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戦わずに惨敗…フジの淋しい年越し
http://www.nikkansports.com/entertainment/column/umeda/news/f-cl-tp0-20150105-1417747.html
大みそかにまさかの“アニメ再放送”で勝負に出たフジテレビ「ワンピース」が、視聴率3・3%で惨敗してしまった(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。打倒紅白の番組を「作らない」という、後ろ向きなチャレンジだった。ここ数年の続編体質の総決算とも言えるけれど、ダイナミックな企画力で他局をリードした全盛時代を知る者としては複雑な思いだ。
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大みそかに放送された「ワンピース エピソードオブチョッパー+冬に咲く、奇跡の桜 2014年特別版」は、08年に公開された劇場版第9作の特別版で、11年3月にフジで放送されている。総決算である大みそかに、放送済みコンテンツを再放送するという試みは芸能界に波紋を呼んだ。「笑ってはいけない」シリーズで日本テレビの大みそかを務めるダウンタウン松本人志も「僕はワンピース見ますけどね。斬新ですから」と番組会見でネタにしていた。
同局にとって大みそかは鬼門である。2010年以降を見ても、10年「アンビリバボー」、11年「ものまね紅白歌合戦」、12年「アイアンシェフ」と軒並み4%台に沈み、13年の「祝!2020東京決定SP」では2・0%という目を疑う低視聴率を記録した。もはや勝てない戦に金をかけないという発想になるのも理解できるけれど、他局はなんとか局カラーを出そうと意地のファイティングポーズをとっているだけに「作らない」という選択はかっこ悪く見える。
民放の大みそかが格闘技一色だった時代が06年あたりに終わって以降、各局とも「ウチの大みそかはこれ」というコンテンツ作りに取り組んできた。いち早く「笑ってはいけない」シリーズで鉱脈を当てた日本テレビは、今回も18・7%(1部)で5年連続民放1位。TBSは3年目となる生放送スポーツ祭り「KYOKUGEN」で9・0%(3部)と健闘した。テレビ朝日は「くりぃむVS林修 年越しクイズサバイバー」で5・9%(2部)。テレビ東京はいつもの「第47回年忘れにっぽんの歌」で5・8%、9時からは4年目となる大みそかボクシングで5・6%だった。フジだけが迷走したまま「アニメ再放送」となった。
企画していた特番が頓挫したらしいという諸事情も伝えられているけれど、コンテンツ制作会社であるテレビ局が大みそかに番組を作らないという決断に、現場はどう思っているのだろうと案じられる。
11年の暮れ、TBSが再放送の連発で1年を終えたことがある。27日から2夜連続で「JIN」の総集編、29日に「レコ大名場面」、大みそかは「8時だヨ!全員集合」名場面集、元日は過去のニュース映像の「総力蔵出し」だった。中間決算が赤字という台所事情もあったが、老舗局がアーカイブだけで年末年始をやっつけたことに「悲しい」と書いたところ、現場のプロデューサーなどからどっさりメールが来た。大きなお世話だと怒られるのかと思ったら「おっしゃる通り」「現場も情けない思いでいる」「上層部が信じられないくらい臆病」「絶対に巻き返す」という熱いものばかりで驚いた。現場は、やはり番組を作りたいのだと実感した。
「大みそかはワンピース」という方針で行くなら、新作で勝負してほしかった。日テレ「名探偵コナン 江戸川コナン失踪事件」(12月26日、視聴率12・1%)や、テレ朝「相棒 元日スペシャル」(16・9%)など、他局が年末年始に当てた人気コンテンツはともに新作だっただけに、フジの再放送は雑に感じられる。そもそも大みそかにワンピースを見るようなファンは「エピソード オブ チョッパー」ほどの名作はすでに見ているはずで、わざわざCMだらけの再放送を見るとは思えない。制作費がかからないという利点はあるものの、ターゲット不明な編成で大事な「ワンピース」に泥を塗る結果になったのは、外野の立場でも残念だ。
かつて深夜枠やトレンディードラマ、バラエティーなどでテレビの新機軸をいくつも打ち立てたフジだが、ここ数年は企画力の低下が伝えられ、続編頼みの番組作りが続いている。25年ぶりの“W浅野”とか、「ショムニ」「救命病棟24時」「HERO」「ナースのお仕事」など、過去のヒット作が再生産されている流れだ。元日にハワイから生放送した「オールハワイナイトフジ2015」も、往年の「オールナイトフジ」を思わせるタイトル。こちらも視聴率は4・4%と振るわなかった。12年連続3冠王の全盛時代を知る者としては、保守なチャレンジがすべっている姿を見るのは切ない。
日テレの「笑ってはいけない」のトップバッターにゴーストライター騒動の新垣隆さんが登場して、シリーズ史に残る爆笑をさらっていた。TBSのレコード大賞でも、新垣さんとゴールデンボンバーとの爆笑コラボが注目を集めた。こういう演出の切れ味は、本来フジのお家芸のはずだった。昔から「TBSに負けてもいいが、フジテレビにだけは負けたくない」とライバル心をむきだしにしてきた日テレの同世代社員ですら「ここまで元気がないとこちらも困る」と心配顔だ。今年こそ、リーディングカンパニーの貫禄を見せてほしいと思う。
とはいえ、本音を言えば、個人的にはワンピース再放送でよく3・3%もとれたという印象もある。どんな人が見ていたんだろう。この年末年始でいちばん気になるトピックである。
【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)
[nikkansports.com 2015/1/5]
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