=883254
▼今後も若年層を中心に正社員への転換は進む
15〜54歳で正社員への転換が進んでいることについて、マスコミの報道とはまったく異なるため意外に思われるかもしれませんが、図6のように正社員の有効求人倍率が過去最高になっていることを考えれば至極当然のことです。
⇒【グラフ】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=883255
来春2016年3月卒業予定の大学生・大学院生対象の大卒求人倍率は1.73倍となっており、昨年度に比べると0.12ポイントも上昇しました。企業による人材獲得競争が激しさを増しており、今後も若年層を中心に正規雇用の増加など、雇用環境の改善が進んでいくことはほぼ確実でしょう。アベノミクスを継続すれば日本の経済は間違いなく復活するのです。ただし、これ以上の消費費増税は愚の骨頂であると申し上げておきます。
◆まとめ
・15〜54歳では「非正規→正規雇用」への転換が始まっている
・55歳以上の非正規雇用が増えたのは、景気回復で雇用需要が増えたため
・「景気悪化で働かざるをえなくなったから、55歳以上の非正規雇用者が増えた」は誤り(不本意非正規雇用者数の減少からも明らか)
・正社員の有効求人倍率は統計を取り始めて以来の最高値を更新し続けている
・新卒の求人も増加傾向。今後も正社員への転換は進むと予想される
【山本博一】
1980年生まれ。経済ブロガー。ブログ「ひろのひとりごと」を主宰。医療機器メーカーに務める現役サラリーマン。30代子育て世代の視点から日本経済を分析、同世代のために役立つ情報を発信している。近著に『日本経済が頂点に立つこれだけの理由』(彩図社)。4児のパパ
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