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角質細胞もバラバラに/(C)日刊ゲンダイ
市販薬も効かないしつこい“かゆみ”には「重大病」が潜む
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/154466
2014年10月29日 日刊ゲンダイ
皮膚がやたらとかゆい。見た目には異常はなく、市販のかゆみ止めを塗っても飲んでもまったく効かない。どうしてしまったのか。
順天堂大学大学院環境医学研究所長で、かゆみの最新研究を行っている森建二教授(同大学浦安病院皮膚科)によると、謎のかゆみは重大病のサインになるという。
かゆみを引き起こす主な原因は、肥満細胞から分泌される「ヒスタミン」という惹起物質だ。これが皮膚中にあるかゆみを感じる神経に結合することでかゆくなる。代表的な病気にじんましんがあり、見た目も赤く腫れるなどの異変が起こるが、抗ヒスタミン薬を飲めばほとんどが治まる。
しかし、それでも治らないかゆみがある。
「これを〈難治性のかゆみ〉と呼んでいます。主に皮膚の乾燥によって生じますが、保湿剤をいくら塗ってもまったく効かない場合は重大病を疑わなくてはなりません」
空気の乾燥が原因ではなく、体内に生じた病気の影響で皮膚が乾燥して起こるかゆみが危ないのだ。
疑われる病気はいくつもある。中でも多くみられるのが腎不全などの腎機能障害だという。
「慢性腎不全や尿毒症になると、オピオイドと呼ばれる体内物質のバランスが崩れ、かゆみを起こすオピオイドが、かゆみを抑えるオピオイドより多くなります。人工透析でも強いかゆみが続き、長年、多くの患者さんが耐えられないほどのかゆみに悩まされています」
近年、かゆみを起こすオピオイドを抑える薬が開発され、多くの患者がかゆみから解放されたという。
肝硬変や、肝臓を患うことで併発する原発性胆汁性肝硬変も、難治性のかゆみが表れる。肝臓の中の胆管が炎症によって破壊され、胆汁中のビリルビン成分が全身にまわり、激しいかゆみを生じさせる。原因不明とされてきたが、オピオイドの発見によりナルフィラフィン(カッパーオピオイド受容体作動薬)の効用も確認された。
■特徴は「皮膚の中から湧いてくるような感覚」
胃、肺、肝臓、腎臓、膵臓などの内臓がんも、かゆみの原因になる。はっきりしたメカニズムは分かっていないが、症状の報告は多い。
「がん細胞が、かゆみを起こすなんらかの惹起物質を産生すると考えられています。がんを摘出したら、かゆみが治まったという報告もあります。難治性のかゆみと診断されたら、内臓悪性腫瘍のチェックも必要です」
こうした重大病から生じるかゆみの特徴として、「皮膚の中から湧いてくるような感覚がある」という。
「本来、肌表面の角質には、角質細胞が細胞間脂質(セラミド)や天然保湿因子によってレンガの塀のようにぴったりと重なり合い、体内の水分を閉じ込めて、細菌、ウイルス、ダニ、花粉といった異物の侵入を防ぐバリアー機能を果たしています。ところが、重大病によって重度の乾燥肌になると、角質細胞がバラバラになり、干ばつ時の田んぼのようにひび割れて水分が蒸発し、大量の異物が侵入してきます。これが神経を刺激して湧き出るようなかゆみを引き起こします」
かゆさに耐えきれず、かきむしればさらに角質が壊れ、異物の侵入も増えて神経が過敏になるという悪循環に陥る。この状態までくると、痛みより我慢できないほどかゆいというから恐ろしい。
ほかにも、HIV感染症、甲状腺機能異常症、血液の病気など、難治性のかゆみを生じさせる病気は数多くある。そのため、病気の特定も難しく、森教授のもとには原因不明のかゆみに苦しむ患者が多く訪れるという。
「難治性のかゆみと病気の関係はまだはっきりと解明されていないことも多く、世界中で研究が進められています。ただ、いずれにしてもかゆみは体からの危険信号といっていいでしょう」
謎のかゆみに襲われたら、すぐに医療機関で診断を受けるべし。
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