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人の名前が出てこない、同じ本を何度も買ってしまう それは単なる"もの忘れ"か、"認知症の前兆"か
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40864
2014年10月27日(月) 週刊現代 :現代ビジネス
「歳のせいだから仕方ない」そう言って、ごまかしていないだろうか。最近目立ってきたもの忘れは、認知症の前ぶれかもしれない。それはまだ、「手遅れ」にならずに済む段階なのか。
■カギをかけたか不安になる
のど元まで出かかっているのに、どうしてもその名前が出てこない。
「またか……」
埼玉県に住む笠井信二さん(68歳・仮名)は不安を覚えた。この土地に引っ越してきてから、30年以上も家族ぐるみの付き合いをしているご近所さんの名前を、不意に忘れてしまうのだ。
「『○○さん』と呼びかけようとしたのですが、出てこないから、そういうときは『こんにちは』と名前を呼ばずにごまかします。最近、よくあるんですよね。あとで自宅に戻って妻と話をしていると、ふと思い出すのですが。妻との会話は最近、『あれ』『あの人』なんて代名詞ばかりで、うんざりします」
誰しも思い当たる節があるのではないか。覚えていて当たり前のことがどうしても思い出せず、もどかしく感じる。若い頃なら「オレもボケたか」などと冗談にできたが、60歳を越してもの忘れが増えてくると、笑えなくなってくる。本当に自分はボケ始めているのではないだろうか—その不安が徐々に襲いかかる。
いま日本では急速に認知症患者が増加している。厚生労働省によれば、'12年時点で、65歳以上の認知症の患者数は約462万人。「認知症予備軍」を含めると860万人以上にのぼる。昨年出された九州大学の研究チームの発表では「(患者数は)20年前の6倍に増加している」という。予備軍を含めれば、65歳以上では4人に1人が認知症。歳を重ねるほど、その割合は急激に上がっていく。
加齢とともに身体だけでなく脳の働きも衰えるため、年相応にもの忘れが生じるのは当然のこと。だが、一口に「もの忘れ」と言っても、「単なるもの忘れ」と「認知症の前兆」があり、現れる頻度や回数といった数値によって「認知症度」も異なってくるのだ。
「中高年から悩み始める『もの忘れ』と、認知症の初期症状はまったくの別物です」
おくむらクリニック(岐阜県)の院長で、『もの忘れは治る!』などの著書もある奥村歩氏はこう言う。
いったい、どんな違いがあるのか。まずは、中高年によくありがちな事例で紹介していこう。
(1)会社を経営する木村晶彦さん(68歳・仮名)は、60代後半に突入して、記憶力の低下を身に染みて感じている。
「若い頃は、記憶力には自信があったのですが、最近は新しいこと、とくに数字が覚えられなくなりました。仕事でビジネスホテルに宿泊するときも、部屋番号が覚えられないので、常にメモを持ち歩いています」
(2)出かける際、家のカギをかけてきたか、電気を消してきたか、などを覚えておらず、不安になる人もいる。
「家を出てしばらくしてから『あれ、カギかけてきたっけ?』と心配になるんです。気になって途中で引き返すのですが、たいていきちんとカギはかけている。月に1度はそういうことがあります」(東京都在住・杉本眞さん・64歳/仮名)
(3)東京都に住む阪本美智子さん(45歳・仮名)は、同居する79歳の義母の言動が気になっているという。
「いつも義母にはゴミ出しをお願いしているのですが、最近、曜日を間違えることが多いんです。うちの地域では可燃ゴミの収集は火曜と金曜ですが、水曜の朝に突然『ゴミを出さなきゃ』と言い出した。『お義母さん、燃えるゴミは明後日ですよ』と言うと、『そうだったわね』と答えるのですが、翌日もまたゴミを出そうとした。何度も同じ間違いをするようになったんです」
(4)東京都に住む高村誠さん(77歳・仮名)は、最近、同居する家族からこんな指摘をされるようになった。
「娘からよく『お父さん、昨日も同じこと言ってたよ。ボケたんじゃないの』と言われるんです。そんなはずはないのに、ボケ老人扱いされるとは腹立たしい」
(5)8歳上の夫が、つい先日行った家族旅行のことを覚えていなかったと話すのは、千葉県在住の野上俊枝さん(76歳・仮名)。
「1ヵ月前、娘夫婦と一緒に箱根の温泉に行った話をしていたのですが、私の話に相槌は打つものの、どこか上の空。覚えているか訊くと『そうか、箱根に行ったっけなぁ』と答えたんです。大丈夫でしょうか……」
これら5つのケースに心当たりがある人も多いだろう。この中には、年相応で問題のない「もの忘れ」と、「認知症の前兆」のどちらも含まれている。見分けるポイントはどこにあるのか。
まず、「ほぼ問題ないもの忘れ」と言えるのが、(1)の新しい数字が覚えにくくなる、(2)のカギをかけたか覚えていない、というケース。前出・奥村氏が解説する。
「電話番号や部屋の番号など、それ自体に意味を持たない記号のようなものを脳に保存しておく記憶を『ワーキングメモリ』と言います。この機能は、10代でピークを迎え、年齢とともに衰えていくので、(1)は単なるもの忘れだと言えます。
(2)のように、ドアにカギをかけるという日常的な行動は『手続き記憶』といって、身体の記憶であって脳の意識にはのぼっていないことが多いのです。カギだけでなく、朝起きて歯磨きをして着替えをして出かける……というような毎日の習慣になっている行動は、無意識のうちに行われるため、その行動をしたか否か覚えていなくても心配ない。月に1~2度、途中で引き返して自宅に確認に行くくらいなら心配ありません」
■今日が何曜日かわからない
逆に、危険な「認知症の前兆」だと考えられるのは、(3)のゴミ出しの曜日を間違える、(4)の「同じことを何度も言う」と指摘される、(5)の旅行したことを忘れてしまう、という3ケース。これらに当てはまれば、すでにあなたの「認知症度」はかなり高い。
「認知症では、まず『いま自分がどのような時間の、どのような空間に生きているか』という目先の感覚が低下していきます。それがまさに(3)のケース。今日が何日かと訊かれて、1~2日ズレるのは問題ないのですが、認知症は最初に『今日が何曜日か』ということがあいまいになる。その後、月、季節というように段階的にわからなくなっていくのです」(前出・奥村氏)
(4)の同じことを何度も言うという症状は、自覚しにくい前兆の一つ。認知症では、直近の『見たり、聞いたり、経験したこと』を記憶に残す海馬の働きが低下するため、少し前のことが記憶に残らなくなるのだが、どれくらいの頻度で現れると危険なサインなのか。
「人間は、大事なことは一度言っても、もう一度確認しないとおさまらない傾向があります。1~2回であれば正常の範囲内でしょう。けれど、3~4回同じことを言ったり、訊いたりすると認知症のサインと考えられます」(川崎幸クリニック院長・杉山孝博氏)
(4)と同様、自覚しにくいが、家族が気付くきっかけになることが多いのが(5)。旅行をしたことそのものを忘れてしまう状態について、認知症介護研究・研修東京センター・センター長の本間昭氏が解説する。
「普通のもの忘れは、体験や出来事の一部を忘れているだけなので、時間をかけて他の記憶から思い出すことができるのですが、認知症は、体験したものやエピソード自体をそのまま忘れてしまいます。ヒントがあっても思い出すことができず、そもそも、もの忘れをしている自覚がなくなってしまうことさえあります」
(3)(4)(5)に当てはまらなかったといって、まだ安心はできない。次に挙げるようなケースに心当たりはないだろうか。
(6)冒頭で紹介した笠井さんのように、忘れるはずのない人やモノの名前が出てこないというケース。テレビに出ている俳優の名前や観た映画のタイトルなど、固有名詞が出てこないことも。
(7)「同じ本を何度も買ってしまう」と言うのは石川県に住む林原一彦さん(60歳・仮名)だ。
「ミステリー小説が好きで、本屋に行くたびに面白そうな本を買うのですが、買って自宅に帰ったら同じ本が本棚に並んでいたり、読み始めてから以前読んだ本だと気付くことがよくあるんです。先日買った本は、なんと3冊目だった。愕然としましたね」
(8)東京都在住の金子俊夫さん(71歳・仮名)は、何かをしようと自宅の2階へ行ったのに、上がった途端、何をしに来たのか忘れてしまうことがよくあるという。
「先日は、妻からガムテープを買ってきてほしいと頼まれて近くのコンビニへ出かけたのですが、お店に着いたとき読みたかった雑誌が発売されているのが目に入った。それを買って帰ったのですが、自宅に戻ってから、肝心のガムテープを買い忘れたことに気付いたんです。妻から責められ、もう一度買い物に行くハメになりました……」
(9)千葉県在住の柿崎三津子さん(78歳・仮名)は、この頃、探し物をしている時間が多くなった。
「メガネをどこに置いたか忘れて探すことはしょっちゅうなのですが、テレビのリモコンや印鑑などいろいろなものをしまった場所がわからなくなってしまうんです。最近は常に探し物をしているような状態で、困っています」
これら(6)~(9)のケースは、「基本的には問題のないもの忘れ」なのだが、その程度によっては「認知症の前兆」の可能性があるという。
「(6)のように親友や孫の名前が出てこないことを不安に思ってクリニックに来る人も多いのですが、これは本来であればいわゆる『ど忘れ』の状態で、心配ありません。一方、どれだけヒントを出しても、いつまでたっても思い出せない場合は認知症の症状だと言えます」(前出・奥村氏)
ヒントを出してわかるかどうか—これが認知症の前兆かを判断する一つの目安になる。
■何をするつもりだったっけ
(7)の同じ本を何度も買ってしまうというケースは、認知症専門医の奥村氏でも「私もよくやっています」と言う。これもあまり心配する必要はないのだが、その本が「感銘を受けた本」「旅先で買った本」だった場合は要注意だ。
「好みの傾向は歳を重ねてもさほど変化せず、購買意欲を抱く対象も変わらないため、同じ本を買ってしまう。最初に買った、もしくは読んだときの記憶が意識レベルに達していなかっただけのことです。でも、感銘を受けたり、旅先など非日常的な空間で行った行動は記憶に残りやすいので、そのような本を何度も買ってしまうのは問題アリでしょう」(前出・奥村氏)
同様に、(8)の何をしようと思ったのか忘れてしまうというのも、本来であれば「単なるもの忘れ」の部類に入る。奥村氏が続ける。
「私たちの脳は、一つのことに集中しようと思っていても、他の刺激を受けてしまうと集中力が持続できないようになっています。2階で何かをしようと思っていても、階段を上ることに神経を使ったので思っていたことが飛んでしまっただけのことです」
買い物に行ったのに肝心なものを買い忘れたというケースもしかり。(9)のように、メガネをどこに置いたか忘れてしまうのも、別の刺激を受けて気が散ってしまったり、無意識のうちに置いたものであれば、記憶に残らないことも多いので心配いらないのだが、直前のことを忘れてしまったり、その「頻度」があまりに多いと危険度は上がる。前出の杉山氏が言う。
「普通の人だって、1週間前のことをきちんと覚えてはいません。認知症は直前のことを忘れてしまうのが特徴。それに、日常生活を送るうえで支障が出てくるレベルであれば、認知症の疑いがあります」
目安となる数値としては、何をしようとしていたのか忘れる、ものをどこに置いたかわからなくなるのが、1日に1~2回程度なら年相応のもの忘れと言えるが、それが日に6~7回以上で、常に何かを忘れて探し回っているようなら、認知症を疑ったほうがいい。
もう一つ、こうしたもの忘れが急に増えたかどうか、という点も認知症の指標になる。前出の本間氏が言う。
「こうしたもの忘れなどが単純に『ある』『ない』ではなく、最近増えてきた、という『変化』があることが見分けるポイントになります。半年~1年前にはなかったのに、最近急にもの忘れなどが目につくようになっているのなら、それは早期受診のサインです」
これまで紹介したケースのうち、(3)(4)(5)に一つでも当てはまった人は、すでに認知症を発症している可能性(認知症度)は70~80%。(6)~(9)のような症状が1日に5~6回見られるのであれば50~60%。(1)や(2)、(6)~(9)のような症状が1日に2~3回ある程度なら、年相応のもの忘れで、認知症度はまだ低いと言える。
だが、あなたのいまの状態が、認知症度が低かったとしても、油断はできない。単なるもの忘れは、脳の「警告サイン」なのだという。
「情報過多で、不安にさらされた私たちの脳が悲鳴を上げているサインの一つが『もの忘れ』なのです。中高年に起こる単なるもの忘れであっても、このサインを無視し続けると、健康が蝕まれ、正真正銘の認知症が待っているのです」(前出・奥村氏)
では、実際に認知症になったらどうなってしまうのか。次章から見ていこう。
「週刊現代」2014年10月25日号より
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