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大地震起こす活断層 大半は地表に変化なし
動画⇒http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131006/k10015072671000.html
10月6日 19時28分 NHK
過去90年間に国内の活断層で起きた大地震の80%余りは、地表では長大な段差などの大きな変化を伴わずに発生していたことが専門家の分析で分かりました。
専門家は、地表からは確認されない活断層が潜んでいることを念頭に、地震に備える必要があると指摘しています。
東北大学の遠田晋次教授は、過去90年間に国内の陸地の活断層で起きたマグニチュード6.5以上の合わせて33回の地震で、断層の動きによる段差などの変化が地表にどの程度現れていたか分析しました。
その結果、平成7年に阪神・淡路大震災を引き起こしたマグニチュード7.3の兵庫県南部地震など、全体の18%に当たる6つの地震では、地震の規模や活断層に相当する長さの段差などが地表で確認されました。
一方、平成20年に起きたマグニチュード7.2の岩手・宮城内陸地震など、80%余りの地震は、段差などの変化が一部にとどまったか、全く確認されませんでした。
地表の変化が小さかった多くの地震では、活断層の存在が事前に確認されていませんでした。
遠田教授は、「地表から地下の活断層を推定するには限界があり、被害につながる活断層の8割程度は見逃されている。調査の技術を向上させる必要性がある」と指摘しています。
そのうえで、「活断層が確認されていない地域でも安心はできない。至る所に潜んでいる可能性があると認識して耐震補強などの対策を進めてほしい」と話しています。
■活断層過去の地震では
活断層は地震が起きるたびにずれ動く断層で、専門家は、地表に現れた段差や崖などの痕跡を頼りにその存在を確認してきました。
しかし、地表の変化の現れ方は非常に複雑で、近年に起きた地震では事前に活断層を見つけたり、地震の規模を想定したりすることの難しさが浮き彫りになっています。
内陸の活断層で起きる地震の多くは、深さ5キロから20キロ程度の地下深くで発生するため、地震でずれ動いた活断層が直接、地表に現れることは極めてまれです。
ただ、大地震の場合は地層が大きくずれ動くため地表にも段差や崖などが現れることがあり、専門家は、航空写真の判読や掘削調査などを行って地下の活断層の存在を確認してきました。
18年前の平成7年、阪神・淡路大震災を引き起こしたマグニチュード7.3の兵庫県南部地震では2つの活断層がずれ動きました。
その1つ、「野島断層」は長さがおよそ20キロで、専門家の間では以前から存在が知られていました。
この地震の際にも地表にはおよそ17キロにわたって段差が現れました。
しかし、活断層で起きる大きな地震でも地表に明瞭な変化が現れないケースが数多くあります。
5年前の平成20年に起きたマグニチュード7.2の岩手・宮城内陸地震では、震源地周辺のところどころで数十センチ程度の小さな段差が見つかりましたが、いずれも連続していませんでした。
その後、掘削調査を行ったところ、地下では地層が上下に2メートルほど食い違っていたことが分かり、過去の地震でも繰り返しずれ動いていた活断層の存在が明らかになりました。
一方、平成16年に起きたマグニチュード6.8の新潟県中越地震や、平成19年のマグニチュード6.9の能登半島地震では、地震のあとの調査でも顕著な変化が確認されませんでした。
さらに、東北沖の巨大地震の1か月後、おととし4月に福島県で起きたマグニチュード7.0の地震では、小規模な2本の活断層に沿って地面が上下に最大2メートルもずれ動く、大きな変化が現れました。
これらの活断層の存在は事前に確認されていたものの、大きな地震が起きると考えていた専門家はほとんどいませんでした。
このように、活断層の地震による地表の変化の現れ方は非常に複雑で、事前に活断層を見つけたり、地震の規模を想定したりすることは難しいのが現状です。
■評価方法の見直し進む
政府の地震調査委員会は、防災対策を促すため、国内の主な活断層を対象に調査や分析を進め、地震が起きる確率や規模などの評価を公表してきました。
しかし、評価の対象となっていない活断層で地震が相次いでいることから、評価方法の見直しを進めています。
18年前の阪神・淡路大震災をきっかけに、政府は専門家による地震調査委員会を設け、大地震のおそれがある長さ20キロ以上の活断層を中心に、重点的な調査や分析を進めることになりました。
そして、これまでに110の活断層について将来、地震が起きる確率や地震の規模などの評価結果を公表してきました。
しかし、この18年余り、国内で大きな被害が出た地震は、いずれも評価対象となった活断層以外で発生しています。
例えば、平成16年の新潟県中越地震は活断層が確認されていない地域で発生し、平成17年の福岡県西方沖地震や平成20年の岩手・宮城内陸地震などは、地震が起きてから活断層の存在が明らかになりました。
このため地震調査委員会は、比較的短い活断層も評価の対象に加えていくとともに、地震の発生確率などは複数の活断層を含む地域ごとに算出するよう、評価方法の見直しを進めています。
ことし2月には九州の活断層で地震が起きる確率を公表し、今後は関東など全国の各地域について新たな評価を公表していく予定です。
専門家の間では、活断層の調査の手法も見直されつつあります。
これまでは航空写真などから地形の変化を読み取ったうえで、一部の地域で掘削調査などを行い、地層の食い違いを見つけることで活断層の存在を確認してきましたが、こうした方法だけでは、地下深くに隠れた活断層が見逃される場合があります。
そこで、最近注目されているのが航空機とレーザーを使った精密な測量技術です。
樹木や建物に覆われた地域でも詳細な地形の変化が確認できるため、活断層を見つける手がかりが得られやすいということです。
東北大学の遠田晋次教授は「活断層の調査には限界があるが、今までにあるデータを有効に活用するだけでなく、小さな断層も見つけられるような新たな調査手法を検討していく必要がある」と指摘しています。
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