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『下町ロケット』はいよいよ佳境(番組HPより)
視聴率戦争に異変アリ! TBS復活、そしてフジはテレ東にも抜かれた
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46828
2015年12月15日(火) 週刊現代 :現代ビジネス
どんな番組を作れば視聴者に見てもらえるのか。視聴率を上げるためにテレビ局がするべきことは何か。その答えはテレビの「原点」にあった。『下町ロケット』を武器に、TBSの反撃が始まった。
■「日9」が牽引する
「今うちが番組作りで一番心がけているのは、視聴者の方に『見てよかった』と思ってもらうことです。『見終わり感』といいますか、番組を見終わった後に、視聴者が嫌な気持ちにならないことを第一に考えています。今までのTBSとこれからのTBSは違います。まさに今生まれ変わろうとしているんです」
こう力強く語るのは、TBS編成部長の菊野浩樹氏だ。
TBSの好調を牽引するのが、平均視聴率17・7%で、今クールの民放ドラマではトップを走る阿部寛主演の『下町ロケット』だ(以下視聴率はすべてビデオリサーチ調べ)。同作の好調を受けて今、こんな声が社内外から聞こえ始めている。
「TBSが復活した」
菊野氏が語る。
「もちろん土台となるのはレギュラー番組ですが、『下町ロケット』のような高視聴率のドラマがあると局に勢いが出ます。
朝の情報番組『白熱ライブ ビビット』で、町工場の特集を組んだところ好評だったように、『下町ロケット』のヒットで他のレギュラー番組にも好影響が出てきました。大ヒットドラマが一つ生まれると、それが局に与える影響は非常に大きいということです」
かつては「民放の雄」、「ドラマのTBS」と言われながらも、近年は民放の視聴率戦争で苦戦が続き、4位がすっかり指定席となってしまっていた。だが、ここにきて年間視聴率でフジテレビを抜き3位に浮上。2位のテレビ朝日に迫る勢いである。
ドラマ通としても知られるノンフィクション作家の岩切徹氏が語る。
「フジの『月9』の衰退とは対照的に、TBSの『日9』が活力を持ってきた。現在は『下町ロケット』が好調ですが、今年7月まで放送されていた『天皇の料理番』も評判が良かった。
『半沢直樹』('13年)が起爆剤となり、以来上質で硬派なドラマを作り続けている。それらのドラマが、新聞や雑誌など活字媒体にも取り上げられるようになり、好影響をもたらしているのです」
菊野氏が続ける。
「今年からTBSはゴールデンのドラマ枠を週4本から3本に減らしました。でもその分、企画を精査し人材も製作費も注力できるようになった。
また将来の事も考えて、水曜日の深夜にドラマ枠を作り、ここで若手ディレクターを育てたり、チャレンジングな企画を試したりするようにしています。目の前の勝負もしつつ、将来のことも見据えて、両輪で勝負していくつもりです」
■二つの大改革
実際にTBSの復活は数字にも表れている。
現在、民放の視聴率ランキングは1位が日本テレビ、2位がテレ朝、そして3位がTBS、4位がフジテレビという状況だが、ゴールデンタイムの平均視聴率を見ると、日テレが去年の下期に13・3%だったのに対して、今年は12・0%とマイナス。テレ朝も11・7%から11・1%に微減している。フジテレビは言わずもがなだが、9・9%から8・9%に下がっている。
そんな中唯一、9・5%から10・7%と前年比で数字を伸ばしているのがTBSなのである。上位2局が少しずつ数字を落とす中、TBSはジリジリと数字を上げてきた。
各局が苦しむ中、一体、なぜTBSは復活の兆しを見せ始めたのか。
リサーチ評論家の藤平芳紀氏はTBSの変化についてこう語る。
「今年、TBSを訪れた時、正面フロアにドラマ『ありがとう』('70年)、『時間ですよ』(同)など過去の名だたる番組のパネルが飾られていたんです。それを見てTBSが社を挙げて『原点』に戻ろうとしている意気込みが伝わってきました。
近年のTBSは、どこか独りよがりな上から目線の番組が目立った。でも今は『視聴者目線』で番組が作られていると感じることが多くなりました」
菊野氏は「とにかく『真心』を込めて取り組まないと視聴者はついてきてくれない」と語る。
「技術や素材(=収録やロケの撮れ高、キャスティングなど)は望み通りにいかないことは当然ある。でも、その中で、どうしたら視聴者に分かりやすく伝えられるか、すべて『視聴者ファースト(第一)』でやろうよというのが、社内の共通認識になりつつあります。
例えばCMの入れ方にしてもそうです。今までは何回もCMを入れて引っ張って、引っ張って、結局次週の予告だけだった、なんてこともありましたが、そういうお客さんをガッカリさせることはもうやめようと。テロップの出し方一つにまで視聴者が見やすいように気を配っています」
もう一つTBSが番組作りにおいて変えた点は、ターゲット層の見直しだ。もともとはF1層(20~34歳の女性)を重視していたが、今は「ファミリーで見て楽しめる番組」にシフトしつつある。
テレビは「個人視聴」の時代になり、家族でテレビを見る機会が減っていると言われる中、あえて時代と逆行する戦略を取っていることについて、菊野氏はこう語る。
「たとえば日曜日のゴールデンタイムに日テレが成功しているのも『イッテQ!』や『ザ!鉄腕!DASH!!』などファミリーで見られる番組を揃えているからです。ドラマにしてもバラエティにしても、今は家族で見て温かい気持ちになるものが求められている。
『マツコの知らない世界』や『モニタリング』が高視聴率を取っていますが、そういう家族で楽しめる番組を増やしていきたいと強く思っています。『元来テレビは皆で見て楽しむもの』、その大前提を大切にしたい」
■日テレが警戒を始めた
視聴率戦争を制するためには「強い曜日」を増やすことが条件とされる。先述したように、視聴率トップの日テレは、日曜日が圧倒的に強い。
一方のTBSは、金曜日が強い曜日となっている。夜7時からの『爆報!THEフライデー』に始まり『ぴったんこカン・カン』、『中居正広の金曜日のスマたちへ』、『金曜ドラマコウノドリ』と続く流れがしっかりできている。
「TBSと日テレとの差はまだありますが、金曜日が強いことは不気味ですね。一つの番組が強いだけなら気にしないのですが、特定の曜日が強いと、ほかの曜日にも応用が可能なので、油断すると一気にやられる可能性がある」(日テレ幹部)
この件について菊野氏はこう語る。
「確かに金曜日が強いのは自負していますが、ただ、他の曜日になると、いつどんな番組をやっているのか、まだまだ認知が足りていない。そこでTBSとしてはタイムテーブルを視聴者に意識してもらうことを目標にしています。
そのために番組スポットでは、土曜日の夜7時からは『炎の体育会TV』、8時からは『ジョブチューン』といった『縦軸』を意識した宣伝をこの秋から始めました。レギュラー番組がいつ放送されているのか、視聴者にとって当たり前の情報に答えていくために、もっともっと努力する必要性を感じています」
恵俊彰、八代英輝弁護士が司会を務める、昼の情報帯番組『ひるおび!』が好調なのも、TBSの強みだ。元日本テレビ解説委員で法政大教授の水島宏明氏が語る。
「学生の間でも『この番組は勉強になる』と好評です。ボードを使ったニュース解説やコメンテーターの言葉が丁寧で分かりやすい。各局の朝のワイドショーには丁寧なニュース解説がないので、こういう番組は視聴者のニーズに適しています」
元テレビ朝日報道局員で『放送レポート』編集長の岩崎貞明氏も続ける。
「ワイドショーではなく情報番組で行くという戦略を定めたあと、定着するまで上層部が我慢してやったことが大きいと思います。逆にフジは31年半続いた『笑っていいとも!』を終了させたのはいいが、後続番組の戦略が不明確でした。それが『バイキング』の低迷を招いてしまった」
■真摯に仕事と向き合う
昇り調子のTBSに対して、凋落の一途を辿っているのがフジテレビだ。そんなフジテレビの不調が、視聴率戦争に前代未聞の異変を招いた。
11月23~29日のゴールデンの週間視聴率が、フジが7・6%だったのに対し、テレビ東京は8・0%。なんとテレ東にまで抜かれ、民放5位に転落してしまったのだ。
「よく『振り向けばテレ東』なんて言われていましたが、ついに抜かれてしまったことで、社内の雰囲気は最悪です。『亀山(千広)社長はもう無理』との声も囁かれています」(全国紙の放送担当記者)
さらに追い打ちをかけたのが、定例社長会見での亀山社長の発言だ。記者から開局以来、初めて営業利益が赤字となり、低視聴率の要因を問われた亀山社長は「『3・11』(東日本大震災)の影響があると思います。フジが今まで押し出してきたワクワク感だったり、ドキドキ感だったり、少し浮き世離れしたお祭り感がどこかで絵空事に見えてしまうようになったのかなと思います」と回答。
ネット上では、「責任転嫁も甚だしい」「何も分かっていない」という声が溢れ、あっと言う間に炎上した。
「視聴率が上がらないのを震災のせいにするのは、ビジネスマンとしてセンスがない。この亀山社長の発言こそが、未だに浮き世離れしているフジの体質を象徴しています」(前出の放送担当記者)
前出の岩崎氏はフジテレビの凋落をこう分析している。
「トレンディドラマで一時代を築いた亀山社長の成功体験に縛られすぎていると思います。昔のヒット番組のアイデアを真剣に分析するわけでもなく、ただ単に昔のマネをしていても支持されるはずがありません。時代は変わっているのですから。結局、フジテレビは黄金パターンを失って迷走しているんです」
『下町ロケット』の中で、阿部寛演じる、佃航平のこんなセリフがある。
〈どこに行っても苦しい時が必ずある。そんな時は逃げるな。人のせいにするな。それから仕事には夢を持て〉
菊野氏が語る。
「我々にとって番組は、商品であって我が子のようなものです。佃製作所のように、どこにも負けない努力をしていくつもりです。11月に放送した『学校へ行こう!』の特番が視聴率17・8%を取った時、スタッフからは歓声が上がり、涙を流している者もいました。あの感動を何回も味わいたいですね」
驕りを捨て、真摯に視聴者と向き合ったTBSと、未だに自分たちの「立ち位置」を客観視できないフジテレビ—。その差は、数字に確実に表れ始めている。
「週刊現代」2015年12月19日より
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