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大きな被害をもたらした関東大震災以来、首都圏は巨大地震に見舞われていない
【警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識】首都圏の地震少ないのは異例 そろそろなのか…
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20130927/dms1309270728004-n1.htm
2013.09.27 夕刊フジ
人は一生の間に何度の大地震を体験するものだろうか。
大正時代までの首都圏では、人々は4、5回以上の大地震を経験することが多かった。
私の友人は何世代にもわたって東京の下町に住んでいるが、その家には曾祖母の言葉が言い伝えられている。「大正関東地震(1923年)の揺れは大したことはなかった、安政江戸地震(1855年)の方がよほどすさまじかったよ」という言葉だ。その方はこのほか前回に書いた東京地震(1894年)も体験していた。
友人の曾祖母は関東地震のあと、東京が炎上するさまを見ながら「安政のときは揺れはすごかったのにこれほど燃えなかったのにねえ」と言ったという。都市化することは、たとえ同じ大きさの地震に襲われても「震災」が大きくなることなのである。
たしかに、東京の下町の揺れは、直下型地震である安政江戸地震の方がすさまじかった。また直下型ゆえ、短周期の強い揺れが特別に大きかった可能性が高い。
当時はいまよりも日本人の平均寿命ははるかに短かった。それでも一生の間に何度も大地震に遭ったのである。
実は首都圏の地震は、大正関東地震以来、不思議に少ない状態が続いている。
厳密に言えば、大正関東地震後6年間だけはマグニチュード(M)6クラスの地震で東京で震度5の地震が3つあった。
しかしそれから大地震がぱったりなくなった。約60年後の1985年、茨城県南部に起きたM6・0の地震まで震度5を感じたことは一度もなかったのである。その後も2011年の東日本大震災のときの5強まで2回しか震度5がなかった。
だが大正関東地震以前は違った。江戸時代から大正時代には、地震ははるかに多かった。江戸時代中期の18世紀から24回ものM6クラス以上の地震が襲ってきていたのだ。平均すれば、何と6年に一度にもなる。
以前、元禄関東地震(1703年)の話をした。大正関東地震の「先代」で、同じ海溝型地震である。実は、この地震の後も数年の間だけ大地震が続いた後、ぱったり地震がなくなった期間が約70年続いたのだった。
そして、その「休止期間」のあと地震が増えて、24回もの大地震がたびたび襲ってきたというわけなのである。
大正関東地震から90年たった。もし元禄関東地震の後で何かの理由で「休止」したとすれば、やはり海溝型地震である大正関東地震でも同じ理由で「休止」した可能性がある。今は「休止」がそろそろ解け出したとしても不思議ではない時期に入っているのである。
地球物理学的に考えれば、首都圏が大正関東地震以来「静か」なのは異例だ。むしろ、もっと地震が多いのが普通なのである。
■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。理学博士。東大理学部助手を経て、北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。『直下型地震 どう備えるか』(花伝社)など著書多数。
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