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首都直下M7.3巨大地震あなたと家族が生き残る、たった「五つのルール」「死者2万3000人」の政府シミュレーションは甘すぎる
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38087
2014年01月20日(月) 週刊現代 :現代ビジネス
年の瀬に政府が発表した、首都直下地震の被害想定。意外に小さな数字に、そんなものかと安心してしまった人も多いだろう。だが、それは大間違いだ。生き残る術を考えておけるのは、今しかない。
■この想定は小さすぎる
「いや、これはもう勘繰りでもなんでもなくてね。東京オリンピックに向かって国際的な不安を起こしたくない。そういう想定になっているんですよ」
こう話すのは、関西大学社会安全学部の河田惠昭教授だ。「そういう想定」とは、内閣府が昨年12月19日に公表した、新しい首都直下地震の被害想定である。
東京・大田区付近の直下でM7・3の大地震が起こった場合などを想定し、最大死者約2万3000人、倒壊・焼失する建物は約61万棟、経済的損失は約95兆円とされた―。ここまではテレビや新聞で目にした方も多いだろう。
「去年3月に公表された南海トラフ巨大地震の被害想定では、『あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大地震の被害』を出していました。
ところが、今度の首都直下では、『現実的に一番、起こりそうな被害』を考えている。3・11の教訓を忘れたかのような書きぶりの報告書では困るんですがね」(河田氏)
南海トラフ巨大地震の被害想定ではM9・1、死者32万人、経済的損失220・3兆円とされた。それに比べて2万3000人という今回の数字はインパクトが薄く、あまり深刻に受け止めなかったという声も多い。
だが、超過密都市・東京のすぐ足下で巨大地震が発生するのに、被害がそれだけで済む、などということが本当にあるのか。
実は、今回の内閣府の想定をよく読むと、数々の重大な危険が「想定」されているにもかかわらず、数字のうえでは算入されず、隠れてしまっているのだ。
たとえば、東京ドームのような「大規模集客施設」、新宿駅や渋谷駅のような「ターミナル駅」、「地下街」の想定では、
〈多くの利用者が滞留した状況下において、停電や火災の発生、情報提供の遅れなど複数の条件が重なることにより、利用者の中で混乱、パニックが発生する〉
と指摘されている。にもかかわらず、数字のうえでは死者も負傷者もゼロだ。
「『パニック等の混乱による死者数・負傷者数』の統計的なデータがみられない」(内閣府防災担当・田村英之参事官補佐)として具体的な数は算出されていない。
朝夕、のべ8400万人近い人々が通勤・通学で移動し、連日スポーツの試合や音楽のライブが行われている首都圏の被害想定としては確かに楽観的すぎる。
元土木学会会長で液状化現象に詳しい濱田政則・早稲田大学理工学部教授も新想定には疑問を投げかける。
「役所の縦割り行政の弊害とも言えるでしょうが、今回の新想定には経産省が主導して進めてきた、湾岸部の液状化に関する大規模な調査の結果が、まったく反映されていない。
被害が最大になるのは都心南部直下のM7・3地震というけれども、そうなると川崎周辺に広がる古いコンビナート地帯が大きな打撃を受ける。その地域のデータを盛り込まないで、被害が見積もれるはずがない」
3・11では千葉県で液化石油ガスのタンク火災事故が発生。爆発・炎上したタンクの破片は現場から4km離れた住宅街近くでも見つかった。幸い人的被害はなかったものの、次に来る首都直下地震でも被害が出ないとは言い切れない。
さらに濱田氏は、首都直下地震の被害想定の甘さを、こう指摘する。
「たとえば、江戸時代以前は『日比谷入江』と呼ばれていた、大手町、日比谷から新橋付近、つまり東京の中心街でも、液状化現象が起こる可能性は十分にある。古い埋め立て地なら土地が締め固まって、強固になるという説もありますが、科学的には証明されていない。高層ビルの基礎の杭は地下の岩盤まで届いているため影響が少ないにしても、上下水道やガス、電気・通信などのインフラ設備は地下の浅いところを通っている。そう簡単に復旧できると考えていては甘い」
■計算されていない死者の数
さらに、首都圏に無数に存在する高層建築物についても、新想定にはいくつもの「穴」がある。
たとえば、前出の河田氏は次のように指摘する。
「ビルや地下鉄の駅などには、距離の長いエスカレーターがありますね。あれが揺さぶられたとき、乗っている人が一人でも転倒したら、ドミノ倒しで多くの人が巻き込まれる。それがどのくらいになるのか。試算されていないリスクがたくさんある。
首都圏には高さ60m以上の超高層ビルが1600棟以上ありますが、そこで起こる特殊な状況も検討し尽くされているとは言い難い」
都市防災が専門のまちづくり計画研究所所長・渡辺実氏も、こう警告する。
「今回の想定では、首都圏の真下だけでなく、相模トラフや房総沖など、首都に近いエリアで起こる海溝型の地震も検討されています。
そうした場合、高層ビルや長い橋梁などを大きく揺らす、長周期地震動も問題になってくる。
高層ビルの上層階では、場合によっては、振幅が2~3mにもなる揺れが何分もつづくことがあるんです。そうなれば、コピー機や固定されていない書架、机などがフロアを転げまわる。中にいる人が大ケガをするだけでなく、最悪の場合、窓が割れて人が落下するような事態も考えられるのです」
線路に出るのは危険
さまざまな専門家の話を総合すると、死者2万3000人という数字はやはり過小評価なのではないかという疑問が強くなる。
「統計的に見ても、トルコや台湾、四川、阪神・淡路の大震災では被災地人口のおよそ0・1%が死亡している。私の計算では、首都圏なら3万人以上になるはずで、やはりこの想定より多くなってしまう」(前出・河田氏)
では、そんな大災害のただなかで、私たちはどうしたら自分や大切な人の命を守ることができるのか。
日頃の備えなど、やるべきことはたくさんあるが、ここでは本誌が専門家たちの話を参考に選んだ、「家族を守る五つのルール」をご紹介しよう。
■ルール まず柱を見よ
'95年の阪神・淡路大震災のとき、神戸市庁舎2号館では6階部分が完全に潰れる被害が起きた。このように、ビルの柱が地震などの揺れに耐えきれず、潰れる現象を「座屈」という。
テナントビルや賃貸マンションの耐震化率は伸び悩んでいる現状があり、会社や自宅、買い物先などの建物で、自分のいる階の柱が次々と座屈を起こし、ぺしゃんこになってしまう可能性も無視できない。
地震の最初の揺れをどうにかやりすごしたら、まず冷静に周囲の状況を確認しよう。負傷者の有無や避難路の確認はもちろん必要だが、その際、さらに建物の柱に注目するとよい。
「複数の柱に横一文字に大きく走ったひび割れがあるときは、余震などで座屈が起き、その階が潰れる恐れがあります」(前出・渡辺氏)
危険を感じたら周囲の人と声をかけあって、あわてずに下の階に移動しよう。むやみに大声を出すとパニックを誘発する恐れもあり、極力、冷静に行動したい。
ルール2 電車からあわてて飛び出さない
電車での移動中、駅と駅の間で被災すると、あわてて線路に降りて避難したくなるかもしれないが、それは禁物だ。
レールから車内の床までの高さは約1・2m。誰かが勝手にドアを開け、乗客が殺到すれば、押し出された人が落下。さらにその上に次々と人がなだれ落ち、大ケガはもちろん、最悪の場合、圧死する恐れもある。
また、東京メトロ銀座線、丸ノ内線などの地下鉄では、レール近くを高圧電流が走る第三軌条方式を採用しており、不用意に出歩けば感電死の危険も免れない。
地下鉄のトンネルが崩壊することなどはまずない。頻繁に鉄道を利用する人が備えるべきは、むしろ長時間の閉じ込めだ。ペットボトルの水と、トイレ替わりにもなるコンビニの袋などを携行するとよい。
「私は東京に出ていくときは、いつでも携帯ラジオ、ペットボトルの水、方位磁石、携帯電話の充電器、目薬、抗生物質の入った軟膏などのセットを持っていますよ。いつ首都直下地震が来てもおかしくないんですからね」(前出・河田氏)
ルール3 ヘタに動くな
首都直下地震での津波高の想定はあまり大きくない。だが沿岸地域では、念のため、すぐに高台に避難する必要がある。
一方、内陸の東京都心から都下、埼玉・千葉方面にかけての地域では、地震後あわてて帰宅したり、避難所への移動を始める前にするべきことがある。
「それは周辺の人々を助けることと、初期消火です。
阪神・淡路大震災のときも、倒壊した家屋などで生き埋めになった人のうち、近隣の人々が助け出した2万7000人の8割が助かりましたが、消防や自衛隊が掘り出した8000人では半数が亡くなった。
平時の火災などとは違い、大地震の際は、いま、そこにいる人々が互いに全力で助け合わなければ、生き残れない」(渡辺氏)
さらに、都心に勤めている人が無理に郊外に帰ろうとすれば、大きな死の危険が待っている。
実は、都心を囲む環七通り沿いの世田谷区、杉並区、北区、足立区などには木造住宅密集地域、通称「木密」が広がり、地震時には大規模な火災に包まれると予想されている。
「大火災の輪を運よく抜けられても、神奈川方面に帰ろうとする人は大変です。都心南部直下地震の震源を見ると、多摩川にかかる橋が直撃を受けて落下している可能性もある。行き場を失った大量の人が滞留し、混乱が広がる可能性は否定できない」(渡辺氏)
橋梁への長周期地震動の影響を研究してきた、東京大学・藤野陽三名誉教授も、こう指摘する。
「3・11の際、横浜ベイブリッジでは長周期地震動で振幅60cmもの揺れが発生し、走行中のトラック1台が横転する事故が起きました。この影響で30時間、交通がストップしたのです。
もし高速道路で複数の車両が横転し、走行を諦めた人々が高架橋の上に車を乗り捨てて逃げてしまったら、そのルートは長期間、機能しないことになる」
高架橋が通れないとなれば、首都圏の交通網のマヒに拍車がかかる。心配はそれだけではない。
「隅田川などに架かっている永代橋のような古い橋は、耐震補強はされているはずですが、直下型の地震に共振し、壊れないまでも大きく変形する可能性がある。
以前、警察の方がこれを本気で心配して相談に来たことがありました。『警察官は埼玉方面に住んでいる者が多く、隅田川に架かる橋が全部通行止めになると都心に向かえない。大丈夫だろうか』と」(藤野氏)
■家電が突然、火を噴く
ルール4 避難する前に、電気のブレーカーを落とす
今回の想定であらためて指摘され、多くの人が驚いたのが、「家電が突然、火を噴き火事の原因になる」という「通電火災」だろう。
原理はこうだ。ファンヒーターや電気ストーブ、電気ポットなど、家のなかにはたくさんの電熱器具がある。大地震の揺れで、これらはひっくり返った荷物の下などに倒れ込むが、停電が発生するため、大きな被害は起こらない。
ところが数日後、電気が復旧して通電が再開するとこれらの電熱器具が突然、動作をはじめ、荷物に火が移って火災の原因となる。
状況が落ち着き、家の片づけが終わるまでは電気のブレーカーを落としておくのが賢明だ。
とくに、避難が必要で家を離れる場合は要注意だ。せっかく地震後すぐの火災では延焼を免れても、電気が復旧したとたん、家で火災が発生し、家財道具を失う上に周囲の人々にも迷惑をかけてしまうのだ。
ルール5 SNSの活用を
首都直下地震後、すぐに離れた場所にいる家族や友人と連絡を取ることは、実質上、不可能と言ってよい。
公衆電話などから災害用伝言ダイヤルを利用して、自分の身の安全を伝えることはできても、一般の通話は、携帯電話も固定電話もともに、通信に対する規制(輻輳規制)が行われ、まずつながらない。通信手段として強いのは、小さなデータで成り立つパケット通信だ。メールやインターネットのほうが、早期に連絡がつく可能性は高い。
携帯電話もなかなか充電できないことを考えれば、一対一のやりとりが基本のメールよりも、フェイスブックなどのSNSで情報交換するほうが効率がよい。
年頃の娘や息子は、家族とSNSでつながるのを嫌がる場合も多いだろうが、「万が一のときだけ使うのでもいいから」とお互いに登録し合っておいたほうがよい。ただし、災害時にネット上で飛び交う情報にはデマが多いので、あくまで家族・知人との連絡手段ととらえるのが得策だ。
いつ来てもおかしくない首都直下地震。準備を始めるなら、今しかない。
「週刊現代」2014年1月18日号より
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