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<人食いバクテリア>昨年患者273人、致死率30〜50%
毎日新聞 2月25日(水)11時18分配信
<人食いバクテリア>昨年患者273人、致死率30〜50%
劇症型溶血性レンサ球菌感染症の主な病原体であるA群溶血性レンサ球菌=国立感染症研究所提供
突然発症して急激に手足の壊死(えし)などが進み、時に人の命を奪う「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の患者報告数が近年、増加傾向にある。国立感染症研究所によると、昨年は1999年の調査開始以降最も多い273人に達した。今年も2月15日までで68人に上る。急激な進行と致死率の高さから「人食いバクテリア」と恐れられる細菌感染症の実態とは?【藤野基文】
【グラフ】増加する劇症型溶血性レンサ球菌感染症の患者数
主な原因菌の「A群溶血性レンサ球菌」は特別な細菌ではない。へんとう炎やとびひ、皮膚炎などを起こすが、通常は抗菌薬で治療できる。症状がないまま、のどなどに保菌している子どももいる。
しかし、傷口などから細菌が体に入ってしまうと、まれに劇症化することがある。初期症状は手足の痛みや腫れ、発熱などだが、病気の進行は極めて速い。通常は細菌のいない筋肉や筋膜を壊死させたり、血流に乗って全身に回って多臓器不全などを引き起こしたりする。発症して数十時間以内にショック状態で死亡することもあり、死亡率は30〜50%に達する。
厄介なのは、抗菌薬の効果が菌の増殖スピードに追いつかない場合もあることだ。東京女子医大の菊池賢教授(感染症学)によると、「足が痛い」と訴えて来院した患者を診察した際、壊死して皮膚が紫色に変色した部分が見る間に広がっていった例もあった。菊池教授は「体内で免疫機構が全く機能せず、細菌が自由に増殖していくのを見ているようだった。どんどん壊死が広がる場合は切断して止めるしかない」と話す。
なぜ劇症化するかは解明されていない。国立国際医療研究センターの秋山徹・病原微生物学研究室長によると、A群の中でも、ある特定の遺伝子を持った型が劇症化を起こす場合が圧倒的に多いことが分かっている。通常、体内に入った病原体は免疫細胞によって排除されるが、この型の菌は特別な物質を産生して免疫細胞を攻撃している可能性が考えられるという。
感染研によると、この感染症は87年に米国で見つかり、日本では92年に初めて報告された。患者は全例、国に報告されることになっている。患者報告数は2000年代前半までは年50人前後で推移したが、その後は100人前後に増えた。さらに、10年代は200人前後と倍増。A群以外の溶血性レンサ球菌で劇症化する場合があることも分かってきた。
秋山室長が関わった厚生労働省研究班の調査では、患者の半数以上が60代以上の高齢者だった。糖尿病やがんなどの基礎疾患がある患者が多かったが、基礎疾患がない人も少なくなかった。秋山室長は「患者側に発症しやすさに関わる因子がある可能性もあるが、はっきりしたことは何も分かっていない」と話す。
ありふれた細菌が突然、牙をむき、急速に悪化する。手の打ちようがないように思えるが、何か注意できることはあるのだろうか。
菊池教授は「手足の傷や水虫にかかっている場所から感染しやすい。特に糖尿病などの持病のある人や高齢者は、傷が化膿(かのう)したらすぐに受診してほしい」と呼び掛ける。発症してしまった場合は、「とにかく早く検査して菌を見つけ、広がる前に対処することが重要」と、秋山室長は指摘する。
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最終更新:2月25日(水)12時20分毎日新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150225-00000018-mai-soci
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