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日本ではこの10年で食物アレルギーを発症する患者さんが増えています。特に子どもの間では深刻で、2013年12月に文部科学省が全国実態調査を実施し、「食物アレルギーの児童生徒は45万人(全体の4.5%)に上り、2004年の前回調査の約33万人
“腸内細菌”が、食物アレルギーの新たな治療薬になる!?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140919-01060100-trendy-sci
日経トレンディネット 9月20日(土)13時16分配信
食、医療など“健康”にまつわる情報は日々更新され、あふれています。この連載では、現在米国ボストン在住の大西睦子氏が、ハーバード大学における食事や遺伝子と病気に関する基礎研究の経験、論文や米国での状況などを交えながら、健康や医療に関するさまざまな疑問や話題を、グローバルな視点で解説していきます。 日本ではこの10年で食物アレルギーを発症する患者さんが増えています。特に子どもの間では深刻で、2013年12月に文部科学省が全国実態調査を実施し、「食物アレルギーの児童生徒は45万人(全体の4.5%)に上り、2004年の前回調査の約33万人(同2.6%)から急増」と報告されているほどです。 今回は、その食物アレルギーの治療に関する新たな研究を解説します。
●日本人の全人口の1〜2%は食物アレルギーを持っている
厚生労働省によると、正確な人数は把握できないものの、日本人の全人口の1〜2%(乳児に限定すると10%)に、何らかの食物にアレルギーがあると考えられています。特にアレルギーの発生件数の多い「卵、乳、小麦、えび、かに」、そして症状が重くなることが多く生命にかかわることもある「そば、ピーナッツ」を含めた計7品目は、食品衛生法により、食品の表示義務があります。というのも、食物アレルギーには有効な治療法がないので、原因となる食品を避ける(除去する)ことが、治療や予防になるからです。
■参考文献 厚生労働省「食品のアレルギー表示について」
また、日本アレルギー学会は、乳幼児期に発症した「鶏卵、牛乳、大豆」は、年齢が高くなるに従い軽快することが多いものの、年齢が高くなってから発症した場合や、「そば、ピーナッツ、えび、かに」に対してアレルギー症状を起こした場合は軽快することが少ないとしています。
■参考文献 日本アレルギー学会「食物アレルギーQ&A」
●腸内細菌が食物アレルギーを予防する!?
米国ではどうでしょうか?
やはり、食物アレルギーは大きな社会問題になっています。3歳以下の子どもの6〜8%、大人の3%が食物アレルギーを発症しているのです。
■参考文献 Mayo Foundation for Medical Education and Research「Food allergy Definition」
また米国の食物アレルギーの子どもの数も増加しており、1997年から2011年の間で1.5倍になりました。その原因について、これまでの研究では、近年の除菌し過ぎた生活環境や食習慣が、私たちの体に居る自然な細菌の組成を乱すためではないかと示唆されています。
先日、米国シカゴ大学の研究チームは、私たちの腸内に住んでいる細菌が、食物アレルギーを予防するという、非常に興味深い発見を、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)に報告致しました。
■参考文献 Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America「Commensal bacteria protect against food allergen sensitization」
共著者キャサリン・ナグラー教授は、研究報告の中で次のように述べています。
「抗生物質の乱用、高脂肪食、帝王切開による出産、一般的な病原体の除去、さらには人工乳のような刺激など、人類とともに進化してきた体内の細菌叢(細菌の集合体)に影響を与えています。我々の研究結果からは、このことが食物アレルギー増加の1つの原因と考えられます」
●食物アレルゲンへの感作を減らす常在菌
研究者らは、腸内細菌が食物アレルギーにどのように影響するかを調査しました。まず以下の3グループのマウスで、ピーナッツのアレルゲンに対する反応を確認しています。
[1]無菌マウス:生まれて無菌状態で飼育、全く常在菌をもたない [2]抗生物質で治療したマウス:かなり腸内細菌が減少している [3]正常マウス:正常の腸内細菌をもつ
各グループのマウスは、ピーナッツのアレルゲンにさらされると、無菌マウスと抗生物質で治療したマウスは、正常マウスよりも、ピーナッツのアレルゲンに対する抗体が多くできることが分かりました。つまり、無菌マウスと抗生物質で治療したマウスは、強い免疫反応を起こしたのです。
次に、免疫反応=アレルギー反応を起こした無菌マウスと抗生物質で治療したマウスに、ヒトや動物の腸管内に常在しているクロストリジウム菌を注入すると、食物アレルゲンへの感作を減らせました。
ところが、もっとも多い腸内細菌である、バクテロイデス菌(糖を発酵して、乳酸や酢酸などをつくる菌。糞便中の細菌の80%以上を占める)を注入しても、感作を減らすことはできませんでした。逆に言えば、クロストリジウム菌は、食物アレルゲンに対して、防御的な役割を持っていることが示されたわけです。
●一般的な腸内細菌が食物アレルゲンが血流に入ることを防止する
さらに研究チームは遺伝子分析により、この防御メカニズムはクロストリジウム菌が、インターロイキン22(IL-22)を高濃度に作り出すからだということを明らかにしました。インターロイキンは、リンパ球や単球、マクロファージなどの免疫反応への寄与が知られる白血球から作られる微量生理活性タンパク質です。30種類以上ありますが、その1つであるIL-22に、腸の内側へのアレルゲンの透過性を減少させる作用があるというのです。
また、抗生物質で処置したマウスは、IL-22、あるいはクロストリジウム菌を投与すると、ピーナッツのアレルゲンにさらされたとき、どちらも、コントロールと比較して、血液中アレルゲンのレベルが低下しました。
以上から、研究者らは、一般的な腸内細菌であるクロストリジウム菌が、ピーナッツのアレルギーから人体を保護することを発見しました。クロストリジウム菌は、食物アレルゲンが血流に入ることを防止し、アレルギーを引き起こす食物アレルゲンに感作されることを最小限にします。この発見は、私たちに良い影響を与える微生物である、プロバイオティクスを利用した療法の開発における重要なステップです。チームは、プロバイオティック治療の開発に取り組み、現在、仮特許を申請しています。
この研究成果について、ナグラー教授は「母親の立場になれば、子どもが食べ物をひと口食べるたびに心配しなければならないことが、どれほど恐ろしいか、想像に難くありません」といいます。そして「食物アレルギーに対し、どの細菌がどのように介入できるのかを知り、とても興奮しています。まだ保証はありませんが、治療法のない疾患に対する治療薬として、検証が可能です」と述べています。
■参考文献 Science Life「Gut bacteria that protect against food allergies identified」
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