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【論風】防災・危機管理ジャーナリスト 渡辺実 首都直下地震の新被害想定
http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/131226/cpd1312260502004-n1.htm
2013.12.26 05:00 SankeiBiz
■首都機能移転・分散再検討も
12月19日中央防災会議は、首都直下地震の新しい被害想定を公表した。東日本大震災が発生したあとの科学的な新しい知見をもとに改訂された。
◆震源域を南部に変更
これまで18パターンある首都直下地震のうち、クローズアップしてきたのは荒川河口付近を震源とする「東京湾北部地震(モーメントマグニチュード=Mw=7.3)」であった。しかし、今回は内陸を震源とするマグニチュード(M)7クラス直下型地震19パターン、M8クラスの海溝型地震7パターンの計26パターンを対象として検討が進められた。その中で甚大な被害が予想される大田区周辺を震源域とする都区部直下のM7クラスの「都心南部直下地震(Mw7.3)」を防災対策の主眼を置く地震として位置づけている。なぜ想定地震が東京湾北部地震から都心南部直下地震になったのか、多くの読者が疑問に思っていることと思う。
このことを、東日本大震災以降の最新の科学的な知見により想定した結果、と中央防災会議は説明する。そして死者数2万3000人、経済被害95兆円と前回を大きく上回る被害像となった。震源域を首都南部にしたことにより震度6以上の区域がより広範囲になったのだから、被害も大きくなるのは当然だ。先の南海トラフ地震被害想定も今回の首都直下地震でも、想定外をなくすという概念が導入されている。科学的知見は時間とともに進化し、あるいは進化しなければならないのだから、想定震源域が変わることは必然だ。
しかし、新たに公開される度に被害像が大きく変わり、その対応を迫られる自治体は混迷し、日常生活とかけ離れた数値やイメージを差し出されても市民はついていけない。どんどん巨大化する被害想定結果は、市民が向き合おうとしている防災イメージから遠ざかってはいないだろうか。何をしてもダメだ、と諦めの境地に入っていくことだけは避けなければならない。政府の被害想定がどう変わろうとも、市民ができる、やらなければならない防災対策には、変わりはないのだから。
今回は新しく「逃げ惑い」という言葉が登場した。2万3000人の死者の半数以上が火災による。首都圏には木造密集地域が多く存在し、ここから延焼火災が発生した場合に逃げ場を失う人々が右往左往して逃げ惑う危険がある。同時多発で発生する市街地火災が大都市震災の特徴の一つ。18年前の阪神・淡路大震災後には「燃えない街づくり」が教訓として指摘されたが、ここに記されているのは18年経過してなお教訓を生かしていないという現れだ。避けられない市街地大火である。市民レベルの対策は、地震後に火事をださないことに尽きる。対策に挙げられている通電火災を防止する感震ブレーカーの設置を義務づけることは有効な手段だ。全国のガス会社はすでに、地震時に自動的にガスを止めるマイコンメーターを各戸に無料設置している。今度は電力会社の番である。
◆国の存亡に係る初動対応
地震発生から概ね10時間の対応を「国の存亡に係る初動対応」と位置づけた。さらに、国の存亡に係る情報発信を国内外へ行う、と記載している。ここまで踏み込んだ文言は初めてである。首都直下地震とは、関東地方が被災するだけではなく、首都東京が被災するのであるから、その対応を間違えればまさに国の存亡に係る。首都直下地震は国難レベルではなく「国滅」になると、以前から筆者は警鐘を発している。しかし、現政権は、国家強靱(きょうじん)化特区で都心部の容積率緩和を行い、ますます都心部の高密度化を進めようとしている。
30年間発生確率70%と算出されている首都直下地震被害想定にリアリティーを持っているのであれば、本気で首都機能の移転・分散を再び検討することが必要であり、2020年東京五輪誘致も、その返上も含めた相当な覚悟をもたなければならないのではないだろうか。「防活」などと言葉遊びをしている場合ではない。
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【プロフィル】渡辺実
わたなべ・みのる 工学院大工卒。都市防災研究所を経て1989年まちづくり計画研究所設立、代表取締役所長。NPO法人日本災害情報サポートネットワーク理事長。技術士・防災士。62歳。東京都出身。
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