03. 2014年5月07日 08:46:24
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群発地震発生のメカニズムがもっと解明されれば、ある程度の高い確率で、大きな本震を伴うかどうかを判断できるようになるだろうhttp://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2002/pr20020905/pr20020905.html − 地震活動は地殻応力速度に支配されている − − 2000年伊豆諸島群発地震からの考察 − ポイント 群発地震発生のメカニズム:地殻の継続的な変形・応力増加が原因 「本震-余震型」と「群発地震型」の違いは、応力の「一瞬の」増加か「継続的な」増加かによってもたらされる 応力速度増加率は地震発生数に比例し、その地域差は群発地震活動域の拡大を説明する 「実験室での断層摩擦法則」が地震発生予測に応用可能であることを証明 概要 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)活断層研究センター【センター長 佃 栄吉】の 遠田 晋次 研究員と、国土地理院【院長 星埜 由尚】(GSI)の 鷺谷 威 主任研究員、米国地質調査所(USGS)の ロス スタイン 博士は、2000年伊豆諸島群発地震の地震・GPS地殻変動観測結果を基に、群発地震発生のメカニズムを明らかにし、地震活動が地殻応力速度に支配されていることを証明した。従来、群発地震はマグマや水などの流体が直接関与する見方が支配的であったが、地殻の継続的な変形による応力速度の上昇によって説明できることがわかった。 通常、大地震の後に発生する余震は、その数が時間とともに減衰する。一方、群発地震では活発な地震活動が一定期間継続する。本成果では、こうした地震の発生様式の違いについて「本震−余震活動は、大地震によって地殻内の応力(圧力)が瞬間的に増加することで起き、群発地震活動は、地殻に加わる応力が継続的に増加し続けることにより発生する」という新しい解釈を与えた【図1】。また、群発地震活動中の地震発生率は応力速度増加率に比例し、そのような比例関係(平衡状態)に達する時間は応力速度増加率に反比例する(そのため、地震活動域は時間とともに徐々に拡大する)ことがわかった。 応力速度が上昇し、継続した場合に「群発地震」となり、瞬時に大きな応力が加わった場合に「本震-余震型」の地震活動となる図 図1 応力速度が上昇し、継続した場合に「群発地震」となり、 瞬時に大きな応力が加わった場合に「本震-余震型」の地震活動となる これらの観測結果は、「実験室での断層摩擦法則」を用いて再現できる。すなわち、摩擦法則はマクロに自然地震にも適用可能であり、今後の群発地震活動、余震活動の予測全般に資するものと思われる。また、本成果は地震発生メカニズムを理解する上でも重要な意味を持つ。 防災上の意義 火山活動が発生した場合、GPS連続観測によって地表付近に入り込んだマグマの形状を推定することができれば、大規模な被害地震の発生確率やその起こる場所を推定することが可能であり、災害軽減に役立てられる。 適用可能な場所 本成果や手法は、GPSによる地殻変動監視が行われている「有珠山」「岩手山」「伊豆半島」「伊豆大島」「桜島」などの日本国内の火山や、諸外国の多くの火山に対して適用可能である。 ※本研究成果は、自然科学系雑誌ネイチャー(2002年9月5日号)に掲載された。 2000年伊豆諸島群発地震 2000年6月から8月にかけて伊豆半島の南方約60Kmの海域で発生した群発地震活動は、マグニチュード3以上の地震7000個、マグニチュード6以上の地震5個を含む観測史上最大規模なものであった(1965年に発生した松代群発地震より規模が一桁大きく、時間あたりのエネルギー解放量にすると100倍以上であったと考えられる)。この群発地震と同時に三宅島では噴火および山頂の陥没が起こり、全島避難が現在も継続中である。 研究の背景と経緯 群発地震の発生原因には、マグマや水などの流体の直接的な影響や、地殻の不均質性などが指摘されてきた。2000年夏に発生した伊豆諸島群発地震は、「世界最大規模の群発地震の1つ」となるとともに、「地震学的にも測地学的にも高精度で観測された地震活動の1つ」となった。この地震の観測データによって、遠田研究員らは群発地震発生メカニズム解明の機会を得た。 今回の成果は、遠田研究員が東京大学地震研究所【所長 山下 輝夫】在籍中から行ってきた『応力変動と地震活動の関係』に関する研究の1つとして取り組んできたものである。これらの一連の研究では、地震(断層運動)はランダムに発生しているわけではなく、地殻を介して相互に影響しあいながら発生していることを検討してきた。地震相互作用の研究が将来的に地震の予測につながると考えている。 研究の内容 国土地理院のGPS観測に基づき、地殻変動を説明する長さ15Km、幅5Km(深さ8−13Km)のダイクモデルを提示した。ダイクは群発地震活動2ヶ月間に継続的に成長し、最終的にその開口量は約20mに達したと推定された。このダイクモデルによって周辺地殻にかかる応力速度の増減と震源分布を比較した結果、地震のほとんどが応力速度増加域で発生していたことがわかった。また、ダイク近傍の地殻浅部の横ずれ断層では通常の数1000倍、ダイク遠方新島周辺では数100倍に応力速度が増加した【図2】。この間の地震発生数も通常の数100〜数1000倍に跳ね上がった。すなわち、地震活動は応力速度に比例して活発となった。くわえて、今回の群発地震活動では、活動域が時間とともに拡大する現象が観測されたが、これは地震活動が平衡状態に達する時間が応力速度増加率に反比例するためとわかった。これらの結果は、「実験室での摩擦法則」を証明するものである。以上のことから、群発地震は通常の地震活動と大きく異なるものではなく、応力速度の上昇がある期間継続された場合に発生する地震活動であるといえる。(ちなみに、通常の本震?余震型の活動は本震による周辺応力場の急激な変化によるものである。)本研究成果により、地殻変動観測結果が地震発生予測につながる可能性が開けた。 「深部の2ヶ月間の継続的なダイク成長に伴い、地殻浅部横ずれ断層が受ける剪断応力速度」と「地震の震央)」の図 図2「深部の2ヶ月間の継続的なダイク成長に伴い、地殻浅部横ずれ断層が 受ける剪断応力速度」と「地震の震央(東京大学地震研究所のデータ)」 【 群発地震は応力速度が上昇した地域で発生している 】 今後の予定 今後は、本研究成果で明らかにされた『応力変動と地震活動の関係』を群発地震活動だけではなく、大地震前の地震活動変化に適用可能かどうかを検討する予定である。 ※なお、本成果の情報発信として、USGSのHP上【 http://sicarius.wr.usgs.gov/ 】でアニメーションや図面等を公開している。 用語の説明 ◆GPS地殻変動観測 GPSとはGlobal Positioning Systemの略で、地球周回軌道を回る衛星から発信される情報をもとに、観測者の正確な位置を得るためのシステムで、現在ではカーナビなどでもおなじみである。カーナビに表示される車と同様、我々の生活する大地もごくわずか(年間数〜十数mm以下)ながら変形している。国土地理院では、地震予知・火山噴火予知に資するため全国に約900点のGPS観測局を設置し、常時地殻の変形を詳細に観測している。【 詳細はhttp://mekira.gsi.go.jp/ 】今回は、伊豆諸島に設置された観測点からのデータを解析に用いた。[参照元へ戻る] ◆地殻応力速度 応力とは単位面積あたりに作用する外力の値をいう(圧力と解釈しても良い)。ここでは、地震が発生する地殻の浅い部分(深さ約15km以浅)の応力の時間変化分を応力速度として扱った。特に、地震のほとんどが横ずれ断層(下記参照)の活動によるものであることから、横ずれ断層の活動を促す剪断(断層面をずらす)応力の速度を考慮した。群発地震活動中には劇的に応力速度が速くなった。[参照元へ戻る] ◆実験室での断層摩擦法則 地震は断層運動の結果であり、断層運動は岩盤と岩盤が断層を介してずれることで生じる。断層面には摩擦(静摩擦力)が働き、通常は断層が動くことはない。ただし、応力がある程度蓄積されると摩擦抵抗を越え断層運動が発生する。このような地震発生のメカニズムを模擬するため、1970年代頃から実験室で岩石破壊実験や摩擦実験が盛んに行われてきた。その中で、米国地質調査所(USGS)のJames H. Dieterich博士は、「断層面では急激なすべり(地震発生)の前にも長期にわたりミクロなすべりが発生しており、それが徐々に加速されて地震に至る」ことを発見した。さらに、そのすべり速度や断層面の状態に依存して摩擦抵抗力が変化することを数式化した(速度・状態依存摩擦法則)。これらの法則は、1990年代になって「余震減衰メカニズム」「応力変動による地震発生率の変化」「大地震の前兆的すべりや変形」など、自然地震にも適用可能であることが指摘されていた。[参照元へ戻る] ◆ダイクモデル ダイクとは、一般には日本語で「岩脈」と訳される。その場合、垂直に立った板状の固結した岩体の意味を持つ。但し、欧米で“dyke (dike)”といえば、まだ溶融しているマグマが周りの岩石に垂直に入り込んだ場合にも用いられる。ここでは、そのような垂直に立ったマグマの貫入と継続的な成長(開口)をモデル化した。[参照元へ戻る] ◆横ずれ断層 地震は断層運動により発生する。断層は、ずれの向きによって縦ずれ断層(正断層・逆断層)と横ずれ断層に分けられる。主に横ずれを持つ断層を横ずれ断層と呼び、水平方向にずれ、上下の変動は小さい。断層の一方に立った場合、反対側の地面が左にずれれば左横ずれ断層、右にずれれば右横ずれ断層と呼ぶ。横ずれ断層の多くは、垂直に近い傾斜を持つ場合が多い。伊豆諸島群発地震の多くが、このような横ずれ断層型の地震であった。[参照元へ戻る] http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BE%A4%E7%99%BA%E5%9C%B0%E9%9C%87
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