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地震予知「現状では困難」 南海トラフ、警戒促す程度
http://www.asahi.com/tech_science/update/0703/TKY201307030531.html
2013年7月6日9時22分 朝日新聞
【編集委員・黒沢大陸】南海トラフで起きる地震について、国は5月、「予知は困難」とする評価をまとめ、東海、東南海、南海で別に算出していた地震の発生確率を一本化した。予測を上回る規模で起きた東日本大震災の反省から、地震学の実力に見合った態勢に改める動きだ。予知と予測の今の実力をどう評価したのか。
国の有識者会議は5月28日、南海トラフの地震予知が現状では困難と認める報告書をまとめた。南海トラフのうち駿河湾周辺で起きる東海地震は、国は予知を踏まえた防災体制を取っているが、有識者会議の調査部会座長の山岡耕春名古屋大教授は記者会見で「東海地震を特別扱いする科学的な根拠がない」と話した。
東海地震の防災体制は、切迫性を指摘する学説を受けて1978年に作られた。予知すると首相が「警戒宣言」を発令、交通規制など社会活動が大きく制限され、内閣府の試算では1日に実質1700億円の経済影響が出る。
だが、東海地震がその西隣の東南海地震と別に単独で起きた例は知られておらず、地震予知は難しいことがわかってきた。気象庁は「必ず予知できるわけではない」。専門家は「可能性は2、3割もないだろう」と指摘。調査部会では「可能性は大変低い」との意見が出され、「警戒宣言発令時の対応と科学の実力が見合っていない」とまとめた。社会活動を強く制限するほど確実な予知はできないということだ。
気象庁は地震の起こり始めの「前兆すべり」の発見で予知を目指しているが、同じ海溝型地震の十勝沖地震(2003年)や東日本大震災でも確認されず、調査部会は「観測例がほとんどない」と指摘。日本海溝に比べて、南海トラフは検知できる可能性が高いとしながらも「観測できる規模で起きるか不明、検知しても地震が起きないこともある」とまとめた。
また、前兆すべりが起きる根拠と考えられてきた1944年の東南海地震直前の観測例も近年の研究から「疑わしい」とした。
ないない尽くしの状況だが、予知は無理でも何らかの警戒を促せる可能性はある、とした。地震が起きる危険性が普段よりも高い状態との判断は不確実ながら可能という。東日本大震災後の解析で、数十年前以降や1カ月前からの観測結果から前兆と見られるデータが複数得られたことなどが理由だ。ただ、南海トラフのどこで発生するかや規模の予測は困難としている。
調査部会は国際的な現状認識も整理した。アメリカ西海岸やトルコで集中的な観測が行われたが「予知成功例はない」と指摘。地中を流れる電流や電離層の変化など電磁気学的な手法は「統計的に有意な結果がえられているが発生場所と規模の予測が不確実」などとまとめた。
国は東海地震対策の見直しを始める。地震学の実力に見合い、人々が理解して行動できる体系が必要だ。山岡座長は「防災に役立つよう、予測の能力と社会の対応のバランスが必要だ」と話す。
■計算手法で違う確率
地震の直前から数日前に察知する「予知」に対して、数カ月以上の期間で地震が起きる可能性を確率で示す「予測」では、政府の地震調査委は5月24日、「南海トラフ沿いのどこかでマグニチュード(M)8〜9の地震が30年以内に起きる確率は60〜70%」と発表した。
「東海88%、東南海70〜80%、南海60%程度」としていたが、地震の連動や時間差での発生など起こり方が多様で個々に予測できない状況を踏まえ、「南海トラフ」に一本化した。
また、採用するべきか議論がわかれる別の手法による確率も併記した。
南海トラフは調査や研究成果が豊富なことから、エネルギーの蓄積状況を踏まえた特別な手法で算出したのが「30年以内に60〜70%」。これに対して、活断層の地震予測のように過去の地震の発生間隔から単純に算出した「30年以内に10〜30%程度」も示した。ただ、計算手法を改める積極的理由がないこと、低い確率の公表で防災意識が低まる恐れなどから「試算」にとどめた。
注目された最大規模のM9級の確率は出せなかった。100〜200年間隔で起きているM8級の地震より「頻度は1桁以上低い」との言及にとどめた。千年以上に1回という大枠の見積もりだ。大きい地震ほど数が少ないという経験則から強引に確率は出せるが、確実性への疑問から採用しなかった。
地震調査委は、東日本大震災で的確な予測ができなかった反省から新たな予測手法の検討をしており、今回の予測は暫定的な改訂としている。
■地震予知の現状認識
・前兆すべりをとらえた確度の高い地震予知は一般的に困難
・前兆すべりをとらえる観測網は限られ、確実な観測例はない
・観測できない規模の前兆すべりからいきなり地震になることや、検知できても地震が起きないこともある
・不確実ながら地震の恐れが普段より高いかを観測から判断可能だが、地震の規模や起きる領域の予測は困難
・米西海岸やトルコの一部で2〜3カ月以内に起きる地震の予知を目指して集中観測が行われたが、成功事例はない
・国際的に研究されている電磁気学的な予測は、統計的に有意な結果があるが、地震の発生場所と規模の予測が不確実
・1944年の東南海地震前に観測された地殻変動は前駆すべりによるか疑わしい
・警戒宣言発令時の防災対応の内容が科学の実力に見合っていない
(「南海トラフ沿いの大規模地震の予測可能性に関する調査部会」による)
◇
〈東海地震の予知〉 地殻のわずかな伸び縮みをとらえる27カ所のひずみ計を気象庁が常時監視。異常を検知すると、地震学者からなる地震防災対策強化地域判定会(会長・阿部勝征東京大名誉教授)が開かれ、前兆と判断すると、気象庁長官が予知情報を出し、首相が警戒宣言を発令する。
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