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必ずくる「巨大地震」に備えよ〔1〕日本は「地震活動期」に突入した/藤井聡(京都大学教授)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140327-00010000-php_s-bus_all
PHP Biz Online 衆知 3月27日(木)12時11分配信
■死者は32万人にも及ぶ
いまわが国は、巨大地震【メガクエイク】による、おおよその国民の想像を超絶してはるかに上回る激甚被害の危機に直面している。
南海トラフ地震、そして首都直下地震である。
政府は2013年3月に、南海トラフ地震について、科学的な推計に基づき、東日本大震災をはるかに上回る規模の被害が生ずる可能性を公表している。すなわち、マグニチュード(M)9.1の地震が起きると、最悪クラスで220兆円程度の経済被害が出るとの想定を発表している。これは国内総生産(GDP)の42%に相当する水準であり、死者も32万人に及ぶと公表されている。
想定被災地には日本経済の中枢を担う大コンビナートがあり、そこが激甚被害を受ければ、その一帯に集中して立地している火力発電所が軒並み使用不能となり、日本全体が深刻なエネルギー危機に陥ることが危惧される。同様に、コンビナートに立地するさまざまな巨大工場が軒並み被災し、日本の産業力を激しく毀損することともなる。そうした毀損は、それ以後、長い日本経済の大きな低迷状態へと結びついていくこととなろう。つまり三大都市圏における巨大被害によって、日本経済は長期的な「震災不況」と呼ぶべき状況に陥ることも十二分以上に予期されているのである。
一方、被災地では700万人から1000万人にも及ぶ被災者が生じ、彼らに対する医療、食料、水、燃料等についての深刻な「不足」状況が訪れる。その不足ゆえに、直接の被災を免れた多くの被災した方たちや負傷者の多くの命が失われていく。そんななか、政府は必死になって国内で食料等をかき集め、被災地に届けようとするだろう。しかしそうなれば、被災地以外でも「食料不足」が生ずるケースが続出することもあろう。
つまり、こうした巨大地震は、被災地においては文字どおりの「地獄」を、そして、非被災地においてはエネルギー不足や長期的な震災不況の発生等による想像を絶する混乱状況をもたらすものなのである。
東日本大震災は「国難」と呼ばれる大災害であったが、この次に訪れるであろう首都直下地震や南海トラフ地震は、それらが襲いかかる地域が日本経済の中枢部であることもあり、被害の程度は、数倍から10倍、20倍程度にまで拡大することが予期されているのである。東日本大震災を国難と呼ぶなら、これから訪れるであろう巨大地震は、文字どおりわが国を潰しかねぬほどの、究極的な未曾有の巨大被害をもたらすものなのである。
■日本列島は「地震活動期」に突入した
一方、そうした巨大地震が発生する可能性そのものについては、上記の最大規模のものも含めたマグニチュード8以上の規模に関していうなら、今後30年間で60〜70%と公表されている。ただし、南海トラフ地震のなかでももっとも発生する見込みが高いといわれている東海地方の地震(東海地震)については、その発生確率は88%にも上るという参考値も公表されている。
これは口語的にいうなら、「十中八九」の水準で南海トラフ地震が30年以内に起こることを意味している。
一方、首都直下地震については、昨年暮れに、その被害想定が公表された。マグニチュード7の巨大地震の30年以内の発生確率は70%、その被害も、100兆円程度(約95兆円程度)という水準が公表されている。
こうした巨大地震については、以上の「政府の公式発表」以外にも、客観的な事実に基づいたさまざまな指摘がなされている。
まず、マグニチュード9にも及ぶ東日本大震災が起こったいま、多くの科学者が、いまの日本列島は「地震静寂期」ではなく、大地震が集中的に訪れる「地震活動期」のただ中に突入していることを指摘している。
この「地震活動期」というものは、過去の日本の歴史のなかでも定期的に訪れている。
たとえば、表1をご覧いただきたい。東日本の太平洋沖で発生するマグニチュード8クラス以上の巨大地震は、この表に示すように、過去2000年のあいだに「4回」起こっているが、それらはいずれも、日本列島の各地で大地震が起こる「地震活動期」のただ中で起こっている。その「4回」のうち、すべてのケースにおいて、首都圏では10年以内に大地震が起こっており、しかも、西日本で18年以内に大地震が起こっている。そして、その西日本の4回の大地震のうち、3回がいわゆる南海トラフであった(残りの1回は、観測史上最大の内陸型地震である濃尾地震であった)。
この結果をもってして即座に、首都直下地震が10年以内、南海トラフ地震が18年以内に今回も起こるだろうと結論づけることはできないとしても、3.11の東日本大震災の直撃を受けた今日のわが国日本が、いかに危険な状況にあるのかを明確に指し示すものであることは間違いない。つまり、東日本大震災の直撃を受けたわが国日本が近い将来に、さらなる巨大地震として首都直下地震と南海トラフ地震の「連発」に苛まれる可能性は、何人たりとも否定できないものなのである。むしろそれどころか、過去の歴史を振り返れば、そうなる可能性は十二分以上に考えられるほどの、起こったとしても至って当たり前の必然事象だとすら、いいうるものなのである。
■地震発生を「織り込んだ」国家事業が必要
これらの議論を踏まえるなら、われわれはこうした巨大地震の発生を「覚悟」すべきであることは明白だ。したがってこれから長期的な計画や政策を考えるにおいては、こうした巨大地震の発生を「織り込んでいく」姿勢が、是が非でも求められている。
たとえば、東京・名古屋間のリニア新幹線開業が、2027年、いまから13年後に予定されている。多くの国民は、それまでのあいだに、東海道新幹線が被害を受けるような「南海トラフ地震」が発生するかもしれない、というイメージをもっていないのではないかと思う。
しかし、南海トラフ地震の13年以内の発生確率は、公表値に基づいて推計すると(注:ポアソン過程という確率モデルを想定)、おおよそ30〜40%程度となる。しかも、南海トラフ地震のなかでも、東海道新幹線に直接被害をもたらす可能性が危惧されている「東海地震」に関しては、より高い確率(30年確率88%)で起こると公表されていることから、それを踏まえると、「6割程度」という水準になる。
さらにはいま、アベノミクスの第三の矢の「新たな成長戦略」として「日本再興戦略」が策定されているが、そこでは、2030年、すなわちいまから16年後が戦略の目標年次として想定されている。しかしその年次までにいずれか一方の巨大地震が発生する確率は60〜70%、東海地震を想定するならじつに85%という水準となるのである。
このような科学的なさまざまな指摘を踏まえるなら、2030年を目標年次とする「日本再興戦略」や2027年のリニア新幹線といった、重要な大国家事業はいずれも、「巨大地震」の発生を十分に「織り込んだ」ものとして構想されなければならないのは、ほとんど常識の範疇に入る当たり前のことなのである。
(『Voice』2014年3月号より)
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