http://www.asyura2.com/13/jisin19/msg/608.html
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M6程度の地震でも原発の耐震基準を超える
3月14日伊予灘でM6.2の地震が起こった。震源深さが80キロ程度だということなので、伊方原発からは100キロ程度は離れていたと言っていいはずだ。そのせいか、伊方原発1号機では56ガルを観測したという。
今日本にある原発のほとんどは600ガル程度の揺れには耐震性があるとされているので、56ガルなら軽くパスすることが出来る程度の揺れでしかない。
しかし、直下型の地震の時、かなり大きなガルを観測している。岩手・宮城内陸地震の場合を見てみよう。
岩手・宮城内陸地震
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B2%A9%E6%89%8B%E3%83%BB%E5%AE%AE%E5%9F%8E%E5%86%85%E9%99%B8%E5%9C%B0%E9%9C%87 より部分引用:
2008年(平成20年)6月14日(土)午前8時43分(JST)頃に岩手県内陸南部(仙台市の北約90km、東京の北北東約390km)で発生した、マグニチュード7.2(気象庁暫定値)の大地震。同県奥州市と宮城県栗原市において最大震度6強を観測し、最大加速度は次のようになっている。
地震計や電子基準点などにより観測された、主な地震前後の変位(観測地点の移動)を以下に並べる。
一関西(岩手県一関市、震源に最も近く最大加速度4022ガルを観測した地点) - 地震波形から推定される変位153cm(合成値、分解すると東方向に45cm、北方向に44cm、上方向に140cm)、地中観測から推定される変位130cm(同、東方向に28cm、北方向に60cm、上方向に112cm)。観測データの上方向の加速度は下方向の2.5倍で、加速度の絶対値も3866ガルと特異的な値であった。また、地震により観測点が1メートル以上移動していた。
(一部略)
この一関市の観測点が最大加速度を記録した理由は、「観測点が断層の真上にあったため表層付近の地盤が大加速度の入力により弾性限界を超え、部分的に粒状体的な振る舞いをした為」と考えられ『トランポリン効果』と命名された[23]。なお、この加速度は自由地盤(地表そのまま)の加速度を記録しているのではなく、観測施設の構造上の特徴によりロッキング振動を生じ浮き上がった観測施設(建物)が地面と再接触した際の衝撃力の影響を受けた波形を記録していたと、解析されている。また、ロッキング振動の影響がなければ、上下動最大加速度は1.6G程度であったとされている。
ロッキング振動とは、ブロック型構造物が両端を中心に回転運動を繰り返す振動。
以上部分引用終わり。
上の文章で「ロッキング振動の影響がなければ、上下動最大加速度は1.6G程度」としているが、はたしてロッキング振動であったのかどうか、確認されていない。つまり、現実に地面が4000ガル程度で揺れていた可能性があるのだ。更に重要なことに、「上下動最大加速度は1.6G程度」としているが、1Gは980ガルなので、1.6Gは1500ガル程度になる。つまり、ロッキング現象が起こっていたとしてそれを割り引いた加速度でさえ1500ガルなのだ。上の文章は「上下動最大加速度は1.6G程度」というようにGという単位を出すことでガル換算を避けて、トランポリン効果で大きくなっただけだという誤解を誘導している。そして、「上下動最大加速度は1.6G程度」ということは実際の揺れは水平方向の揺れも加わることからより大きくなっているわけで、トランポリン効果を除いて考えて、1800ガルとかになっているはずなのだ。これは通常の原発の耐震性の3倍程度の揺れとなってしまう。
岩手・宮城内陸地震は震源の深さが8kmで、M7.2だったから、1800ガルという大きな揺れになるのだと考えることもできる。しかし、地震は結構複雑だ。
次に新潟県中越地震を見てみよう。
新潟県中越地震
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E6%BD%9F%E7%9C%8C%E4%B8%AD%E8%B6%8A%E5%9C%B0%E9%9C%87 より部分引用:
新潟県中越地震は、2004年(平成16年)10月23日17時56分に、新潟県中越地方を震源として発生したM6.8、震源の深さ13kmの直下型の地震である。
以上部分引用終わり。
http://www.jma.go.jp/jma/press/0412/24a/kyoushinhakei.pdfには、「平成 16 年(2004 年)新潟県中越地震の地震活動では、たびたび大きな震度が観測されましたが、10 月 23 日 17 時 56 分に発生した本震(マグニチュード 6.8)では、新潟県が設置した川口町の震度計により、平成 8 年の震度計の全国展開後はじめて震度計によって震度7が観測されました。また、10 月 23 日 18 時 34 分に発生した最大余震(マグニチュード 6.5)では川口町で強震観測史上最大値となる最大加速度 2,515 ガル(震度6強)が観測されました。」と書かれている。
ここで重要なことは、「最大余震(マグニチュード 6.5)では川口町で強震観測史上最大値となる最大加速度 2,515 ガル(震度6強)が観測されました」と書かれていることだ。M6.5程度で2500ガルもの揺れが観測されたということだ。
岩手・宮城内陸地震は震源の深さが8km、M7.2で、1800ガル。しかし、新潟県中越地震の最大余震ではM6.5で2500ガルというのはおかしいのではと思うかもしれない。
しかし、ガルというのは地震計が観測した値であり、当然、地震計が設置されていないとどんなに大きな揺れがあってもそれは記録として出てこない。つまり、震源の真上とか、または震源がある岩盤の続きが地表面に続いている場所などに地震計があれば、その地震の最大の揺れがはっきり分かるが、大概の場合、最も近くの地震計であっても震源から十キロ程度は離れているので、現実の最大の揺れと観測された最大の揺れとは違うのだ。
しかも、震源深さが20キロか10キロかで相当に震源真上の揺れは異なってしまう。また、震源からの距離が同じであってもその地震計が設置されている地盤の様子によって揺れ方は異なる。
最近気が付いたが、地震が起こったとき、震度だけでなくて、各観測点のガル、つまり、加速度の大きさだが、それも一緒に公表したらどうだろうか。全ての観測点でガルの値を公表するのが大変であれば、最大のガル値とその地震計が震源からどの程度離れていたかを公表されたらどうだろうか。
日本全国で最初に再稼働に向かうとされている鹿児島県の川内原発は基準地震動、つまり、ここまでの揺れなら耐震性があるという揺れの大きさをそれまでの540ガルから620ガルにしたので、規制委員会がOKを出しているのだという。確かに、80ガルも耐震性が強化されたのだから、それなりに安全性が改善されたのは確かだとは思う。しかし、上に見たように、マグニチュード6.5程度の地震であっても原発の真下、または、近くで起これば、2000ガル程度の揺れにはなってしまう。
なお、基準地震動とはその大きさの揺れが一回起こったときの影響を見て耐震性があると判断することになっている。現実には揺れが何分間もまたは何回も続くことがあり、こういった場合については考慮されていない。
更に、今までガルと言う数値を絶対的なデータのように使ってきたが、現行の地震計は高周波、つまり、短波長の揺れについては観測ができないことが確認されている。つまり、瞬間的に1000度を超える高温になっても平均的な温度である500度しか測れないという温度計があったら、それで温度を計測し、原発の管理をするのはおかしいと多分誰でも思うはずなのだが、地震計については、瞬間的な揺れは世界中で観測しないでいいことになってしまっているのだ。1995年の阪神大震災ではこの衝撃的な揺れで鉄筋コンクリート建造物が大きな被害を被ったはずだという指摘が大阪市大の専門家の方によりされている。
震度とガル、カインの換算表が次のURLに載っている。
http://www.nilim.go.jp/japanese/database/nwdb/html/how-to-use.htm
より部分引用:
震度階級 最大加速度(gal) SI値(kine)
震度4 40〜 110程度 4〜 10程度
震度5弱 110〜 240程度 11〜 20程度
震度5強 240〜 520程度 20〜 40程度
震度6弱 520〜 830程度 41〜 70程度
震度6強 830〜1,500程度 71〜 99程度
震度7 1,500程度〜
仮に伊方原発で震度5弱であったとすると、そのガル値は「110〜 240程度」となる。
原発がしっかりした土台に作られているためガル値が小さくなることも考えらるが、「1号機の地震計で最大加速度56ガルを観測した」というのは半分から4分の1で、あまりに小さくなっているように思う。
更に、同じ震度であっても地震波の周期が短くなればそのガル値は大きくなり、周囲と比べて硬い地盤の上に造られている原発では短周期の地震波があまり減衰しないまま伝わるはず。だから、周期が0.1秒程度、またはそれよりも短い地震波で見ると、1000ガルを大きく超えている可能性もある。
石を小さなハンマーで勢いよくたたいても石が壊れることは普通はない。それと同じで原子力発電所のような大きな鉄筋コンクリート造りの建造物に多少高周波、短周期の地震波が作用しても、作用する時間がごく短いのだから、蚊が刺すぐらいの影響しかないはずだと思えてくるかもしれない。
しかし、1995年の阪神大震災では地面に打った鉄筋コンクリート製の杭で、しかもその上に何も荷重がかかっていない状態で、杭の一部、それも上端に近い部分に水平にひび割れが発生したという被害が複数見つかっている。この被害について、複数の専門家が、地震波、それも高周波の縦波の地震波が杭に入力して、杭の上端で反射した地震波とそれとは別の地震波が杭の内部で共鳴した結果、杭の上端から多少離れた部分で杭内部のエネルギーが大きくなりすぎてコンクリートにひびが入ったのではという論文を書かれている。
この現象を多分典型的に表している被害がある。それは兵庫県にある西宮市立西宮高校の特別教室棟A棟での座屈被害だ。被害状況を示す写真が神戸大学の震災文庫で公開されている。
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/directory/eqb/photo/kawase/Jap/index.html
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/directory/eqb/photo/kawase/Jap/Photo/PhotoV3063.html は地震後半年程度経過した10月に座屈した校舎を写したもの。5階建てで向かって左側が池を埋め立てた軟らかい地盤の上に建っていて、向かって右側が昔からの土地で硬い地盤の上に建設されていた。見て分かるように、1階が座屈したのは地盤が硬い部分。窓ガラスがかなり取り外されているが、座屈部分の上の2階から5階はそのまま残っていて、これらの窓ガラスは全く割れた形跡がない。また、取り外された窓ガラスもほとんど被害を受けていなかった様子だ。
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/directory/eqb/photo/kawase/Jap/Photo/PhotoV1037.html は座屈した部分とそうでない部分の1階部分とその手前のグランドを写したもの。座屈部分はぺちゃんこになっているが、その上にある2階の窓ガラスは全く割れていない。
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/directory/eqb/photo/kawase/Jap/Photo/PhotoV1021.html は座屈した部分を含んだ校舎3階から5階を写したもの。窓ガラスが無傷で残っていて、通常の横揺れがあったようには思えない。座屈した側、つまり向かって左側の校舎部分の窓ガラスも割れていない。
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/directory/eqb/photo/kawase/Jap/Photo/PhotoV1007.html はA棟の1階南東部分の写真だ。1階部分が完全にぺちゃんこになっているが、2階部分の壁が1階の土台部分の端にきれいに乗っかっていて、ほとんどずれていないことが分かる。つまり、だるま落としと同じで、1階部分がきれいにつぶれ、2階部分がすとんとほぼ垂直に落ちてきている。
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/directory/eqb/photo/kawase/Jap/Photo/PhotoV3012.html は座屈した1階のコンクリートの柱が完全に破壊され、中の鉄筋が飴のように曲がった部分を写したもの。コンクリートの柱は幅が1mもなく、横にずれた量は多分30cm程度もないことが分かる。
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/directory/eqb/photo/kawase/Jap/Photo/PhotoV1008.html は特別教室棟A棟の3階にあった職員室のちょうど座屈した部分と座屈しなかった部分の境界部分を写したものだ。向かって右側が座屈して沈み込んだ部分。左奥が以前と同じ高さにある部分で、その間の傾いている部分に教員用の机がほぼ地震前に配置されたいた列のまま残っている。更に、机の上の本などを見るとあまり揺れた形跡が見えない。
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/directory/eqb/photo/kawase/Jap/Photo/PhotoV1060.html は座屈した校舎とその向こうの山にある住宅地を写したもの。座屈した部分が昔からの住宅地に近い部分であり、硬い地盤であったことが分かる。
上のような被害について、横揺れが原因だとする論文、「兵庫県南部地震による市立西宮高校校舎の破壊機構」が書かれている。それが次のURLにある。
http://ci.nii.ac.jp/els/110003968500.pdf?id=ART0005443074&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1394849593&cp=
A4用紙4枚の簡単な論文だが、素人の自分が読んでも欠陥があると思えるものだ。例えば、3ページ目には破壊過程を説明して次のように書いている。
「5.構造物の破壊過程の解析」から引用:
この校舎は、同図@に示すように池の埋立てによる比較的緩い地盤と大阪層群の地山をまたがる形で建てられ、校舎の西側には池の一部が水路として残されている。地震によって同図Aのように比較的緩い埋立土が揺込み沈下したが、この埋立土の厚さは校舎の東側2スパン以東では急激に薄くなっているため、それ以西の地盤が相対的に大きく沈下し、東側より3スパン目の基礎梁に応力が集中して破壊した。さらに同図Bのように大阪層群と沖積層の境の砂層が液状化して、この層がすべり面となって上部の地盤が西側および南側に変位した。杭は地盤に押されて破損、建物は地盤・杭と共に反時計回りに回転し、かつ東側の2スパンに対して相対的に西向きに10cm以上変位した。実際には、AとBの過程はほとんど同時に進行したものと考えるべきであろう。これらの結果として、同図Cのように東側の2スパンの1階柱が破壊され、崩壊に至った。
以上引用終わり。
言い直すと次のようになる。校舎西側が軟らかい地盤に建てられてい、校舎東側2スパン分が硬い地盤の上に建設されていて、この部分の1階が座屈した。その経過は座屈しなかった部分(校舎西側)がまず不同沈下し、その結果、座屈しなかった部分(校舎東側)との間にある3スパン目の基礎梁が破壊した。そして、座屈しなかった部分の校舎が西側へ側方流動、つまり西側へ10cm以上水平移動した結果、校舎の基礎よりも上の部分が西側へ引っ張られ、側方流動しなかった校舎東側の2スパン分の1階柱が粉々に壊された。
この説明の肝は3スパン目の基礎梁が最初に破壊されたということだ。そうでないと、2階よりも上の梁が西側へ引っ張られても、梁基礎も一緒に西側へ引っ張られることになり、座屈した部分の1階柱が粉々に壊れることにならないからだ。
しかし、この説明にはかなりの無理がある。それは次の写真を検討することで分かる。
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/directory/eqb/photo/kawase/Jap/Photo/PhotoV3003.html は座屈した部分としなかった部分のつなぎ目である3スパン目の土台を発掘しているところを写したもの。
まず、3スパン目(座屈した部分としなかった部分の間の空間のこと、斜めに床が壊れている部分)の1階の基礎壁に大きな亀裂が縦に入っているのが分かる。しかし、その左右の横線を見るとほとんど高さの違いがないことが分かる。だから、3スパン目を境にして、その西側が不当沈下し3スパン目の基礎梁破壊があったかどうかはかなり微妙なのだ。つまり、基礎梁破壊があったかどうかは、上の写真のように発掘をしたのだから、直接確認ができていなければならず、特に基礎梁に横に入っている鉄筋が切断されていたかどうかが重要だが、上の論文にはそういったことが確認されたとは書かれていない。もし鉄筋が切断されていたとして、その切断の形が校舎西側部分の不同沈下の結果であることを示すような形状、つまり、西側下方へ引っ張られて切断したようになっていれば上の説明の直接的な証拠になるが、そういった状態であったとは述べられていない。
日本の学界全体が、衝撃的な縦揺れについて無視をする姿勢が出来てしまっているように思う。そして、わざわざ無理筋を承知で横揺れによって被害が生じたと言い張っているのだ。これは、311の事故前、日本の原発は安全だと主張していた原発関係者の態度と同じように見える。
以下参考資料:
http://bousai.tenki.jp/bousai/earthquake/detail-20140314020702.html
発生時刻 2014年3月14日 2時6分頃
震源地 伊予灘
最大震度 震度5強
位置 緯度 北緯 33.7度
経度 東経 131.9度
震源 マグニチュード M6.2
深さ 約80km
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140314-09133501-ehime-l38
西予で震度5強 県内被害状況
愛媛新聞ONLINE 3月14日(金)17時39分配信
西予で震度5強 県内被害状況
【写真】崩れた屋根によって破裂したと思われる水道管=14日午前4時半ごろ、西予市三瓶町蔵貫
14日午前2時6分ごろ、愛媛県内で強い地震があり、西予市明浜町、同市三瓶町で震度5強を観測した。県内で震度5強以上を観測したのは2001年3月24日の芸予地震以来。
松山地方気象台によると、震源地は伊予灘で震源の深さは78キロ、マグニチュード(M)は6.2と推定される。
県原子力安全対策監によると、定期点検中で停止中の四国電力伊方原発(伊方町)では、1号機の地震計で最大加速度56ガルを観測した。午前6時20分に四電から「原子炉施設など全ての設備で異常がないことを確認した」との連絡を受けた。
県災害警戒本部の午後1時現在のまとめなどによると、松山市小坂5丁目のビルでエレベーター内に男性(21)が一時閉じ込められ、過呼吸で救急搬送された。
西予市と伊方、鬼北、愛南各町の計6カ所で水道管が破裂したほか、八幡浜市と伊方、鬼北両町の計78戸で一時断水した。
土砂崩れや落石による道路の通行規制も相次ぎ、久万高原町久万の町道と西予市宇和町永長と同市明浜町高山の市道2カ所が通行止めとなっている。
愛媛新聞社
2014年03月15日13時25分 武田信弘 ジオログのカウンターの値:44612
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