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何を食べてもまずい…こってり好きは用心「味覚障害」の恐怖
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/150023
2014年5月12日 日刊ゲンダイ
患者数が増加/(C)日刊ゲンダイ
「醤油やソースのかけ過ぎをよく指摘される」「淡泊な料理の味がよく分からない」「作った料理の味付けが濃いと家族からよく指摘される」――。
この中に該当する項目があるなら、味を正常に感じられない「味覚障害」かもしれない。近年、患者数が増加しているという。
東京歯科大学千葉病院で味覚異常外来を受け持つ井上孝教授(千葉病院院長)に話を聞いた。
「味覚異常外来を開いて7年になりますが、開院当初の患者数は年間十数人程度でした。現在は年間約300人。遠方からいらっしゃる患者さんも少なくありません」
患者の訴えは、冒頭に加え、「特定の味が分からない」「口の中がいつも苦い/甘い」「甘い(苦い)料理を食べているのに苦い(甘い)と感じる/酸っぱい(塩辛い)料理を食べているのに塩辛い(酸っぱい)と感じる」「何を食べてもまずい」などがある。
なぜ、味覚障害が起こるのか? 多いのは、亜鉛の不足だ。
「舌の縁や奥にある味蕾(みらい)の中に、味細胞があり、味の情報を末梢神経を通して脳へ伝えます。ところが、亜鉛が不足すると、味細胞の新陳代謝が悪くなり、味の情報を脳へ伝える機能が低下。結果、味覚障害が起こるのです」
亜鉛不足の原因には、(1)亜鉛の尿中への排泄(はいせつ)を促進させ、血中の亜鉛欠乏を起こす薬(降圧薬、抗菌薬、消炎鎮痛薬、抗不安薬、抗うつ薬など)を服用している(2)偏食で亜鉛を十分に取れていない(3)血中の亜鉛欠乏を引き起こす添加物が入った加工食品をよく食べる――といった理由が挙げられる。
「治療は、亜鉛不足を招く原因を取り除き、亜鉛内服療法で不足分の亜鉛を補ってもらいます。食事面でも、亜鉛の多い食品を意識して取ってもらうようにします。(1)の場合は、担当医に相談し、亜鉛欠乏を招かない薬に替えてもらいます」
個人差があるが、早い人は治療を始めて数カ月ほどで徐々に味を感じるようになるという。
■持病の薬も原因に
亜鉛不足以外では、口腔カンジダ症による味覚障害もある。カンジダは、どんな人の口の中にも存在する常在菌だ。通常は味覚に影響を与えるほどの量は発生しないが、唾液の分泌が低下したり、口腔衛生状態が悪化すると、繁殖する。
「それらが舌にびっしり付き、味蕾がふさがれて、嫌な味がするようになるのです」
亜鉛不足の場合と同様に、原因を取り除くことが第一。口腔内をきれいにし、抗真菌薬を使う治療が有効だ。
唾液の分泌量が低下すると、味覚物質を味蕾にスムーズに運べないので、より味が分かりにくい。唾液の分泌量低下は、薬の副作用、シェーグレン症候群などの病気、現代病ともいえるストレスなどで起こる。それぞれに応じた治療とともに唾液の分泌を促すために、よく噛んだり、マッサージを行ったりする。
さらには、末梢神経や脳のトラブルが原因で味覚障害が起こっている場合もある。
「へんとうの手術後や脳梗塞の後遺症で、味覚を伝える神経や味覚を認識する中枢に異常がある場合は、味が分かりにくくなることが珍しくありません」
味覚障害は、塩分・糖分の取り過ぎや食欲低下などの二次的なトラブルを引き起こす。早めの対策が肝心だ。もしかして…と思ったら、味覚をチェックしてくれる診療の受診を。
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