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ちあきなおみ×友川かずき 夜を急ぐ人
夜を急ぐ人 ちあきなおみ 1977
上のVTRは、その年の紅白歌合戦に先駆ける十月にNHKホールで公開収録された「ビッグショー」での晴れ姿。
年末の紅白で披露されたパフォーマンスはこれを上まわるものだったと記憶するのだが、残念ながらその映像は今はyoutubeにない。
確か台詞まわしと振り付け、更には纏ったオーラの妖気がもう一段濃厚で激烈だったような気がするが、記憶の中で思い出は時節と共に育ち化けるものなのでそんな気がするだけかも知れない。
ちあきなおみは音楽のジャンルに対する仕切り意識が元々薄い歌手の筆頭で、未知の領域に果敢に挑むに足る実力に応分な彼女のチャレンジスピリットは、取り込んだ各ジャンルの持つ固有のエキスを常に自家薬籠中にて融合発酵させ、オリジナル・ザ・ちあきの世界をバラエティーに富んだh味わい深いものに仕立て上げる役割を果たしてきた。
この年の紅白のこの曲で彼女は、日本歌謡に於ける天才歌姫の座と伝説を不動のものにした。(と私は思ってる)
伝説となる出来事には後年、ある時点を境に後世の人間達によって定説が逆転再評価され語り継がれる事になるのに、その時・その場で・目の当たりにする証人の大半を占めるパンピーにはショックが大なる故何が何やらその斬新な価値を即座には正しく理解できないものが多々ある。
まあ、そんな逸話も含めて伝説と呼ぶわけだが、正に紅白で「夜を急ぐ人」を歌うちあきなおみを目撃した瞬間の我々がそうであった。
ちあきのパフォーマンスを前に、 NHKホールを埋める3800人と年の瀬の憩いの一時をTVの前で家族と共に寛ぐ日本全国の視聴者の目という目はどれもかれも点になり、それまで交わされていた語らいは一斉に止み、沈黙がその場を支配する事になる。
ダーティハリーが逃げる犯人の背中に銃口の照準を合わせて浴びせる第一声は「フリーズ! 」。
そうフリーズしちゃったの。
揺れる幼稚園バスの車内、キャーとどよめく園児達の顔を見つめて引率の先生がなだめて発する言葉は「氷!」。
そう凍りついちゃったの。
これを全国に「震撼」が走ったなどと大上段に表現する向きもあるのだが、寸分の間を置いて「うわっ」と声を上げた子供の居た家庭はかなりの数に上ったろうと想像もする。
ちなみにビデオリサーチがマークしたこの日この紅白の視聴率は77%。
この頃の紅白にはまだまだ国民的番組としての権威があった。
饒舌を感動が拒否する故のものとは些か異なる沈黙と、天城越えならぬ自らのキャパ越えに悶えるパンピーの溜め息が、 ゆく年の全国津々浦々の茶の間を覆うのだっだ。
俗にお笑いの世界では客の半歩先を行けと言われる。
歩が同じなら客受けしない。一歩先では客がついて来れない。
その伝が流行り歌に適用されるのか否かは定かでないが、そんな小賢しいお約束も唖然とする客の反応も何のその、そんな些事を鼻でせせら笑うかの如く蹴散らしながら突っ走るのが「歌を演じる」いや「役を謡う」希代の一歌入魂の女、ちあきなおみという歌手なのだ。
衆目の及ばぬずーっと先の遠くの地点をこれゴールと定めて、前衛一直線に駆け抜けてしまう剛の者。
彼女は我々を置き去りにしたまま遠く彼方に単騎疾走した。
衝撃を忘却の彼方に追いやり、流れるは幾年月か。
我々が何ら躊躇無く、と言うより暗い翳りから聞こえるΓおいでおいで」の声に魅せられ、志願してΓ夜を急ぐ人」に相見えるまでには実に十五年の歳月を要する。
志村けんや中島まりによる物真似も多少の呼び水にはなったか。
きっかけは90年代初頭に喝采を浴びた二つの番組、 NHK BS「歌伝説」のちあきなおみ特集とたけしの「誰でもピカソ」のちあきなおみ特集の放映だ。
あらら、一年一歩と仮定するなら十五歩先、半歩ずつ刻むなら三十歩先まで来てたのね。
やっと時代が彼女に追いついたのだ。
オールドファン以上に真っ先に反応したのは、リアルタイムにこの曲を知らない或はあのちあきの歌声と姿態に恐怖を覚えた、当時は子供だった若い世代であった。
New 「おお、すげー!ロックじゃん!」
Old「だ、だろう?
New「おー、パンクじゃねえか!」
Old「そ、そうなんか?!」(定義を教えろ ニャロメ)
今現在では当たり前に受け入れられてる、過去に演じられた前衛的パフォーマンスというものが存在する。 そして今現在の前衛的パフォーマンスが後年間違いなく当を得るものであるなら、現時点から見るそれは未来からやって来たパフォーマンスと言い換える事が可能だ。
未来からのパフォーマンスと遭遇するいまびと達の当惑顔、そんなコントラストはシネマでも良く描かれる。
例えばこんな感じ。
うーん、広末涼子の踊りがスカだ。
劇団ひとりと 取って付けたような表情のエキストラも931。
もう一番。
これだな。こんな感じ。
夜を急ぐ人 ちあきなおみ
先のステージでは、 宮川泰編曲、Dr ポンタ、B 後藤次年、EG 芳野藤丸のシングルバージョン(AGが素晴らしいのだが名が明かされてない)が基になってるのだが、これはミッキー吉野編曲、演奏ゴダイゴのアルバムバージョン。
友川かずきさん Γ夜を急ぐ人(ちあきなおみに捧ぐ)」
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