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直前の雨量が地震に与える影響とは? 災害誘発の危険性も
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2014.07.05 08:00 THE PAGE
6月初旬、早々に梅雨に入った日本列島は、各地でいきなり豪雨に見舞われた。高知県四万十町では、24時間雨量が観測史上最大の528ミリに達し、平年の6月一月分の雨が一気に降った。東京近郊でもわずか数日で梅雨期間全体の雨量に匹敵する降雨を観測した。さらに6月後半には、東京都三鷹市でひょうが数十センチも積もるなど大荒れの天気となった。
梅雨の時期、大雨や洪水に対する備えをあらためて見直したい。
ところで、大雨とは一見関係がなさそうな地震であるが、こんなデータをご存じだろうか。
これは、同じ職場(京都大学防災研究所)で山地災害を研究する千木良雅弘教授から教わったものだ。
今からちょうど10年前の2004年10月23日、新潟県中越地震が発生した。旧山古志村の土砂災害や河道閉塞、長岡市のトンネル崩落現場でのレスキューの様子など、土砂・地盤災害の印象が強く残る大きな地震であった。
この地震が起こる直前10日間の雨量データがある。被災地に近い新潟県栃尾の観測点では、約170ミリもの降雨があった。しかも、地震の直前20〜21日に、兵庫県や京都府はじめ広域に大きな被害をもたらした台風23号の影響で、まとまった雨が降っている。地震が引き金となる土砂・地盤災害は、地震動や地盤の性質に大きく影響されるが、地震直前の大雨が誘因となったことも否定できない。
他方で、これとはまったく対照的なデータがある。東日本大震災を引き起こした巨大地震の直前の雨量データである。福島県相馬、宮城県志津川といった被災地内の観測点では、3月1日〜11日までの間、わずか数ミリの雨量しか記録されていない。東日本大震災の被災地は広大なので、地域差はあるが、少雨傾向にあったことは事実である。
たしかに、東日本大震災でも、福島県内の藤沼貯水池の堤が決壊するなど、土砂災害で犠牲者も出ている。しかし、地震の規模の割には少数のケースにとどまったとの見方が一般的だ。その一因が、直前期の少雨にあったことは間違いないだろう。
ちなみに、現在発生が懸念されている南海トラフの巨大地震。昭和の南海地震(1946年)は12月21日、昭和の東南海地震(1944年)は12月7日、江戸末期安政の地震(1854年)は12月23日〜24日、宝永の地震(1707年)は10月28日と、冬季(晩秋)の発生が多い。
これは、むろん偶然であろうが、土砂・地盤災害の誘発効果という観点からは、幸運な偶然である。西日本の太平洋側では冬季の降雨量が少ないからだ。しかし、次がどうなるかはわからない。
今から梅雨末期を経て秋の台風シーズンにかけては、大雨・洪水、そして、雨を主因とする土砂・地盤災害だけなく、そこに地震が加わることで誘発される土砂・地盤災害にも注意が必要な時期である。
だからと言って何をすればいいのかとの疑問が沸くかもしれない。試しに、台風や大雨の情報が出たら、そのたびに「さらに地震が加わったら……」と、雨だけでなくあわせて地震のことも思い起こしてみよう。
稀少現象であるがゆえに途切れがちな地震への意識を再喚起する意味はある。
(矢守克也/NPO法人日本災害救援ボランティアネットワーク理事)
■矢守克也(やもり・かつや)
京都大学防災研究所巨大災害研究センター教授。同阿武山観測所教授、人と防災未来センター上級研究員などを兼務。博士(人間科学)。専門は防災心理学。著書に「巨大災害のリスク・コミュニケーション」など。開発した防災教材や訓練手法に「クロスロード」、「個別避難訓練タイムトライアル」など。
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