http://www.asyura2.com/13/jisin19/msg/311.html
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7年ほど前の記事です。記事中の最大加速度の値に注目してください。これらは一方向(例えば東西方向)だけのものですが、南海地震などでの最大加速度の見積もりが非常に小さいと思いませんか。過小評価がされていると思います。
東北地方太平洋沖地震での最大加速度は宮城県の内陸の市である栗原市で観測されました。(3方向の合成加速度です。1方向のものよりも大きくなります。)
最大加速度(PGA): 2,933ガル(宮城県栗原市)
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E5%8C%97%E5%9C%B0%E6%96%B9%E5%A4%AA%E5%B9%B3%E6%B4%8B%E6%B2%96%E5%9C%B0%E9%9C%87 より引用)
しかし、東北地方太平洋沖地震では海岸部が東方へ数メートル移動したのです。そういった移動を伴う揺れよりも内陸の方が揺れが大きかったということに疑問を感じます。
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/ba/06/
阪神大震災の4連発分が建物を襲う
建築&住宅ジャーナリスト 細野 透氏
2006年12月6日
今後起きる地震では建物にどれほどのエネルギーが伝わるのだろうか。阪神・淡路大震災のとき神戸海洋気象台で記録された地震波がある。これを「神戸波」と呼ぶことにして、それと比較して見てみることにしよう。
日本大学教授の秋山宏氏、東京理科大学教授の北村春幸氏の最近の研究によると、想定「南海地震」に襲われた西大阪では、地震波から建物に伝わるエネルギーは、神戸波と比較すると実にその 3.76 回分に相当することが分かった。
別の言葉を使うと「神戸波 3.76 連発」と表現してもいい。西大阪の地震波は、神戸波が1回来ておしまいではなく、2回目が来て、3回目が来て、さらに付録が 0.76 回分付くような「連発波」に例えられるのだ。
想定「南海地震」は、プレート境界で発生する海溝性の巨大地震である。こうした巨大地震の長周期地震波から建物に伝わるエネルギーはすさまじい。想定「東海東南海地震」に襲われる名古屋・三の丸では神戸波の 3.64 連発だし、想定「関東地震」に襲われる東京・気象庁では神戸波の 1.92 連発に相当する。
はじめに注意しておきたいのは、「地震のエネルギー」と「建物に伝わる地震波のエネルギー」は違うということだ。地震のエネルギーはマグニチュード(M)で表す。M7.0は「2.0×10の15乗」ジュール、M8.0は「6.3×10の16乗」ジュール。マグニチュードが1大きいと、エネルギーは約 31.5 倍になる。
マグニチュードはよく原子爆弾に例えて説明される。広島型原爆が持っていたエネルギーには諸説があるが、M5.2相当だったと推定すると、阪神・淡路大震災はM7.3だったので、広島型原爆の約 1000 発分だったことになる。
一方、建物の耐震性を検討するときには、マグニチュードではなく、地震波(特定の場所の揺れの強さを示す)を使う。地震波には大きく3タイプある。実際に記録された「観測波」、観測波に手を加えた「加工波」、予想される震源で起こった地震が建物の敷地にどう伝わるかをシミュレーションして作った「サイト波」だ。
「おとなしかった」昔の地震波
阪神・淡路大震災以前は、超高層建築の構造計算では、次の三つの観測波が使われることが多かった。
▲エルセントロNS波(1940年、米国、NSは南北を意味)
最大加速度342ガル(cm/sec2)
最大速度33カイン(cm/sec)
継続時間54秒
卓越周期0.6秒、1.0秒、2.4秒など
▲タフトEW波(1952年、米国、EWは東西を意味)
最大加速度176ガル(cm/sec2)
最大速度18カイン(cm/sec)
継続時間54秒
卓越周期0.44秒、0.84秒、1.64秒など
▲八戸EW波(1968年)
最大加速度230ガル(cm/sec2)
最大速度34カイン(cm/sec)
継続時間51秒
卓越周期2.6秒
卓越周期とは地震波のうち最も大きな振動を示す波の周期。この卓越周期と建物の固有周期が一致すると、共振して大きな被害を出すことがある。
50階建て、階高 3.5 mの超高層建築の場合、固有周期は鉄筋コンクリート造だと 3.5 秒、鉄骨造だと 5.3 秒になる。三つの地震の卓越周期は 1.6〜2.6 秒なので、50 階建ての超高層と共振する可能性は少ない。
三つの地震波の特徴は最大加速度 342 ガル以下、最大速度 34 カイン以下、継続時間 50 秒台であること。阪神・淡路大震災以降の地震波と比較して「おとなしい」のが特徴だ。こういった数字を参考にして、超高層の構造計算では速度として 40〜50 カイン(加速度 400〜500 ガルに相当)を採用。三つの地震波を速度 40〜50 カインを基準にした加工波に変換し、その加工波で揺さぶられても建物が安全かどうかをチェックしていた。
阪神・淡路大震災と十勝沖地震の衝撃
阪神・淡路大震災ではこんな地震波が記録された。
▲阪神・淡路大震災 神戸海洋気象台NS波(1995年)
最大加速度818ガル(cm/sec2)
最大速度91カイン(cm/sec)
継続時間50秒
卓越周期0.9秒
エルセントロ波、タフト波、八戸波と比較すると、継続時間、卓越周期はほぼ同じなのに、最大加速度、最大速度がはるかに大きいことが特徴だ。このために、「超高層の構造計算に際して速度 100 カイン(加速度 1000 ガルに相当)を採用すべきではないか」とする意見も出るようになった。
阪神・淡路大震災に次いで、大きな衝撃をもたらしたのは十勝沖地震(2003年)だった。
▲十勝沖地震 苫小牧NS波(2003年)
最大加速度87ガル(cm/sec2)
最大速度31カイン(cm/sec)
継続時間328秒
卓越周期3.4秒、5.0秒、7.5秒など
最大加速度、最大速度こそ大きくはないものの、継続時間が 328 秒と長いこと、卓越周期が 3.4 秒と 50 階建て鉄筋コンクリート造建物の固有周期( 3.5 秒)に近くて共振する恐れがあるのが特徴だ。すなわち、超高層建物で大きな揺れが長時間続く「長周期地震」の存在が実証されたのだ。
現在、最も心配されているのがプレートの境界で起こる海溝性の巨大地震、関東地震(M7.9 程度)、東海地震(M8.0 )、東南海地震(M8.1 前後)、南海地震(M8.4 前後)などだ(いずれも数値は想定値)。これらの巨大地震を対象に、シミュレーションして作った「サイト波」にも十勝沖地震同様の傾向がある。
▲南海地震 大阪管区気象台NS波(想定地震)
最大加速度68ガル(cm/sec2)
最大速度28カイン(cm/sec)
継続時間440秒
卓越周期4.8秒
▲東海地震 名古屋三の丸EW波(想定地震)
最大加速度186ガル(cm/sec2)
最大速度51カイン(cm/sec)
継続時間328秒
卓越周期3.0秒
▲関東地震 東京気象庁NS波(想定地震)
最大加速度245ガル(cm/sec2)
最大速度27カイン(cm/sec)
継続時間200秒
卓越周期1.5秒、3.0秒、5.3秒など
図1 阪神大震災・神戸海洋気象台NS波(JMA KOBE NS波) 継続時間は50秒、最大加速度は818ガル
(*元記事ではここに図があります。)
図2 想定南海地震・大阪管区気象台NS波(KK-OSA-NS波) 継続時間はなんと440秒、最大加速度は68ガル
(*元記事ではここに図があります。)
(釜江・入倉によるシミュレーション波)
これが地震波のエネルギー比較表
エルセントロ、タフト、八戸、阪神などの「従来型地震波」と「長周期地震波」の違いを、だれにでも簡単に分かるように表現するためにはどうすればいいのか。秋山宏・日大教授、北村春幸・東京理科大教授が、連名で日本建築学会の構造系論文集 2006 年 10 月号に発表した論文は、それに対する一つの回答だ。秋山教授は日本建築学会の前会長。地震による構造物へのエネルギー入力に関する研究をリードし、その著書「建築物の耐震極限設計」(東京大学出版会)は耐震研究者の必読書になっている。
さて、論文のタイトルは「エネルギースペクトルと速度応答スペクトルの対比」。難しい専門用語を使って書かれた研究論文なので、結論だけを要約する。
それぞれの地震波から建物に伝わる「地震エネルギー」を求める。
阪神・淡路大震災 神戸海洋気象台NS波を一つの基準として採用し、「単位地震波」と名付ける。
それぞれの地震波と単位地震波の地震エネルギーを比較して「倍率(反復数)」を計算する。
(*元記事には、ここにhttp://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/ba/img/06_zu03.gifの図表があります。この阿修羅の記事の上部に表示されているものです。)
神戸NS波(単位地震波)の反復数は1.00。これに対して、想定南海地震 西大阪波の反復数は 3.76 、想定東海東南海地震 名古屋三の丸波の反復数は 3.64 などとなる。
反復数が 3.76 とは、「神戸NS波が 3.76 回続けて伝わった」という意味。「神戸NS波の 3.76 倍の地震が建物を一気に襲った」という意味ではない。
仮に、「神戸NS波の 3.76 倍の地震」、すなわち最大加速度 3076 ガル、最大速度 342 カインというものすごい地震波に襲われたとしたら、超高層を含めた多くの建物が大破、倒壊してしまうのではないか。だから、「神戸NS波の 3.76 倍」ではなくて、「神戸NS波の 3.76 連発」だったことを喜ばなくてはいけない。
地震のエネルギー(マグニチュード)は広島型原爆の「何発分」と例えられてきた。それに対して、長周期地震波から建物に伝わるエネルギーは、反復数を使って阪神・淡路大震災 神戸波の「何回分」、あるいは「何連発」と例えられることになるだろう。
「神戸NS波の×連発」に相当するエネルギーが建物に伝わるとどうなるのか ―― については、次回で説明する。
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