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聞こえづらいと思ったら…/(C)日刊ゲンダイ
骨を溶かしやがて脳に達し…「大人の中耳炎」はこんなに怖い
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/154641
2014年11月5日 日刊ゲンダイ
子供の頃、何度も中耳炎を起こした人にリスクが高い病気が慢性中耳炎の一種、「真珠腫性中耳炎」だ。放置すると、顔面神経マヒで顔が歪んだり、最悪な場合、死に至る脳膿瘍や髄膜炎といった重篤な合併症を引き起こすこともある。
「真珠腫性中耳炎は、先天性と後天性があり、後天性は主に成人に発症します」(東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学講座・小島博己教授)
耳は、外側(空気に接する側)から外耳、中耳、内耳と分かれる。外耳と中耳の間にある鼓膜の外耳側はごく薄い皮膚で、中耳側から「粘膜」になる。
「子供はたいてい中耳炎を起こすものですが、繰り返すと、中耳の粘膜が損傷し、蜂の巣のような構造の『乳突蜂巣』の発育が阻害されます。すると鼓膜の一部が中耳側に陥没して、ポケット状のものができることがあるのです」
鼓膜の“ポケット”に耳あかがたまり、白い塊になったのが「真珠腫」。骨を溶かす作用があり、周囲の骨や耳小骨を破壊し、大きくなっていく。
「難聴やめまい、耳だれが生じ、さらに骨の破壊が進んで顔面神経や脳に到達すると、顔面神経マヒや髄膜炎、脳膿瘍などを引き起こします」
真珠腫による骨の破壊はゆっくりと進むので、症状に気づきにくい人も珍しくない。
「子供時代に中耳炎を何度も起こしたなら、一度耳鼻咽喉科で検査を受けるのもひとつの対抗策です」
■治療法は3タイプ
治療は、“ポケット”が小さければ、耳鼻咽喉科による定期的な掃除や点耳薬などで、耳あかがたまらないようにする。
ポケットが大きければ手術だ。3通りあり、@外耳道を大きく削除する「オープン法」A外耳道をそのままの形で保ち真珠腫を取り除く「クローズ法」B外耳道を削除して真珠腫を取り除き、自家軟骨や骨で外耳道を再建する「外耳道再建型手術」だ。
「真珠腫の取り残しが少しでもあれば再発します。確実に真珠腫を取り除くために@〜Bの治療法が生まれました。それぞれ一長一短があり、医師によって支持する治療法が違います」
全国でトップクラスの真珠腫性中耳炎の手術数を誇る小島教授は、Aのクローズ法を、顕微鏡と内視鏡を用いて行っている。
「残せる組織は残した方がいい。外耳道を自然な形で残せ、しかも顕微鏡と内視鏡を用いることで取り残しのリスクをほとんどゼロにできる。併せて、細胞シートを用いて鼻から粘膜を移植し、損傷した粘膜を健康な粘膜に変える臨床研究も行っています。これによって、再発の可能性をより低くできると考えています」
@のオープン法は、外耳道を取るので真珠腫の取り残しが少ないが、耳あかがたまりやすくなり、定期的に病院で掃除をしてもらわなくてはならない。水泳でめまいが生じやすくなったり、聴力の戻りがあまりよくないという指摘もある。
Bは、外耳道を再建するが、人それぞれの自然な外耳道の再建は技術的に困難だというデメリットがある。
「再発回避のためにも、最初の手術が肝心。よく吟味し、手術件数の多い医療機関で治療を受けることを勧めます」
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