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NHK大河 「日米戦争」を「日仏戦争」に歴史修正していた
NEWS ポストセブン 6月16日(火)11時6分配信
NHK大河ドラマ『花燃ゆ』の第21話「決行の日」(5月24日放送)は、関門海峡に面した砲台に居並ぶ久坂玄瑞(東出昌大)ら長州藩士が、外国船に砲撃を加えるシーンでラストを迎える。
久坂はドラマの主人公・文(吉田松陰の妹)の夫で、主演の井上真央が久坂の無事を祈る中、見張り役が声を張り上げる。
「来たぞ! フランス船じゃ!」
その報を受け、洋上に船の姿を認めた久坂は「撃て」と指示を出す。
「でもまだ、御奉行さまのお許しが……」と躊躇する藩兵に久坂が返す。
「構わぬ。撃て!」
文久3(1863)年5月10日に長州藩が攘夷を決行した、いわゆる「下関事件」である。
ドラマではフランス国旗を掲げた船に向けて次々と砲弾が放たれ、何発かが命中して火の手があがる──。ところが、このシーンは史実と大きく食い違う。
1863年5月10日に砲撃を受けたのはフランス船ではない。長州藩が最初に攻撃したのは、「アメリカ商船ペンブローク号」なのである。その後、フランスやオランダの軍艦にも砲撃が加えられたが、アメリカの場合は軍艦ではなく商船を、しかも不意を突いて狙った格好となったため、長州藩は翌月、米軍艦から真っ先に報復攻撃を受けることになる。
脚本家がそうした基本的な史実を知らずに、「最初に攻撃を受けたのはフランス」と勘違いしていたわけではない。『花燃ゆ』の脚本家3人が著者に名を連ねる小説版『花燃ゆ・第2巻』(NHK出版刊)はドラマのシナリオ本だが、そこでは最初に砲撃を受けたのは「アメリカ船」とはっきり書かれているのだ。
〈そして、ついにその日は来た。文久三年五月十日──攘夷決行の日である。
「来たぞ! アメリカ船じゃ!」
見張り役の赤●(編注:のぎへんに爾)が声を上げた〉
つまり脚本家も緒戦が「日米」の争いだと認識していたのに、放送ではそれが「日仏」に変えられていたのだ。
シナリオ本が出版されたのは今年3月。第21話の放送は5月24日だ。その間には安倍晋三・首相が4月26日から8日間の日程で訪米し、米議会演説で安全保障関連法案を「この夏までに成就させる」と大見得を切って見せた。その安保法制審議がちょうど第21話放送直後の5月28日から本格化するタイミングだった。
長州は安倍首相の地元であり、安倍氏は幕末志士の吉田松陰を尊敬すると公言してきた。その長州志士たちが、よりにもよってアメリカを攻撃するのは好ましくないとNHKが考えたのではないかと思えてくる。
もちろんオバマ米大統領やオランド仏大統領が「『花燃ゆ』でうちの国の船が砲撃された!」と怒り出すはずもない。NHKの「歴史修正主義」は、親しい記者との懇談で『花燃ゆ』を「面白い」と評していたという安倍首相への阿り(おもねり)が理由ではないのか。
本誌が報じてきたように、『花燃ゆ』が今年の大河ドラマに決まったことには異例の経緯があった。NHKは主人公を決める前から安倍首相の地元である山口県を舞台とすることを前提にリサーチを進め、その結果、制作発表が例年に比べて異例の遅さとなった。
しかも今年は没後400年にあたる真田幸村のストーリーに内定していたともいわれたため(「真田」は没後401年の来年に放送)、NHKが安倍首相に配慮したのではないかとみられてきた。
※週刊ポスト2015年6月26日号
最終更新:6月16日(火)22時6分
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150616-00000016-pseven-ent
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