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パキスタンの大地震は決して“対岸の火事”ではない(AP)
【警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識】大地震発生パキスタンと日本の意外な関係
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20131011/dms1310110726007-n1.htm
2013.10.11 夕刊フジ
さる9月24日にパキスタンでマグニチュード(M)7・7の大地震があった。険しい山岳地帯で集落が散在しているところが多く、被害の全貌はいまだにつかめていないが、時間がたつにつれて死者数百人以上という大きな被害が明らかになってきている。発生4日後にも大きな余震があって、また死者を増やした。
この地域に限らず、木が生えていない南・西アジア各地では「日干しれんが」という泥を乾燥させただけのれんがを積み上げた家が多い。地震の死者が多くなる理由だ。
日本にとって関係がない事件だと思うかもしれない。だが地球物理学から見れば、実はこの地震は日本の梅雨にも関係しているのである。
「インド亜大陸」というプレートがある。いまの国名でいえばインドやパキスタンやネパールを載せた逆三角形のプレートだ。
このプレートはもともと南極にあったが、しだいに北上してきたプレートである。約5000万年前に赤道を越えたあとも北上を続け、1000万年あまり前にユーラシアプレートに衝突した。つまりいまの位置にくっついたわけだ。
しかしそれだけではなかった。このプレートはさらに北上を続けようとしている。このため、インド亜大陸のプレートと、衝突されたユーラシアプレートがめくれ上がった。こうしてできたのが、ヒマラヤ山地とチベット高原なのである。世界最高峰、エベレストの山頂には貝の化石がある。ここはかつて海底だったのが持ち上げられたのだ。
このプレートの衝突のせいでパキスタン地震が起きた。いや、この地震だけではない。2005年にもM7・6の大きな地震がパキスタンを襲って、確認された死者だけでも9万人以上という大被害を生んでいる。
それだけではない。08年に中国南西部で起きた四川大地震(M7・9)も、逆三角形をしているインド亜大陸の右上の端で起きている。左上の端で起きたパキスタン地震と同じ構図なのである。この四川大地震では多くの学校が潰れるなどして9万人以上の死者を生んでしまった。
ところで、こうしてできたヒマラヤ山地とチベット高原は、地球が自転しているためにいつも東向きに上空を吹いている偏西風(へんせいふう)をさえぎることになった。
偏西風の通り道は季節によって南北に動く。初夏にはこの偏西風がちょうどヒマラヤ山地とチベット高原にあたって南北に分断されることになる。
こうして2つに分かれた偏西風がずっと東、日本まで来て合わさる。そして合わさったことによって気圧が高くなって冷たいオホーツク高気圧を作る。
このオホーツク高気圧と日本の南方海上にある暖かい小笠原高気圧の間に梅雨前線ができる。かくて中国の東部から日本まで、梅雨の雨が降るというわけなのである。
地球はつながっている。日本に住む地球物理学者としては、パキスタンの地震はひとごとではないのだ。
■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。理学博士。東大理学部助手を経て、北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。『直下型地震 どう備えるか』(花伝社)など著書多数。
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