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多くの地震学者が注視している中国の三峡ダム(AP)
【警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識】「人造地震」の恐怖(2)ダムが大災害の引き金に
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20130607/dms1306070709001-n1.htm
2013.06.07 夕刊フジ
前回は、深い井戸に水を注入したら地震が起きた話だった。水といえば、ダムが地震を起こした例も世界各地にある。
1967年にインド西部でマグニチュード(M)6・3の地震が起きて一説には2000人もが犠牲になった。コイナダムという巨大なダムを造ったことで引き起こされた地震である。
ダムで貯水が始まったのは62年。それ以後、M4クラスの小さな地震が起きはじめた。震源はダムの25キロ四方だけに限られ、周囲100キロで地震が起きているのはここだけだった。
そして貯水が始まってから5年目の67年に大被害を生んだ地震が起きてしまったのだ。
アフリカ南部のザンビアとジンバブエの国境でダムが作られて、58年から貯水を始めた。当時としては世界最大の人造湖、カリバ湖ができた。
ここではダム建設前から近くで小さな地震が起きていた。だが貯水が始まってから満水になった63年までに地震が急増して2000回以上にもなった。満水になった年にはM5・8の地震が起きて被害も出た。
ダムが地震を起こすのは、ダムにためられた水が地下にしみ込んでいくことと、ダムにためられた大量の水の重さによる影響のせいだと思われている。
ダムで起きる地震が地滑りを起こしてダムをあふれさせ、大被害を起こしたこともある。
イタリアのバイオントダムは同国北部ベネト州の深い渓谷に作られたダムで60年に完成した。堤高262メートルは当時の世界最高のものだった。
このダムでも貯水開始後、地震が頻発するようになって地盤が弱くなった。このため地滑りが多発した。63年にダムの南岸の山が大規模な地滑りを起こした。大量の土砂がダム湖に流れ込み、ダム地点で最大100メートルを超す“津波”を起こした。
濁流はダムの沿岸と下流の村々を襲い、2125人が死亡するという大惨事となってしまった。ダムはその後放棄され、水がたまっていないダムだけが残されている。
大地震が、ダムができてから20年近くもたってから起きた例もある。エジプトのアスワンハイダムで、貯水が始まったのは64年。78年に満水位に達したあと、81年にM5・6の地震が起きた。
エジプトの3000年以上の歴史で、このあたりに地震が起きたことはない。史上初の地震を起こしてしまったのだ。
水をため始めてから、いつ、どんな地震が起きるのかには、まだ謎が多い。しかし、中国に2009年にできた世界最大の多目的ダム、三峡ダムもいずれ地震を起こすかも、と考えている地震学者は多い。
世界各地で行っている開発や生産活動は、このほかにも、知らない間に地震の引き金を引いてしまうことがある。次回はそれを書こう。
■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。理学博士。東大理学部助手を経て、北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。『直下型地震 どう備えるか』(花伝社)など著書多数。
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