http://www.asyura2.com/13/jisin19/msg/146.html
Tweet |
「70%の確率で発生」って、どういうこと? で、南海トラフ大地震(M9.1)は来るの?来ないの? ――本当に来たら、日本は終わりでしょ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36091
2013年06月11日(火) 週刊現代 :現代ビジネス
よく耳にするけれど、よくよく考えると意味が分からない。大地震の発生確率はそんな数字の代表格だ。天気予報で降水確率70%なら傘を持って出る人は多いだろうが、地震はどう受け止めればよいか。
■聞けば聞くほど絶望的
「もしそれが来たら、待っているのは、まさに地獄のような世界ですよ。大勢の人が亡くなるのもつらいが、震災そのものを生き延びた人々にも恐るべき苦難が待っているのです」(まちづくり計画研究所・渡辺実所長)
いま、政府が次々と被害想定などを発表し、「次に来る大地震」として国民的関心が高まっているのが、南海トラフ大地震だ。
最大M9・1とも予想される巨大な地震だが、この大災害ははたして、本当に来るのか、来ないのか。
現在のところ、私たち国民に「南海トラフ大地震がどれくらい切迫した脅威なのか」を判断する材料として与えられているのは、政府の地震調査委員会が発表した「今後数十年以内にM8以上の南海トラフ大地震がやってくる確率」だ。
・今後50年以内に90%以上
・今後30年以内に60~70%
・今後20年以内に40~50%
・今後10年以内に20%程度
しかし、「これから地震が来る確率は70%です」と言われても、地震が近々、実際に来るということなのか、来ないかもしれないのか、肌感覚で分からないという人は多いだろう。
そもそも「発生確率」という数字は、どのようにして算出されるものなのだろうか。
「計算の原理自体は、極めてシンプルなんですよ」
と話すのは、地震学が専門の武蔵野学院大学特任教授・島村英紀氏だ。
「ある地域で、過去数百年間、数千年間に地震が起きた回数を調べて、年数で割ってやると、平均的に見て地震が来る間隔が分かる。たとえば、ある地域で1200年間の歴史的な記録が残っていて、そこに6回の地震の記述があるとすると、1200÷6=200で、200年に1回地震が起こるのだろうと考える。
すると、その地域で最後に地震が起こったときから経った年数に応じて、次の地震が来る確率が計算できる。地震の間隔が200年なら、前の地震から100年の間に次の地震が来る確率は50%となるわけです」
■毎日、確率は上がっていく
過去の実績から将来の可能性を類推するという意味では、これは野球選手の打率にも似た指標だ。たとえば今季のイチローの打率は5月30日現在で・251(25・1%)だが、先述の南海トラフ大地震が今後10年以内に起こる確率は約20%。大地震が起こる確率はイチローがヒットを打つ確率に近いと言えば、かなり起こる可能性が高いものだと実感できるだろう。
あるいは「あなたががんになる確率は70%です」と言われたら、たいていの人は自分はがんになるのだと考えるだろう。ハリウッド女優アンジェリーナ・ジョリーは遺伝性の乳がんになる確率が87%と言われて乳房を切除したが、今後ガンの発症率50%とされた卵巣も摘出する予定だ。
立命館大学歴史都市防災研究所教授の高橋学氏はこう解説する。
「地震の発生確率はあくまでもひとつの目安です。たとえば、歴史に残っていない、私たちが知らない地震がひとつでもあれば、数字はすぐ変わってしまう。
ただ、いずれにしても、ひとつ確かなことがあります。それは、今日地震が起こらなければ、明日地震が起こる可能性は、今日より高くなるということです」
地震が明日起こるかどうかは分からない。
だが、次の地震が起こるまでの時間は、刻一刻と短くなっている。今日より明日、明日より明後日と、次なる大地震がやってくる可能性はどんどん高くなっていく。
「いつ来るかは分からなくとも、巨大地震は、残念ながら必ず再びやってくるのです」(高橋氏)
では、南海トラフ大地震が本当に来たら、日本はどうなるのか。
南海トラフ巨大地震で想定される死者数は最大32万人、経済的損失は220・3兆円。東日本大震災での死者・行方不明者は1万8559人、被害総額は16・9兆円だから、まさに「桁違い」の惨状だ。
都市防災が専門のまちづくり計画研究所・渡辺実所長はこう話す。
「とくに震源に近い名古屋や静岡などの都市は阪神・淡路大震災と東日本大震災の両方に襲われたような状況になります。
地震発生直後は建物の倒壊で人々が圧死し、大火災が襲いかかってくる。交通網は寸断され、高層ビルではエレベーターに閉じ込められる人が大量に出る。阪神・淡路大震災に似た都市型の被災です。ここに、沿岸部なら数分から数十分で巨大な津波がやってくる」
さらに、最初の災難を生き残った人々にも壮絶な日々が待っているという。
「一瞬にして950万人が被災者になる。避難所はとても足りません。救援の手も足りず、食料が届かず餓死する人が出るかもしれない。回収を後回しにせざるを得ない遺体が放置されて、感染症が流行することも考えられる」(渡辺氏)
■破滅するしかないのか
こうした人的な被害に加え、南海トラフ大地震が日本経済に与える影響も甚大なものだ。
内閣府の被害想定では、震災後1年間の企業の生産やサービス活動の低下による被害額は44・7兆円。国内総生産(GDP)の1割弱が一瞬にして吹き飛ぶ。
たとえば東日本大震災では、震災発生の金曜日こそ反応は薄かったものの、週明けの東京株式市場では日経平均株価が1万円を割り込んで急降下。2日間で約1600円安の8605円(終値)となり、その後は9500円前後で推移するようになった。
「東日本大震災のときは国内の個人投資家が日本経済の先行きを危ぶんで売りが膨らみ、日経平均が急落しましたが、しばらく経つと割安感から日本株を買う外国人投資家が出てきました。ただ南海トラフで大地震が起これば、さらに影響は深刻になると思います」
と語るのは投資情報会社フィスコのリサーチ部アナリスト・小川佳紀氏だ。
「南海トラフの場合、最近の製造業の回復ムードを牽引してきたトヨタ自動車や関連の部品メーカーが大打撃を受ける可能性があります。さらに東京、名古屋、大阪と日本経済の中心地も被災するわけで、長期間、経済に深刻な影響があるかもしれない。国内、海外問わず投資家の日本離れが一気に進む可能性はある」
もし日本売りが一斉にはじまり、株価が暴落すれば企業が保有する株式の含み損が拡大。地震被害ともあいまって、とくに大手製造業の破綻が起こる可能性も否定できないだろう。
復興財源に関しても見通しは暗い。被害総額16・9兆円の東日本大震災ののち、政府は復興増税を行った。所得税を2・1%増し、保有する日本たばこ産業の株式を売却するなどして計14・5兆円を確保する計画を立てた。
だが、被害総額220・3兆円の南海トラフ大地震ではそうはいかない。そもそも金額が膨大な上に、企業、個人ともに被災して経済活動が停滞、税収の激減が考えられる。しかも今後は消費税、所得税、相続税などの増税が予定されており、これ以上大幅な増税を行う余地はほとんどない。
さらに、国と地方の借金である長期債務残高は'12年度末の段階ですでに940兆円に達している。このうえ借金を重ねれば国債価格の暴落と利払い費の高騰を招き、財政破綻へ一直線、まさに日本が終わるというシナリオもありうるのだ。
前出の高橋氏はこう嘆く。
「政府は今回の最終報告書でも、官民が事前にしっかり対策をすれば死者数は5分の1、経済的損失は半額にできると言っています。
しかし、せっかく対策を行っても、行政のやることにはどうも頓珍漢なことが多い。たとえば名古屋市では海側の地区で最大20m以上の高い津波が予想され、小中学生は校舎の最上階である3階以上に逃げるよう指示されています。ところが食料や防災グッズなどの備蓄場所を見ると地上や1~2階にあったりする。
名古屋港の一部には伊勢湾台風などの被災経験から6・5mの高潮防波堤がありますが、行政はこの高さを積み増す工事をしている。
ところが高潮防波堤は低気圧に吸い上げられたりして海面の高さがジワリと上がるのに対応するものなんです。津波のように速度があって破壊力の大きい波がぶつかれば木っ端微塵になってしまうかもしれない」
■覚悟しておいたほうがいい
これではとても減災など望めないが、高橋氏はいまが正念場で、あきれているヒマなどないと警告する。
「繰り返しますが、いつ来るか分からなくても、今後大地震は必ず来ます。
南海トラフ大地震に限らず、東日本大震災の影響もまだまだ広範囲で続いており、内陸部でも海底でも地震が頻発していますし、最近では日本海を飛び越えて韓国の鬱陵島や、中国と北朝鮮国境の白頭山周辺までが活発な地震活動を起こしているくらいです。
また、20世紀以降に起こったM8・5以上の大地震ののち、震災後に周辺で火山の大規模な噴火が起きていないのは東日本大震災だけです。富士山や桜島など火山の大噴火も起きてくる可能性が高い」
今後の何年以内に何%などという数字に戸惑う必要はない。専門家たちは、大地震はやがて必ず来ると口を揃える。
次の大地震後、日本国は財政破綻するかもしれないが、私たちひとりひとりはとにかく生き延びなければならない。そのときに備え、どこまで真剣に準備をしておけたかがあなたの生死を分けるのだ。
「週刊現代」2013年6月15日号より
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。