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この国は壊れ 始めている 千年猛暑 異常気象はまだまだ続く
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36816
2013年08月27日(火) 週刊現代 :現代ビジネス
「日本は温かく住みやすい温帯の国」。小学校の社会科で習った記憶のある方も多いだろう。だがこの夏の暑さはどう考えても住みやすい国の気候とは思えない。命を脅かす"異常"がこの国を覆っている。
■歴史を塗り変える暑さ
「最近、私は『千年猛暑』という言葉をよく使っているのですが、1000年前よりいまのほうが間違いなく暑い。有史以来というか、私たちは日本に人間が棲みついてから、一番暑い時期に生きているんじゃないかと思っています」
天気予報でおなじみの気象予報士・森田正光氏は、こう語る。
千年猛暑―。まさに今夏はその言葉にふさわしく、日本全国、とにかく暑い。
8月12日には高知県四万十市の江川崎観測点で、気象庁の観測史上、日本全国で最高記録となる41度を記録。同市では4日も連続で最高気温が40度を超える超異常事態が続いた。
他にも山梨県甲府市で40・7度(全国歴代5位)、甲州市で40・5度(同8位)、千葉県茂原市で39・9度(同19位)など、記録的な高温が各地で観測された(順位は8月14日現在)。
四万十市に最高気温の歴代1位の座を奪われた埼玉県熊谷市でも、1週間以上連続の猛暑日となる、とんでもない状況だ。
総務省消防庁のまとめでは、この夏(5月末~8月11日)に熱中症で救急搬送された人の数はなんと3万9944人で、去年の同時期より30%も増加。しかも、そのうち約4分の1にあたる9815人が、8月5日~11日のたった1週間で次々と病院に運ばれたのだという。
森田氏はさらに、本当の"異常気温"は、実は高知ではなく東京であらわれていたと指摘する。
「みなさん、最高気温のことばかりおっしゃいますが、我々、気象予報士が見ても驚くほど異常だったのは、東京の最低気温なんです。
なんと東京では10日から12日にかけて、42時間半も気温が30度を下回ることがなかった。30度以上の猛烈な暑さが、まる二日近く続いたのです」
それはどれほど珍しいことなのか。実は11日の東京の最低気温30・4度は、気象庁の観測史上、日本で2番目の高さだった。しかも、これほど長時間30度以上の気温が続いたのは観測史上初のことだ。
「私はあの2日間、朝から晩まで気温をウォッチしていましたよ。気温が30度を下回らないまま12日に日付が変わったときには、軽い興奮状態に陥りました。歴史が塗り替えられた瞬間に立ち会ったという気持ちになった。それまで『今後はそういう暑さもあるかもしれない』などと言ってはいたけれど、本当に起こるとは思っていなかったことが、現実になってしまったんですから」(森田氏)
すでにおなじみの言葉となったが、夜間の気温が25度を下回らない場合、「熱帯夜」と呼ばれる。
一方、夜間でも気温が28度以上になると、寝ている間に熱中症になり、死に至る人も出始めるとされている。この気温28度以上の夜を森田氏は「地獄夜」と呼ぶが、東京ではすでに地獄夜は当たり前、それを通り越して30度以上の「スーパー地獄夜」に襲われるようになっているのだ。
「最低気温で見れば、東京が日本で一番暑いという日が増えています。みんながエアコンを使って熱を室外に出すし、コンクリートのビルやアスファルトの道路は蓄熱器みたいなもので、昼間吸収した熱を赤外線として日没後も放出している。人間が出す排熱で暑くなる一方です」(森田氏)
もはや東京の真夏の夜は、窓を開けて、うちわをパタパタやっていればしのげるようなものではない。うっかり水分補給を怠ったり、冷房をつけ忘れたりしただけで命を落とす「地獄夜都市」に変貌してしまった。
このような超高温が続く理由について、気象予報士の大野治夫氏は、今年はとくにいくつかの要因が重なったと語る。
「ひとつは太平洋高気圧が強いことです。そもそも、太平洋高気圧というのは熱帯付近で温められた空気が上昇して、日本の南に吹き降ろされてきたものです。
しかし実は、日本付近に降りてくる空気は、熱帯の空気より熱くなっている。
熱帯付近にある熱い空気は、海水が蒸発した水蒸気を多く含んでいます。この水蒸気が上空に昇るとき、潜熱と言って、周囲に熱を放出するからです」
つまりこの現象によって、一口に言えば、この夏、日本近海には「熱帯より熱い空気」が平年より強く吹き付けていることになる。
「このほかには、日本付近の海水温が高いこと。九州南岸では、このところ海水温が30度以上の日が続いている。太平洋高気圧の風は九州あたりから四国・中国地方を通って、関東に入ってきます。
さらには大陸からのチベット高気圧も日本の上空に張り出して、熱い空気を送り込んでいる」(大野氏)
■1時間で20日分の雨が降る
海水温の上昇は日本の食卓にも影響するとんでもない異常を引き起こしている。
北海道白糠町では、普段は獲れないクロマグロが水揚げされ、漁師たちを驚かせた。一方、本来獲れるはずのサケの漁獲量は例年の3分の1。ほとんど利益がない状態だ。
夏が旬の寿司ネタ、カンパチは養殖ものの値段が半年前の2倍に急騰。養殖の中心地・九州で海水温が高すぎるため魚が夏バテして餌を食べず、出荷できないことが一因だという。
いったい、この暑さはいつまで続くのか。
「いまは2週間おきに高気圧が強まったり弱まったりしています。8月後半にかけて多少、暑さがやわらぐ時期があるでしょうが、9月になると再び高気圧が強まってきますから、また暑くなると思います。猛暑だった'10年も9月になってものすごく暑くなりましたが、今年もその可能性が十分にあるのです」(森田氏)
極端な暑さも、ひと雨降ればしのげるだろう、というのがこれまでの常識だった。だがこの夏は、その雨すら私たちを脅かす凶器に変わっている。
7月28日に山口、島根、8月9日には秋田、岩手で気象庁が「これまでに経験したことのないような大雨」と呼ぶ記録的豪雨を観測。秋田県仙北市では集落の裏山で土石流が発生、男女6人が犠牲となった。
なかでも秋田県鹿角市では一日の間に293mmの雨が降ったが、これは平年の8月1ヵ月間の降水量(156mm)の約2倍にあたる。
さらに、もっとも降雨の激しい時間帯には、1時間に108・5mmを記録。これは、わずか1時間で平年のおよそ20日分の雨が集中的に降った計算になる。
■大都市は危険地帯になる
東京でも、灼熱のスーパー地獄夜を経験した11日と12日の午後には、突然のゲリラ豪雨が発生。杉並区や武蔵野市の一部で住宅への浸水や道路の冠水などの被害が発生している。
災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏は、今後は山間部ばかりでなく、大都市圏でも、こうした急激な大雨で人命が失われるような恐怖の時代がやってきたと警鐘を鳴らす。
「現在、地球規模でシビア・ウェザー(極端な天候変化)の頻度が増しています。日本近海でも台風や低気圧の強大化が見られ、積乱雲の短時間での発達にともない、豪雨、強風、竜巻、頻繁な落雷といった現象が起こるようになりました。
これまで大都市は自然災害とはあまり関係ないというイメージがありましたが、いま都市特有の環境による"都市型災害"の危険性が高まってきているのです」
それはいったいどういうことか。
「都市部では地面がコンクリートやアスファルトで覆われて、吸水性がない。そのため、降った雨は人工的に作った排水施設にいっきに流れ込みます。ところが多くの場所では、1時間あたり50mmを超えるような雨が続くと対応できない。
専門的には、川が増水して溢れるような事態を『外水被害』、排水能力を超えてマンホールから下水が噴出してくるような事態を『内水被害』と呼びますが、この内水被害が次々と起こるのです」(和田氏)
'70年代以前に下水設備が整備された街では、雨水と家庭排水などの汚水がマンホールの底で合流する合流式の下水道も多い。ここが容量の限界を超えれば、単に雨水が溢れるだけでなく、さまざまな汚物が街に溢れかえる事態となる。
「過去にも都市部ではさまざまな死亡事故が起きています。道路に水が溢れてマンホールの蓋が外れているのが見えず、歩いていた人が落下して溺死した例。車道が立体交差で地下を通る部分(アンダーパス)が冠水、水没した車内で溺死した例。ビルの地下室に濁流が流れ込み溺死した例……。
子供などは、『まさかこんなところで』と思うような小さな側溝にはまっただけで溺死してしまうこともある。今後、注意を怠っていれば、こうした事故が増えていく可能性も否定できない」(和田氏)
広い地下施設であれば水没までにはかなりの時間がかかるので落ち着けば脱出は難しくない。だが天候不順の際に狭い地下空間にいるのは禁物だ。日常的に地下駐車場などを使うなら、必ず避難路を確認しておくべきだろう。
また、「渋谷、世田谷、溜池など地名に水や水に関係する地形を含む言葉が入っているような場所は海抜が低く、歴史的に水害に遭ってきたようなところが多い」と和田氏は指摘する。
スーパー地獄夜+ゲリラ豪雨だけでも異常事態だったが、11~12日、さらに東京西部の人々を驚かせたのがあまりにも多い落雷だった。雷に関する情報を専門に扱う気象情報会社フランクリン・ジャパンに所属する気象予報士の今村益子氏はこう話す。
「11日に東京で発生した雷は約2000回です。落雷で京王線の踏切をコントロールするシステムがダウンし、長時間不通になる事故もありましたが、これは2000回の落雷が京王線沿線地域に、かなり集中的に発生したからです。
雷の発生回数というのは本当に年によってまちまちで、'00年は年間9000回落ちましたが、'03年はわずか165回であったりします。過去最高は、'06年8月12日に一日で日本全国で39万8000回という記録もあります。ですから、2000回というのは雷としては特別、多いものではありません。
しかし今回は、短い時間に特定のエリアに集中して発生しましたから、そこにいた人の体感としては、身の危険を感じるような猛烈な雷だったでしょう」
■超巨大台風が日本直撃
今村氏によると、雷は夕立が本降りになる前がもっとも多いとされるという。
「人が屋外で雷に直撃されたときに死亡する確率は70~80%。心肺停止が起きた場合でもあきらめず、AED(自動体外式除細動器)などを使って心肺蘇生をほどこせば、蘇生する可能性はあります。
屋内に避難すればまず、命にかかわるような事故は起きません。ただ、電気の伝わりやすい電話線やコンセント、アンテナ線、また水道管を伝って室内に電気が入りこみ、感電することは十分、ありえます。
そのため、落雷の激しいときは家電製品や配線の通っている壁、柱から1m以上離れ、入浴なども避けたほうがいいと言われているのです」(今村氏)
まだまだ続く異常気象。スーパー地獄夜+ゲリラ豪雨+集中落雷と、私たちの命を脅かす未曾有の異常気象がこの国を壊していく。
今後、秋にかけて不安なのが今年の台風の傾向だ。この調子では、これからとてつもなく強力な台風が来るのではないか。
前出の気象予報士・大野氏はこう見ている。
「問題になるのは、そのときの日本の南の海水温です。ここ数週間、九州、四国から関東の南岸にかけて、海水温が平年以上に上がっていて、30度以上のエリアも増えている。
海水温が27度以上だと、南方で発生した台風は勢力を衰えさせずに進んできます。ですから私は、海水温が下がらないうちは台風が来ないでくれと祈っているのです」
台風の接近を阻んでいる太平洋高気圧が弱まれば、気温が下がって人々はホッと一息つくだろう。
だが皮肉にも、そのせいで強大な台風が次々と日本を直撃する可能性も否定できない。
前出の気象予報士・森田氏は、今後は巨大台風の襲来が当たり前になってくるかもしれないと指摘する。
「いま、学問の世界では、地球温暖化説と寒冷化説、両方が議論されています。
先月、東京大学大気海洋研究所の渡部雅浩准教授が、'00年から地球の温暖化が止まったように見えるのは深海の水が熱を吸収したからだと発表して、温暖化説が優勢になってきました。
温暖化で台風は増えるという説と減るという説があるのですが、いずれの場合も『今後は台風が巨大化するだろう』と予測されています。これはもう避けられない運命だろうと、私は思っています」
日本に住む限り、もはや異常気象から逃れるすべはない。生き残るための備えをするなら、いましかない。
「週刊現代」2013年8月31日号より
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