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糖質制限食のすすめ
掲載2
人類は肉食で進化した
人間の脳は肉食によって大きくなった
人類はオランウータンやゴリラやチンパンジーと共通の祖先から進化しました。動物進化の系統樹において、約1300万年前にオランウータン、約650万年前にゴリラ、約490万年前にチンパンジーが人類から分岐したと考えられています。
人類の特徴は他の動物と比べて知能が高いことですが、知能の発達には脳が大きくなることが必須です。チンパンジーの脳容積は400cc程度で、現代人の成人男性の脳容積の平均は約1350ccです。チンパンジーと同程度の脳容積しかなかった初期人類から、高度の知能をもった現生人類に進化する過程で脳容積は3倍以上に増えました。チンパンジーの脳容積は500万年前と同じで、人類の脳容積が3倍も増えた理由は、人類が動物性食糧を多く摂取するようになったからです。
脳組織の50から60%は脂質から構成されていますが、このうち約3分の1はアラキドン酸やドコサヘキサエン酸のような多価不飽和脂肪酸です。アラキドン酸は必須脂肪酸で人間は体内で合成できません。ドコサヘキサン酸は同じω3系不飽和脂肪酸のα-リノレン酸から体内で変換されますがその効率は極めて悪いので、最近ではドコサヘキサエン酸も必須脂肪酸に分類されています。 つまり、脳の成長に必要なアラキドン酸とドコサヘキサエン酸は食事から摂取しなければなりませんが、この2つの脂肪酸は植物性食物には少ししか含まれていません。アラキドン酸は肉、ドコサヘキサエン酸は魚の脂に多く含まれています。
オランウータンやゴリラやチンパンジーは今でも熱帯の密林に生息し、いずれも植物性食物の多い食事をしています。基本的には雑食で、昆虫や鳥類の卵や小型哺乳類など動物性食物も食べますが、主体は果実や植物の葉や芽や根など糖質の多い食事です。氷河期の氷期の間も、アフリカやアジアの暖かい地域にわずかに残っていた森林で生き延びたと思われます。しかし、森に残ったために人類のような進化をとげられなかったと考えられています。
人類も森林に住んでいたころは植物性の食糧、つまり糖質の多い食事でした。人類が肉食になったのは、約250万年前から氷河期が始まったからです。
人類は氷河期に肉食になった
オランウータンやゴリラやチンパンジーのような類人猿から初期人類(猿人)にいたる1000万年以上の年月において、私たちの祖先はアフリカの森林に生息し、主に植物性の食物を食べていました。
約440万年前に現在のエチオピアの地域のジャングル(密林)に生息していた初期人類のラミドゥス猿人の食事は、木の葉や果実やベリー類など軟らかい植物性食物が主体でした。歯の構造から硬い植物を食べるようには適応していなかったようです。
約400万年〜200万年前に生存したアウストラロピテクスは二足歩行を行うようになり、密林からより開けた草原で住むようになります。アフリカ東部や南部のサバンナ(乾期と雨期のある熱帯に分布する疎林と灌木を交えた熱帯長草草原地帯)の環境に適応し、歯が発達して硬い殻をもつ大きな種子や地下の根なども食べるようになります。植物性食物を中心にして、さらに小動物の狩猟や、動物の死肉や肉食獣の食べ残しから動物質性食糧を得るようになりました。このような食生活が250万年くらい前から起こった気候の変化で変わっていきます。
人類が狩猟を開始する直接のきっかけは250万年前くらいから起こってきた気候や環境の変化です。このころから氷河期に移行し、地球上の気温が低下していき、アフリカのジャングルは縮小し、草原やサバンナに変化していったからです。
氷期の間は地球全体が乾燥し、降雨量が少なくなると大きな樹木は育たなくなり、草原が増えてきます。そこに草食動物が増え、草食動物を獲物とする大型の肉食動物が棲息するようになります。 人類はそのような獣を狩猟によって食糧にしてきました。動物以外にも、漁によって魚介類も多く摂取しています。間氷期になって気候が暖かくなって樹木が成長すると木の実や果物なども増えますが、基本的には肉や魚など動物性の食糧が半分以上を占めていたようです。
氷河期というのは地球の気候が長期にわたって寒冷化する期間で、北アメリカやヨーロッパ大陸に氷床が拡大し、アジアやアフリカも気温が低下して涼しくなり、熱帯性の密林は縮小していきます。氷河期は数万年続いて再び温かい気候に戻ります。氷期と氷期の間を間氷期と呼びます。
約250万年以降、4万年から10万年の周期で氷期と間氷期を繰り返しています。最後の氷期が終わったのが約1万年前で現在は間氷期にあたります。ホモ属(Homo)が現れたのは今から250万年〜200万年前です。ホモ属は現代の人類(ホモ・サピエンス)と同じ属です。この頃から人類は石器を道具として利用し、狩猟や肉食獣の食べ残しから得た動物性の食糧が増えてきます。さらに、160万年前くらいから人類は火を使うようになり、食物を火で加熱することによって栄養の吸収が良くなります。150万年前に住んでいたホモ・エレクトスは積極的に狩猟を行っていました。 このように初期人類の食事は植物性食糧由来の糖質が多いものでしたが、250万年くらい前から動物性食糧が増えるようになり、少なくとも150万年前くらいから農耕が始まる1万年前くらいまでは、低糖質・高蛋白食であったことになります。このような食事が人類を進化させました。
約1万年前に最後の氷河期が終わって地球が温暖化して農耕と牧畜が始まります。農耕によって穀物の摂取が増えました。糖質の摂取量は現代人では1日250から400グラム程度ですが、狩猟採集時代の糖質摂取量は1日10から125グラムと推定されています。
農耕が始まってから、成人の平均身長は減少しているという報告があります。また、骨粗しょう症や虫歯も増えています。そして、農耕が始まって人類の歴史の中ではじめて脳の重量が減少していることが報告されています。現代人の脳容積は、2万数千年前までヨーロッパに存在したネアンデルタール人の脳容積より10%程度小さいことが明らかになっています。その理由としてタンパク質や不飽和脂肪酸の摂取量の減少が指摘されています。農耕によって穀物が豊富になり、糖質が増えた分、肉や脂肪の摂取量が減ったからです。
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プロフィール
福田 一典(ふくだ かずのり)氏
銀座東京クリニック 院長
福田 一典(ふくだ かずのり)氏
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昭和28年福岡県生まれ。昭和53年熊本大学医学部卒業。熊本大学医学部第一外科、鹿児島県出水市立病院外科勤務を経て、昭和56年から平成4年まで久留米大学医学部第一病理学教室助手。その間、北海道大学医学部第一生化学教室と米国Vermont大学医学部生化学教室に留学し、がんの分子生物学的研究を行う。
平成4年、株式会社ツムラ中央研究所部長として漢方薬理の研究に従事。平成7年、国立がんセンター研究所がん予防研究部第一次予防研究室室長として、がん予防のメカニズム、および漢方薬を用いたがん予防の研究を行う。平成10年から平成14年まで岐阜大学医学部東洋医学講座の助教授として東洋医学の教育や臨床および基礎研究に従事した。現在、銀座東京クリニック院長。
<主な著書等>
「がん予防のパラダイムシフト--現代西洋医学と東洋医学の接点--」(医薬ジャーナル社,1999年)、「からだにやさしい漢方がん治療」(主婦の友社,2001年)「見直される漢方治療〜漢方で予防する肝硬変・肝臓がん」(碧天舎,2003年)など。
バックナンバー
糖質制限食のすすめ
・掲載7 糖質摂取を減らすと太りにくくなる
・掲載6 糖質を減らせば老化しにくくなる
・掲載5 糖質が増えると欧米人は肥満になり日本人は糖尿病になる
・掲載4 農耕が始まり糖質摂取量が増えた
・掲載3 人類は糖質で太る体質を持っている
・掲載2 人類は肉食で進化した
・掲載1 なぜ糖質制限が議論されるのか
自然治癒力を高める東洋医学の考え方[2](インタビュー)
・掲載5 癌治療におけるサプリメントと役割
・掲載4 ホリスティック医療の重要性
・掲載3 自然治癒力はどこまで期待できるか自然治癒力を上げる方法
・掲載2 癌治療における西洋医学と東洋医学の理想的な関係
・掲載1 東洋医学との出会い、なぜ、癌代替医療に取り組むのか
自然治癒力を高める東洋医学の考え方[1]
・掲載6 天寿がん:体にがんがあっても天寿を全うできる
・掲載5 プラシーボ効果と心身一如:心が治癒力を左右する
・掲載4 医食同源とサプリメント:食養生に生かす機能性食品
・掲載3 病気は正気と病邪のせめぎ合い
・掲載2 「未病を治す」は全ての病気の予防の原則
・掲載1 「虚を補う」視点の大切さ〜老化とは「虚」に傾く過程
http://www.daiwa-pharm.com/info/fukuda/7096/
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