淡路島5人殺害事件 淡路島5人殺害事件とは、2015年(平成27年)3月9日午前7時過ぎに兵庫県淡路島の洲本市中川原町中川原で、犯行当時40歳の住民の男Xにより、2家族の男女5人が殺害された殺人事件。 2015年3月9日午前7時15分頃、洲本市中川原町中川原の民家から「人が刺された」と110番通報があった。兵庫県警察洲本警察署署員が駆け付けたところ、この民家に住む兵庫県洲本土木事務所嘱託職員の男性A(当時62歳)、その妻B(当時59歳)、その母親C(当時84歳)が殺害されているのが発見された。また近くに住む無職男性D(当時82歳)、その妻の無職女性E(当時79歳)も遺体で発見された。
Aの娘は事件当時家にいたが、父親のAから「逃げろ」と言われて別の民家に逃げ込み難を逃れた後、午前7時15分頃に「お父さん、お母さんが刺された」と110番通報した。通報により洲本署員が駆けつけ、家の外でAが、家の中でB・C両名が倒れている状態で発見され、いずれも搬送先の病院で死亡が確認された。また周辺家屋を調べたところD夫婦の遺体も発見された[1][2]。
午前7時45分頃、現場近くの路上で血の付いた衣服を着ていた男X(犯行当時40歳)に署員が職務質問したところ、事件への関与を認めたため、A一家に対する殺人未遂の容疑で現行犯逮捕した。 被害者5人の遺体の状況などから、兵庫県警はXが強い殺意を持った上で就寝中もしくは寝起きのD・Eを襲撃し、その後A一家を襲撃したとみた。
また、Xの自宅から複数の刃物が押収され、うち1本は凶器に使われたとみられるサバイバルナイフだった。 逮捕当時Xは刃物は持っていなかったため、犯行後にいったん帰宅して刃物を自宅に置いてきた可能性がある。 Xが事件前にインターネットでナイフを購入していたことも判明した。 被害者家族とXとの間には近隣トラブルがあったのではないかと推測されている。
洲本市役所によると、Dの娘が事件直前の3月4日に同市による無料法律相談に参加し、応対した弁護士にXに関係すると見られるトラブルについて対処法などを尋ねたという。事件当時、Dの娘と孫は外出していたため難を逃れていた。 X宅と被害者家族の家はいずれも半径約50mの範囲に存在する。
Xは両親が離婚しており、自宅で父親と祖母の3人暮らしだったが、Xは離れで1人暮らししていた。 Xは会員制交流サイトである Facebook や Twitter などに本名で登録し、2009年夏頃にD一家とトラブルになって以降、その数か月後から被害者家族やそれ以外の近隣住民を「集団ストーカー犯罪とテクノロジー犯罪の常習犯」などと、実名を挙げて一方的に誹謗中傷する書き込みを繰り返していた。 殺害されたAは知人に対し、事件の1、2カ月前に 「矛先が自分に向いてきた。わしが変な宗教に入っとることにされとる」 などと話しており、さらにXはA・Dら近隣住民や親類のほか、警察、行政、病院関係者ら約140人・団体の実名、住所を「スパイリスト」としてネットに公表し 「電磁波犯罪とギャングストーキングを各地で行っている」 などと一方的な誹謗中傷を行っていた。 2015年になってから近隣住民への批判が増え、事件直前の3月5日にはAの家族の実名や自宅の地図・外観写真、D一家の顔写真や自宅地図を掲載した上で誹謗中傷した。
Twitterでは事件前に被害者やその親族の名前を挙げて「人類の敵」などと攻撃的な書き込みの他、勤務先などを書き込んでいた。 書き込みの中には「人類の敵」の他、 「(近隣住民や被害者が)工作活動を行なっている」 「電磁波兵器で他人の心を破壊工作」 等と辻褄の合わない記述もあり、Xの刑事責任能力の有無や程度について調べられている。 他にもFacebookの自己紹介欄には「管理ネット代表」と称し好きな言葉は「勧善懲悪」、 またアメリカ合衆国軍や日本政府、日本の警察に対する批判も書き連ねており、XのFacebook・Twitterそれぞれのカバー写真には 「米軍、日本政府はストーカー行為を行っている」 と書き込まれていた。 Twitter にはXが書籍を贈りつけた日本共産党からの礼状がアップされているが、同党関係者によると「書籍を贈ってこられたので礼状をお送りした」という以上の関係がないという。 Xは2010年にインターネットでDの孫を中傷したとして名誉棄損容疑で洲本署に逮捕されていた。しかし言動が不自然だったため留置されることなく、精神科に入院した。 D夫妻は就寝中に寝室でXに襲われた可能性が高く、寝室から血痕が発見されている。 Xの言動や精神状態にはXの家族も心配して、10年前から洲本市や明石市にある兵庫県健康福祉事務所(保健所)に計4回の相談をしていた。 県警は、2004年の加古川7人殺害事件や2012年に発覚した尼崎事件を受けて住民相談への対応強化を進めてきたが、行政と連携して事件を防ぐことはできなかった。 刑事裁判
神戸地方検察庁は4月10日から8月31日までの約5カ月間、Xを鑑定留置した上で専門家による精神鑑定を実施した。その結果、責任能力に問題はないとして、勾留期限の2015年9月8日にXを殺人罪、銃刀法違反で起訴した。 第一審(神戸地裁・裁判員裁判)
2017年2月8日、裁判員裁判の初公判(長井秀典裁判長)が神戸地方裁判所で開かれた。 検察側は冒頭陳述で 「向精神薬の副作用で体にかゆみが生じたことを電磁波の攻撃と思い込むようになった」 と指摘し、Xが事件の際に被害者らとのやりとりをレコーダーで録音した上でインターネットに「復讐一部成功」と投稿していたと明かし、刑事責任能力が問えると主張した。 これに対し弁護側は事実認定を全面的に争う姿勢を示し、Xの主張を補足した上で 「あり得ない話だとするなら病的な妄想に支配され、心神喪失もしくは心神耗弱としか言えない」 と述べ、責任能力の欠如を主張した。 長井秀典裁判長はXに「無職ですか」の質問をしたがXは「サイトのサポーターをしている」と答え、さらに 「電磁波兵器によって殺害を強制された」 「本当の被害者は私で、被害者とされる5人らに仕組まれた完全な冤罪だ」 と語り、罪状認否では手元の紙を見ながら独自の見解をまくしたて 「(殺害した5人は)サイコテロリストである」 と中傷した。 2月14日の被告人質問で、弁護側から質問を受けたXは5人の殺害を認めた一方で
「電磁波兵器によって無意識下で自由を奪われ肉体を操られた」 と述べ、自分の意思ではなかったと主張した。 A一家・D夫婦の2家族が対象になったことについてXは 「両家族は電磁波兵器を使う工作員で、自身の私生活の情報を盗み見ていたため、その報復だった」 などと主張し、殺害状況をボイスレコーダーで録音していたことについては 「身の潔白を証明するためだった」 と答えた。また、事件前にXを強制入院させた兵庫県の「措置入院」を巡る質問については 「人体実験をするためで精神科医は全く信用できない。 (裁判前に精神障害と診断された精神鑑定の結果も)おかしい」 と話した。 翌15日の公判では殺害されたAら3人の被害者遺族がXに対し「家族を亡くす気持ちが分かるか」「謝罪の気持ちはあるのか」など計15の質問をしたが、Xは「答えたくありません」と繰り返し、証言に応じなかった。 3月3日に行われた論告求刑公判では検察側は 「Xは犯行当時、完全責任能力を有していた。5人を次々に殺害した残忍な犯行で、反省の念も見られず、更生の余地もない。死刑に処すべきである」 として、Xに対し死刑を求刑した。 一方で弁護側は最終弁論で動機や責任能力をめぐり検察側の主張に反論し、犯行当時Xは心神喪失もしくは心神耗弱だったと主張し、無罪もしくは死刑回避を主張して結審した。 3月22日、神戸地裁はXの完全責任能力を認めた上で「一定の計画性の下で非常に強い殺意があり、動機も身勝手。落ち度のない5人もの命を奪った上、犯行を正当化し続けている」として、検察側の求刑通りXに対し死刑判決を言い渡した。弁護側は判決を不服として大阪高等裁判所に即日控訴した。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B7%A1%E8%B7%AF%E5%B3%B65%E4%BA%BA%E6%AE%BA%E5%AE%B3%E4%BA%8B%E4%BB%B6 【死刑囚と面会】サラリーマン風の淡路島5人殺人犯・平野達彦の主張に衝撃! 日本政府の「電磁波犯罪」とは? 2017.07.26. http://tocana.jp/2017/07/post_13959_entry.html
ドラマや小説では、精神障害のふりをして罪を免れようとする殺人犯がよく描かれる。だが、現実の刑事裁判はどうかと言えば、むしろ明らかに重篤な精神障害の殺人犯があっさりと完全責任能力を認められ、死刑や無期懲役などの重罰を科されているケースが圧倒的に多い印象だ。その1人が今年3月、神戸地裁の裁判員裁判で死刑を宣告された淡路島5人殺害事件の平野達彦(42)だった――。
■死刑判決に動揺した様子は微塵もなし
shikei03.jpg神戸地裁の判決公判には傍聴希望者が殺到 「被害者一家らは工作員で、自分のことを攻撃してきていたという被告人の認識は妄想であり、そこには薬剤性精神病の影響がある」 今年3月22日、神戸地裁の第101号法廷。裁判長の長井秀典は判決で、平野が5人の近隣住人を惨殺した動機の形成過程について、そう述べた。だが結局、次のように言葉をつないで、平野に完全責任能力を認めたのだった。 「そこから殺害を決意した思考過程には、被告人自身の正常な心理が作用しており、病気の影響は小さい」 そして長井は平野に対し、「被告人を死刑に処する」と宣告したのだが、私の感想は「ああ、やっぱり」というものだった。私はこれまで精神的に壊れているとしか思えない殺人犯があっさり完全責任能力を認められ、重罰を科される事件に何度も遭遇してきた。たとえば当欄で以前取り上げた加古川7人殺害事件の藤代康孝や山口5人殺害事件の保見光成などもそうだった。そのため、平野の死刑判決も予想できたことだった。 やや間があり、被害者参加制度を利用して公判に参加していた被害者遺族がパチパチと拍手し、長井が「そういうことはやめてください!」と怒鳴りつける一幕もあり、法廷は不穏なムードとなった。そんな中、平野は顔色一つ変えず、悠然とした足取りで刑務官と共に法廷から出ていった。死刑判決を受けたことに動揺した様子は微塵も感じられなかった。 ■薬剤性精神病に陥っていた
平野が勾留されている神戸拘置所 http://tocana.jp/2017/07/post_13959_entry_2.html 事件が起きたのは2015年3月16日の早朝だった。兵庫県・淡路島の小さな集落で生まれ育った平野は当時40歳。精神障害による入通院歴があり、長く実家で引きこもり生活を送っていたという。そんな男が近所の2家族の寝込みを襲い、計5人をサバイバルでメッタ刺しにして殺害した事件は、社会に大きな衝撃を与えた。そしてすぐにインターネット上に残された平野の活動の形跡に注目が集まったのだった。
「日本政府は何十年も前から各地で電磁波犯罪とギャングストーキングを行っています」 平野は事件前からツイッターやフェイスブックでそんなことを訴えていた。その一環として近隣住人たちの写真をネット上で公開し、「工作員」呼ばわりしていたのだが、それが殺害された被害者たちだった。平野は精神刺激薬の大量服用を長期間続けたのが原因で、事件当時は薬剤性精神病に陥っていたのである。 平野のツイッターより http://tocana.jp/2017/07/post_13959_entry_2.html
平野は今年2〜3月にあった裁判員裁判でも、
「事件はブレインジャック(=脳を支配)されて起こしたのです」 「本当の被害者は私であり、私の家族です。祖父も自殺に見せかけて殺されたのです」 などという特異な冤罪主張を繰り広げた。さらに事件前からネット上で訴えていた日本政府の「電磁波犯罪」を改めて法廷で告発したりした。 そのように荒唐無稽なことばかりを言うのだが、平野の見た目はグレーのスーツと銀ブチめがねが似合う普通のサラリーマン風で、話しぶりも真面目なだけにいっそう異様さが際立った。 ■「死刑以上のことを何年もされていた」
平野のフェイスブックより http://tocana.jp/2017/07/post_13959_entry_2.html
私が神戸拘置所で平野と面会したのは、平野が死刑判決を受けた翌日の朝だった。透明なアクリル板越しに向かい合った平野に対し、私は何より気になっていたことを単刀直入に質問した。
「平野さんは死刑が怖くないのでしょうか?」 平野はサラリとこう言った。 「私は電磁波攻撃という死刑以上のことを何年もされていますから」 電磁波犯罪とは一体何なのか。そう質問したところ、平野は「脳内に音やかゆみ、刺痛を送ってくるのです」と真顔で説明してくれた。では一体、誰が何の目的で平野にそんなことをしているというのか。 「“五感情報通信”というのをご存知ですか。日本政府はそのための人体実験として私に電磁波攻撃を行っているのです」 私は“五感情報通信”なるものを知らなかったので、それは何かと尋ねたところ、平野は「総務省のホームページに出ているので、あとで確認してください」と言った。そこで面会後に総務省のホームページで確認したところ、“五感情報通信”とは、電話やネットでは伝達できない触覚や嗅覚、味覚なども含めた五感すべての情報を伝える通信技術のことらしく、現在は国が中心になって研究を進めているという。日本政府がその人体実験のため、自分に電磁波攻撃をしかけていると、平野は思っているわけだ。 このように平野の話の内容は荒唐無稽だが、話の中に実在する人や企業、組織、団体もチラホラ出てきた。たとえば、平野は「黒木昭雄さん(※筆者注・2010年に死去した元警察官のジャーナリスト)も暗殺されたのです」「イスラム教や創価学会もテクノロジー犯罪を行っています」などと言っていたが、ネット上には同じようなことを言っている人が散見された。検察官は裁判で「被告人は自宅で引きこもる中、インターネットで情報を収集し、独自の世界観を築いたのです」と説明していたが、平野は実際、ヘヴィーなネットユーザーだったのだろう。 ■「私は精神障害ではないです」
平野によると、事件を起こした動機は「刑事裁判をうけ、日本政府の電磁波犯罪を国内外に知らしめること」だったという。 「しかし、実はそれも工作員にブレインジャックされたゆえの考え方だったんです」 平野はそんなことも大真面目に言うので、私は「弁護人は平野さんのことを精神障害だと言っていましたが、不満ではなかったですか」とも尋ねてみた。すると平野は「もちろん、不満です。私は精神障害ではないですから」と言った。そしてこう付け加えたのだった。 「弁護士は精神障害のでっち上げに協力したのです」 何もかも真顔で話す平野だが、少しだけ様子が変わった時がある。平野の父親が裁判に証人出廷し、「生命をもって償いたい」と声を震わせて謝罪したことに話が及んだ時だ。この時ばかりは平野も悲しそうな顔になり、こう振り返ったのだった。 「父は泣き寝入りしているのでしょう。電磁波犯罪の被害者は泣き寝入りをしてしまうのです」 私は、平野の父親に同情を禁じ得なかった。 その6日後、改めて神戸拘置所まで面会に訪ねると、今度は面会を断られた。最初に面会した際、平野は私に対し、「何も知らないんだな」と思っているような雰囲気を醸し出していたので、私の取材を受けても意味がないと考えたのかもしれない。 「冤罪」を訴えながら死刑判決を受けた平野は現在、大阪高裁に控訴している。その考えを完全に理解するのは難しいが、控訴審の法廷でも日本政府の電磁波犯罪を告発するつもりだろう。
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