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海溝沿いの「ゆっくり滑り」 巨大地震の引き金か 発生予測に応用期待
http://sankei.jp.msn.com/science/news/140310/scn14031009310002-n1.htm
2014.3.10 09:30 産経新聞
海溝沿いのプレート(岩板)境界断層が非常に遅く滑る「ゆっくり滑り」。人が揺れを感じないこの現象が、巨大地震の引き金になる可能性が分かってきた。東日本大震災でも観測され、将来の地震予測に応用できるか注目されている。(黒田悠希)
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■房総沖で発生
海溝付近では、海のプレートが陸側プレートの下に沈み込み、部分的にくっつきながら陸を地下深くに引きずり込んでいる。陸側が元に戻ろうとする力が限界に達すると、両プレートの境界断層が急速に動いて大地震が発生する。
断層面が強くくっついた場所(固着域)では多くのひずみがたまり、巨大地震が起きるが、より深い場所では断層面が固着せず、地震は起きないとされる。
ゆっくり滑りは「スロースリップ」とも呼ばれ、両者の中間的な断層運動だ。震源域のひずみの状態に影響したり、逆に影響を受けたりする可能性がある。
東海地震の予知の前提である「前兆滑り」は、震源域で滑りを加速させるのに対し、ゆっくり滑りは必ずしも加速させるわけではない。現時点で予知に生かすのは難しいが、関係を突き詰めれば利用できるかもしれない。
今年1月、千葉県の房総沖でゆっくり滑りが発生した。相模トラフ(浅い海溝)からフィリピン海プレートが沈み込む場所で、過去に7回観測されていた。
発生間隔はこれまで5〜7年と周期的だったが、今回は前回(11年)の3年後の短期間で起きた。東日本大震災でプレートにかかる力の状態が変わったことが影響した可能性がある。
■低周波の微動
東大地震研究所の小原一成教授らは2002年、南海トラフ沿いの西南日本で「深部低周波微動」を発見した。1秒間に数回の小さな震動が長く続く。過去の東海・東南海・南海地震の震源域より深い地下約30キロで、東海から四国まで帯状に発生する。その後の観測で、微動に連動するゆっくり滑りが見つかった。
観測網がきめ細かい西南日本では、さまざまな類似現象が見つかっている。ゆっくり滑りは半年以上かけて滑る長期的なタイプや、数日から10日程度の短期的なタイプがある。微動よりも周期の長い「深部超低周波地震」、さらに海溝付近の浅い場所でも超低周波地震が見つかった。
これらは「ゆっくり地震」と総称され、十勝沖、東北沖の日本海溝、沖縄の南西諸島海溝などでも起きていることが判明。地域によってプレートの形成年代などが違うためか、種類や起きる深さ、発生間隔、継続期間は異なる。
■大震災直前に観測
ゆっくり滑りが東日本大震災の引き金になった可能性も指摘されている。東大地震研の加藤愛太郎准教授らは、大震災の震源付近の地震活動を詳しく分析し、微小地震の震源が移動する現象が震災前の1カ月間で2度起きたことを発見。ゆっくり滑りが北から南に伝わり、巨大地震の震源に力を集中させ、断層破壊を促した可能性を示した。
巨大津波の原因となった日本海溝付近の大きな滑りを引き起こした可能性も分かってきた。
京都大防災研究所の伊藤喜宏准教授らは、海底圧力計の観測データを解析。本震の2日前に起きた最大規模の前震の震源域から、東の場所でゆっくり滑りが発生したことを突き止めた。本震が起きるまでの間、滑りは海溝近くで加速していたとみられ、海溝付近の断層が50メートル以上も滑ったのはこの影響かもしれない。
防災科学技術研究所の南海トラフのシミュレーション(模擬実験)では、巨大地震の発生が近づくと、ゆっくり滑りの発生間隔が短くなる可能性がある。
一方、浅部の超低周波地震の活動度は、海溝付近の固着状態の指標として期待される。三陸沖では活動度が非常に低く、固着が強かったことの反映だった可能性がある。南西諸島海溝沿いでは活動度が高いらしいことも分かってきた。
巨大地震との密接な関係が見え始めたゆっくり地震。さらに研究が必要だが、小原教授は「観測現象の中でも期待が大きい存在。詳しく解明し、予知や予測に役立てたい」と話す。
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