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満天の星空と海面を照らす月。宇宙のパワーが地球に影響を及ぼすのか
【警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識】「惑星直列」で天変地異起こる? 予言者たちが“凶事の前兆”
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20130809/dms1308090729000-n1.htm
2013.08.09 夕刊フジ
近頃、夜空の星を見たことがあるだろうか。都市部に住む本紙の読者は、まず、見たことがないだろう。世界中で都市への人口集中が続いていて、都市部の人口は先進国では2010年にすでに70〜80%、2050年には90%にもなる予想になっている。日本も例外ではない。
夜空の星を見る人は昔よりもずっと減ったが、天体では予言者を張り切らせる「事件」が続いている。
7月下旬の明け方には、東の空の低いところで火星と木星が接近し、双眼鏡の狭い視野の中に2つがそろってみえるほどだった。また、そのすぐ近くに水星も見えた。つまり太陽系の3つの惑星が、ごく近くに接近しているのが見えたのだ。
この前、6月には太陽が沈んだ後の西の空に、上から順に水星、金星、木星がほぼ直線状に並んでみえた。
これら惑星が近づいてみえる現象には「惑星直列」という名前がついている。これらの惑星が宇宙空間に直列に並んでいるという意味だ。予言者の間やSFなどの小説の世界では有名な言葉だが、実は天文学の用語ではない。
とても目立つ不思議な現象だから、この現象が起きるときには天変地異が起きるのではないか、という予言が、しばしば行われてきた。地震、洪水、火山噴火、さらには人類滅亡といった凶事である。有名なものにノストラダムスの予言がある。
こういった惑星の運動そのものは地震の予知とは違って、古典物理学を使えば、正確に未来を計算できる。たとえば2015年10月26日には金星と木星が大接近することが分かっている。惑星では最も明るい金星と次に明るい木星が、地球から見る角度にして1度あまりまで近づくうえに火星もその近くまで来る。ただし、最接近は日本時間で午後1時頃だから、夜にはもう少し開いてしまっている。
また2161年に大規模な「惑星直列」が起きることも計算できているのである。
ところで、予言者たちが予言する根拠は惑星が並んだことによる引力の影響で地球がゆがむはずだということである。
だが、地球物理学の計算によれば、たとえすべての惑星が一直線に並んだとしても、その影響はあまりに小さい。
たとえば海の満ち引きは太陽や月の引力で起きる。その振幅は、場所によるが数十センチから数メートルほどだ。
しかし、「惑星直列」では海は1センチのわずか3万分の1しか上がらないのだ。太陽や月の引力の何十万分の1よりも小さい。これでは、たとえ大地震のエネルギーが臨界状態に近いところにあったとしても、「引き金」さえ引けない大きさなのである。
実は10年あまり前にも夕方の西の空に、5つの惑星と月が一直線に並んだことがある。水星、金星、火星、月、土星、木星が並んだ。このときには世界中で多くの予言者たちが凶事を占っていた。しかし、何事も起きなかったのであった。
■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。理学博士。東大理学部助手を経て、北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。『直下型地震 どう備えるか』(花伝社)など著書多数。
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