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米ペンシルベニア州のシェールガス採掘場。エネルギー開発にはリスクがつきまとう(ロイター)
【警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識】「人造地震」の恐怖(3)シェールガス採掘現場で地震頻発
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20130614/dms1306140708000-n1.htm
2013.06.14 夕刊フジ
前回はダムが起こす地震についての話だった。世界各地で行っている開発や生産活動は、このほかにも、知らない間に地震の引き金を引いてしまうことがある。
新エネルギーの希望の星、シェールガス採掘も、実は地震を誘発している。昨年には米国オハイオ州で、採掘を一時中止する騒ぎになった。
シェールガス採掘には「水圧破砕法」という手法を使う。化学物質を含む液体を地下深くに高圧注入して岩石を破砕することによって、シェール(頁岩=けつがん)層に割れ目を作る。同時に砂なども注入して割れ目を確保して、そこから層内の原油やガスを取り出すという掘削法である。
このときに使う化学薬品が有毒なもので、地下水を汚染するのではないかという心配がある。しかし、ここでは「液体を深い地下に圧入する手法」について話そう。
前回と前々回の連載を読んだ方々は、このような作業が地震を起こすのではないか、と思い当たるだろう。その通り、この水圧破砕法は、地震がない場所で地震を頻発させているのである。
米オハイオ州の地震は同州北部の天然ガス井(せい)の周辺だけで起きていた。地下には広大なシェール層があり、水圧破砕法による天然ガス掘削が大々的に行われている。
ここでは2011年12月24日にマグニチュード(M)2・7の地震が発生した後、注入井をひそかに一時閉鎖していた。大みそかの同31日には、同州でかつて起きたことがないM4・0の地震が発生した。このため、その注入井から半径8キロ以内まで閉鎖範囲を拡大したのだった。
オハイオ州だけではない。11年、アーカンソー州でも大規模な群発地震が発生したので、当局は注入井2カ所の操業を一時停止させた。M3やM4とはいえ震源のごく近くでは大きな揺れになって、井戸や掘削装置の破壊や環境汚染を起こすかもしれないのだ。09年、テキサス州フォートワースとダラス周辺の注入井でも、その近辺で発生した地震との関連性が確かめられている。
天然ガス採掘が盛んな米国内陸部のアーカンソー州、コロラド州、オクラホマ州、ニューメキシコ州、テキサス州でM3以上の地震が、11年には20世紀の平均の6倍にも増えている。
実は水圧破砕法はシェールガス採掘だけに使われる手法ではない。これから日本でも盛んになりそうな地熱開発にも使われる手法なのである。
かつて人類は、地球になかったフロンという物質を発明して大量に、便利に使っていた。それが最終的に地球のオゾン層を破壊し、オゾンホールを作る「悪魔の技術」であることに気がついたのは、ずっと後年である。
便利さだけを追求する技術。そこに落とし穴はないのだろうか。
■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。理学博士。東大理学部助手を経て、北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。『直下型地震 どう備えるか』(花伝社)など著書多数。
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