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http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0MK0ED20150324
コラム:ロシアの核挑発で近づく「世界の終末」
2015年 03月 24日 15:35 JST
Sharon Squassoni
[23日 ロイター] - ロシアがクリミアを併合して1年が過ぎ、このところ核兵器をめぐる観測が飛び交っている。ロシアの複数の当局者は今月に入り、クリミア半島に核兵器を配備する可能性について言及した。
ロシア外務省のウリヤノフ不拡散・軍備管理問題局長は、クリミアに現在どんな兵器が存在するかや、核兵器を配備する計画があるかどうかは「知らない」とした上で、「原則としてロシアは(核配備を)行うことができる」と語った。
また、プーチン大統領は、クリミア併合1年に合わせて国営テレビが放送した特別番組の中で、クリミアの併合時には核兵器の使用も準備していたと明らかにした。
核兵器の問題に関して言えば、むやみな憶測は得策ではない。原則として、核保有国は多くのことが可能であり、過去を振り返っても、国家の指導者たちは実際に多くの選択肢を検討していたとみられる。しかし、ウクライナとクリミアは過去20年以上にわたって非核地帯だった。その現実を維持することが、誰にとっても最善の利益だ。
クリミア半島への核兵器配備は、ロシアにとって、戦術的にも戦略的にも安全保障上の利点とはならない。ロシアは旧ソ連時代の1987年に米国との間で結んだ中距離核戦力廃棄条約で、中射程の弾道ミサイルや戦術核兵器の廃棄を決めた。ロシアは現在の通常戦力に不満を持っているかもしれないが、今の北大西洋条約機構(NATO)もそこまでの強敵ではない。皮肉なことに、ロシアが戦術核兵器をクリミアに配備すれば、NATOも戦力強化の選択肢に動くかもしれない。
今から20年以上前、ソ連崩壊に伴う「流出核」の問題は米国だけでなく、ロシアと旧ソ連構成国にとっても頭の痛い問題だった。当時のウクライナは戦術核を数千発保有する世界第3位の核保有国。1990年代初めに同国は自国に残った核兵器の放棄と引き換えに、主権や国境の尊重を取り付け、1994年に非核保有国として核拡散防止条約に加盟した。
クリミア核配備の言及は無責任かつ無分別だと一蹴できるかもしれないが、核兵器と軍縮に関するロシアの実際の行動を考えると、そこには暗い影が浮かび上がる。実際、米科学誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ」が管理する「世界終末時計」の針は今年に入って2分進められ、人類の滅亡を示す午前零時まであと残り3分となった。冷戦時代の1947年に設置された終末時計は、もともとは核戦争による人類滅亡までの時間を象徴するもの。最近は気候変動などの要因も考慮して毎年更新されている。
戦略核兵器のさらなる削減を交渉する計画は頓挫しており、米ロ間の新戦略兵器削減条約(新START)に基づく監視も思うように進んでいない。戦術核兵器削減の交渉の望みは、通常兵器の弱さを補うための戦術核兵器の重要性をロシアが強調したことで、事実上消散した。さらに気がかりなのは、ロシアによる地上発射巡航ミサイル「イスカンデルK」の開発だ。米国はこれを、中距離核戦力廃棄条約の違反だと非難している。
通常兵器の削減でも、ロシアの協力は行き詰まっている。同国当局者は先週、欧州通常戦力条約(CFE)合同協議グループからの離脱も公式に発表した。
現在の米ロ関係に横たわる不満の大きさを考えれば、これらの挑発には「厄介払い」の態度で臨むべきと考えたがる専門家もいるかもしれない。しかし、国家間で緊張が高まっている時には頭を冷やす時間が必要であり、米国とロシアも例外ではない。軍縮条約は伝統的に、戦略的課題に安定性と予見性を与えるだけでなく、米ロの政治関係が冷え込んだ時でさえ、両国の当局者が職務上の信頼関係を構築し、対話の窓を開けておくための余裕を与えてきた。両国の当局者は今、これまで以上に交渉のテーブルに戻る必要がある。そして、自分の意見を話すだけでなく、相手の主張にも耳を傾けるべきだろう。
*筆者は米首都ワシントンにあるシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」の上級研究員で、2010年から拡散防止プログラムを率いている。過去に米議会調査部や米国務省、米軍備管理軍縮庁で要職を歴任。現在は米科学誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ」の主要メンバーでもある。
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