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島村英紀氏
高まる首都直下型 島村英紀氏が「地震」を警告
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20140106/dms1401061133000-n1.htm
2014.01.06 夕刊フジ
「あの日」から2014年3月11日で3年が経過する。
東日本大震災(東北地方太平洋沖地震=マグニチュード〈M〉9)は東日本全体を載せたまま北米プレートを東南方向に大きく動かしてしまった。正確な測定は陸上部だけしかできていないが、宮城県の牡鹿半島では5・2メートル、首都圏でも30−40センチもずれた。このために、日本列島の地下がリセットされてしまったことになる。各所に生まれたひずみが地震リスクを高めている。
もともと首都圏は、世界でも珍しいほど地震が起きやすいところだ。それは首都圏の地下には、プレートが3つ(太平洋プレート、北米プレート、フィリピン海プレート)も同時に入っていて、それぞれのプレートが地震を起こすだけではなくて、お互いのプレートの相互作用で地震を起こすからだ。
世界では2つのプレートが衝突しているために地震が多発するところはある。しかし3つのプレートが地下で衝突しているところは少なく、なかでもその上に3000万人もの人々が住んでいるところは、世界でもここにしかない。
2013年11月に茨城県や千葉県の地下を震源とするM5クラスの地震が続発したように、もともと少なくはない首都圏の直下型地震は、東北地方太平洋沖地震以来、様相が変わってきたように見える。これらの地震は地下がリセットされてしまったことと無関係ではない。
実は、もっと間の悪いこともある。地震にはM8を超える「海溝型地震」と、M7クラス以下の「内陸直下型地震」の2種類がある。海溝型地震は一般には日本の沖で起きるが、首都圏だけが海溝型地震が「直下」で起きてしまうという地理的な構図になっているのだ。このため、いままでも大正関東地震(関東大震災、1923年)や元禄関東地震(1703年)といった海溝型地震が首都圏を襲った。
このうち元禄関東地震の方が地震としては大きく、小田原で津波による大被害が出たほか、海から2キロも離れている鎌倉の鶴岡八幡宮まで津波に襲われた。
内陸直下型地震は繰り返しが分からないが、海溝型地震は繰り返す。元禄関東地震、大正関東地震と繰り返してきた地震も、以前はあと100年ほどは起こるまいと思われていたのが、東北地方太平洋沖地震の影響で、もしかしたらもっと早まるかもしれないと思われ始めている。
江戸時代から現在までの首都圏の地震活動を見ると、不思議なことに大正関東地震以来の90年間は異常に静かだったことが分かる。例えば東京では、この間に震度5は5回しかない。しかしその前の300年間はずっと多かったし、被害地震も多かった。
実は元禄関東地震の後も70年間、静かな期間が続いたのである。首都圏は一時の静穏期間が終わって、いわば「普通の」、つまりいままでよりは活発な地震活動に戻りつつあるのだろう。 (武蔵野学院大特任教授)
■島村英紀(しまむら・ひでき) 1941年、東京都生まれ。東大理学部卒、東大大学院修了。理学博士。東大理学部助手を経て、北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。『直下型地震 どう備えるか』(花伝社)など著書多数。
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