01. 2014年2月12日 17:40:11
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確かに、どの程度、人にも効くのかが問題だなhttp://www.nias.affrc.go.jp/gmo/ スギ花粉症緩和米の研究開発について 一般的解説バージョン わかりやすく噛みくだいて説明しています。 詳細解説バージョン 専門的な内容で詳しく紹介しています。 リンク 農林水産省プレスリリース(平成18年9月6日) 「花粉症緩和米研究に関する日本製紙(株)の公表について」 日本製紙グループ本社ニュースリリース(2006年9月6日) 「実用化に向け「スギ花粉症緩和米」の研究試料を栽培〜小松島工場内に閉鎖型温室を建設〜」 上記のプレスリリース掲載新聞: 9月7日(木):読売新聞、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ、日本農業新聞、化学工業日報、北海道新聞、中国新聞(夕刊)、 9月8日(金):日刊工業新聞、 9月15日(金):化学工業日報、茨城新聞 農林水産省 農政改革関係閣僚会合 第6回会合(平成21年3月18日水曜日) 資料2 農業・農村の潜在力を活かした新たな挑戦(PDF:2,416KB) アグリ・ヘルス産業科委託プロジェクト 「スギ花粉症緩和米」や「遺伝子組換えカイコ」を工場で生産する。 【掲載新聞】 2009年3月10日火曜日:日本経済新聞 第3面、3月12日木曜日:日本農業新聞 第3面 2009年度補正予算案に花粉症緩和米と遺伝子組換えカイコの研究拠点の整備を盛り込む。 【掲載新聞】 2009年4月28日火曜日:日本農業新聞 第14面 農林水産技術会議/プレスリリース/平成22年度新規委託プロジェクト研究の実施について(平成22年7月9日金曜日) アグリ・ヘルス実用化研究促進プロジェクト(新規)(別紙5参照) (別紙5)生物機能を生物機能を活用した医薬品・医療用新素材の開発を進めます(PDF:266KB) スギ花粉症治療米開発へ 生物研 東京慈恵医大などとコンソーシアム 3〜4年後臨床試験計画 【掲載新聞】 2010年7月23日金曜日:化学工業日報 第5面 目 次 前 書 き 花粉症の発症の仕組み 組換えイネで花粉症を緩和できる理論的説明 研究の現状 今後の問題点
前 書 き 1996年に最初の遺伝子組換え作物(GMO:Genetically Modified Organisms)が商業化されて以来、すでに(2005年現在)世界のGMO栽培面積は9000万haに達している。現在栽培されているGMOは、ほとんどすべてが除草剤抵抗性と害虫抵抗性の作物であるが、今後は食品としての機能性を高めたり、環境の浄化を目的とした新しいタイプの GMOの開発も進むであろう。前者は主に生産者にメリットの大きいGMOであり、後者は主に消費者にとってメリットのあるGMOである。 いずれのGMOも、生物のもつ多様な機能を高度に利用できる植物であり、従来の育種法では得ることができないものである。たとえば、GMOの1例である害虫抵抗性のトウモロコシでは、ある種の微生物のつくるタンパク質が害虫の消化管細胞を破壊することに着目し、タンパク質をつくる微生物の遺伝子が利用された。この微生物の害虫に対する殺虫効果は古くからよく知られ、製剤化した微生物が農薬としてすでに実用化されていた。しかし、植物自身にこのタンパク質を作らせ、害虫抵抗性をもたせることは、遺伝子組換えの技術によって初めて可能となった。利用できる遺伝子は微生物に限らない。今ある植物が本来もっている遺伝子の働きを詳しく調べ、その遺伝子を改変して新しい成分を作らせたり、成分の量を調節してこれまでにない植物を作るのも、GMOに期待される分野である。この例には、すでに市場に出回っている青色系のカーネーションがある。 GMOをつくる時に、遺伝子の導入された細胞を選び出すのに、抗生物質耐性の遺伝子がマーカーとして用いられる。現在市販されているGMOに使われているマーカー遺伝子は安全性が確かめられているが、抗生物質は元来病気の治療に使うものであるから、GMOがこれを含まないにこしたことはない。そこで、マーカーを最終的に除いたり、抗生物質以外のものに置き換えるための研究が行われている。現在の組換え技術では、目的の遺伝子が入る場所まで制御することはできない。しかし、将来は、遺伝子を望んだ位置に組み込む究極の組換え技術の開発が進む可能性もある。このように、生活用品の製造技術と同様に、遺伝子組換え技術も研究の進展に応じてよりよいものへと改良が続けられている。生物研では、GMOをつくる基盤となるこうした技術の研究にも力を入れている。 最近、食品を含むあらゆる生活関連製品で、安全・安心であることへの要望が大きくなった。GMOの安全性に関しては、マーカー以外にも、花粉を通じた遺伝子の環境への拡散が懸念材料として取り上げられる。作物の花粉の飛散はこれまでにも研究されているが、GMOという新しい素材の利用を想定して、農水省ではより精密なデータを収集する試験を行っている。また、葉緑体など花粉で伝達されない細胞の器官に外来の遺伝子を入れる方法などの新しい方法も研究されている。いずれにせよ、花粉飛散が生態系に大きな影響を及ぼさないように、遺伝子拡散防止のための、植物の特性に応じた栽培法やその他の工夫が必要なことはいうまでもない。 2002年にイネのゲノム情報がほぼ明らかになり、それをもとに、イネ遺伝子の機能解明をより早く、より効率的に進めることができる基盤ができた。今後、その成果を実用的な作物開発に結びつけることがいっそう期待されている。生物研ではこれまで、光合成、養分の転流や吸収、草型、耐病性、耐冷性などに関係する遺伝子を利用して、生産性を高めたり環境負荷を少なくできるGMOの開発をめざした研究を行ってきている。これらは生産者メリットのGMOであるが、それに加え、花粉症緩和米やコレステロール低下米などの健康機能性を付与した消費者メリットのGMO開発にも力を入れている。ここでは、その中から、食べることによってスギ花粉症を緩和しようとするコメの開発状況を詳しく紹介する。また、参考のため、諸外国を含む各機関が提供している、GMOの安全性に関連する情報(リンク集参照)も併せて記した。 目次へもどる 花粉症の発症の仕組み スギ花粉症はスギ花粉抗原とIgE抗体との反応よる代表的なT型アレルギー反応に分類される。ハウスダスト・ダニ、カビなどが原因でおこるアレルギーもT型アレルギーの仲間に分類される。発症に至るには以下のような経過をたどる。 まずスギ花粉を鼻から吸収すると、吸収された花粉粒子(直径約30um)が粘膜に付着する。粘膜層に付着した花粉からは水溶性の抗原成分が粘膜に浸透していく。このように溶け出した抗原は粘膜の上皮下層に分布している抗原提示細胞に取り込まれる。取り込まれた抗原は、プロセシングにより断片化され、その一部は主要組織抗原分子Uと特異的に結合して、細胞膜上に抗原ペプチドとしてT細胞の抗原レセプターに抗原提示される。その結果、ナイーブT細胞からT細胞が分化成熟し、活性化される。なかでも花粉症に大きく関係するのはタイプ2といわれるヘルパーT細胞(Th2細胞)で、これが活性化されると、IgE抗体産生を導くインターロイキン(IL)-4やIL-13などを分泌する。これらインターロイキンと抗原刺激により、B細胞の増殖・分化が促進され、抗体産生細胞である形質細胞となり、IgE抗体を細胞外へ放出する。またヘルパーT細胞とB細胞の一部は抗原記憶細胞になる。 産生されたIgE抗体は、抗体のFc部分に対する高親和性のレセプター(FceRI)を介して肥満細胞(マスト細胞)の膜表面に結合する。このように、肥満細胞にIgE抗体が結合した状態が感作の成立で、次に入ってきた同じ花粉アレルゲンに反応する準備状態が完了したといえる。 感作されている人の鼻粘膜上にスギ花粉が再吸入されると、鼻粘膜上皮細胞間隙を通過した抗原は、鼻粘膜上皮に分布する肥満細胞の表面でIgE抗体と結合し、抗原抗体反応の結果、Fcレセプターの架橋形成が細胞刺激となり、Caの細胞内流入を促進する。その結果、肥満細胞の脱顆粒によるヒスタミン類の放出、アラキドン酸代謝によるロイコトリエン、プロスタグランジンなどが合成・放出される。また、アレルギー性炎症に関係するサイトカイン類も分泌される。これらの結果として、目のかゆみ・充血、くしゃみ、鼻汁、鼻つまりなどの症状が現れる。 目次へもどる 組換えイネで花粉症を緩和できる理論的説明 アレルギーの治療法は、化学伝達物質の作用や合成・放出を抑える薬物や免疫抑制剤を利用した対症療法的な治療法が一般的である。持続的な療法、予防法としては、抗原(アレルゲン)を利用した減感作療法がある。この場合には、アレルゲンそのものの濃度を薄めて、これを週2〜3回注射で、次第に濃度を濃くしながら2〜3年続ける必要がある。しかし、この抗原特異的免疫療法はアナフィラキシーショックといった副作用の可能性や治療の煩わしさから、利用する患者数が少ない。 近年、アレルゲンやアレルゲン由来のT細胞抗原決定基(T細胞エピトープ)を注射や経鼻、経口により投与すると、アレルギー反応が軽減することが報告されている。その機構としては、T細胞応答性の抑制・不応答や、T細胞自身がアポトーシスにより死滅することが示唆されている。 そこで、この現象を利用しT細胞抗原決定基(エピトープ)を用いたペプチド免疫療法が提案されている。この療法は、アレルゲン自体を用いず、T細胞エピトープ部分にIgE抗体やB細胞抗原決定基を含まないようにして投与するもので、アナフィラキシーショックといった副作用がなく、簡便に適用できるという特徴をもっており、第2世代の抗原特異的免疫療法として注目されている。 さらに、経口で抗原(アレルゲン)が投与された場合には、経口免疫寛容現象と呼ばれる、有効な免疫機構が生体には備わっている。例えば、生体にとって異物である食物に対して、多くの場合、害のある免疫反応が起きないのは、この現象によって免疫応答が抑制されるからに他ならない。この現象は、T細胞エピトープを用いた場合にも起きることが実験動物では確かめられている。 スギ花粉アレルギーを引き起こす抗原として、Cry j 1とCry j 2と命名された2種類のスギ花粉中に含まれているタンパク質が主要なアレルゲンとして同定されている。さらに、スギアレルゲン特異的なT細胞によって認識されるT細胞エピトープ(11-19アミノ酸)も詳細に調べられている。そこでスギアレルゲンのT細胞エピトープを毎日食べるコメの中に蓄積させることができれば、経口免疫寛容現象を利用して、“食べることでスギ花粉症の緩和や治療効果の期待できるイネ”を開発できるのはないかというアイデアに基づき、エピトープペプチド集積米の開発に着手した。 コメの中で発現させるT細胞エピトープとして、すでに報告のあるCryj1から3個、Cry j 2から4個のヒト認識エピトープを連結した7連結ペプチドを利用した。同じアレルゲンから複数のエピトープを用いるのは、ヒトの遺伝子型によって認識されるエピトープが異なることから、それぞれのアレルゲンに対して、3個および4個用いることで、エピトープとして認識される確率を高め、治療できるスギ花粉症患者の幅を増やす効果が期待できるからである。 こうした7連続ペプチドは、もともとのCryj1やCryj2と同様90%以上の患者でスギ花粉特異的なT細胞に認識されることが報告されている。またスギ花粉アレルギー特異的なIgE抗体との結合性がないことも明らかになっており、安全に経口免疫寛容を起こすためには、アレルゲンそのものを用いるよりはるかに適切と言える。 目次へもどる 研究の現状 イネの主要な貯蔵タンパク質であるグルテリンの胚乳特異的プロモーターを用いて、7連続ペプチド遺伝子をコメの胚乳中に蓄積させた。集積を高めるため、グルテリンのシグナル配列や小胞体係留シグナル、また7連続ペプチドの人工遺伝子の配列には、イネの貯蔵タンパク質で使用されるコドンを用いて作成するなど工夫を行った。 7連続エピトープペプチドを種子中で発現させたイネでは、最高で1粒あたり約50マイクログラムのペプチドが集積していた。ペプチドはコメの可食部の胚乳中に特異的に発現し、他の組織では発現しなかった。また細胞内では貯蔵タンパク質顆粒中に中心的に局在して集積していた。 このエピトープペプチドの発現・集積量は、マウスにエピトープペプチドを経口投与して免疫寛容を引き起こす量をもとに換算すると、体重60kgのヒトが毎日1合(150g)を食べると想定した場合、十分効果が期待できる量に相当する。 そこで、有効性を調べる試験の一つとして、コメに集積させたエピトープペプチドを抽出し、マウスに対してT細胞増殖反応性を調べた結果、本来のアレルゲンと同様な反応性を示した。さらに7個のエピトープの1個をエピトープとして認識するマウスに、このエピトープ集積米を毎日5,6粒ずつ食べさせ、その後スギアレルゲンを感作させたところ、普通のコメを食べさせたマウスに比べてIgE抗体のレベルが約30%程度に低下することも確認できた。 さらに、通常の炊飯による摂取形態を考慮して、このコメに蓄積されたエピトープペプチドの高温安定性を、100C、20分沸騰水中で処理して調べたところ、安定であることが明らかになった。また、このエピトープペプチドを発現することで、コメに本来含まれているアレルゲンタンパク質発現にも影響がないことも確かめた。 このエピトープペプチド集積米については、消費者の安全性に対する懸念に配慮して、抗生物質耐性遺伝子など選抜マーカー遺伝子を含まない形質転換イネも開発している。 目次へもどる 今後の問題点 エピトープペプチド集積米については、この形質転換体の花粉が飛んで、普通のコメに混入するのではないかという懸念もある。 そこで花粉が周囲に及ぼす影響を評価するため、現在環境安全性の調査を進めている。2002年に、閉鎖系の温室で環境安全性を 確かめ、2003年には非閉鎖系の温室での調査を行っている。この非閉鎖系での環境安全性に問題がなければ、2004年には野 外の隔離圃場で栽培し、周囲への影響を調べる予定である。 「本花粉症緩和米は、2005年に農業生物資源研究所の隔離圃場で試験栽培を行い、生物多様性影響評価(環境に対する安全性を 調べる調査)をすると同時に、約300Kgのコメを収穫した。現在、このコメをマウス、ラット、サル(カニクイザル)等に食べさ せて、食品として利用した場合に影響がないかを調べるための安全性試験を行っている。2006年には、再度、隔離圃場における試験栽培を予定している。」 共同研究機関との連携状況 このエピトープペプチド集積米の開発は現在、生研機構の新事業創出研究プロジェクトの援助で進められている。マーカーフリーの遺伝子組換えイネの開発では、日本製紙と、環境安全性試験では全農との共同研究で進めている。またマウスを用いたエピトープペプチドの免疫系への効果については東京慈恵医大及び東京大学医科研との共同で進めている。 目次へもどる http://www.life-bio.or.jp/topics/topics194.html 第19回談話会「スギ花粉症の食べる免疫療法」レポート 2月17日(金)、談話会が開かれました。慈恵医大斉藤三郎先生が「スギ花粉症の食べる免疫療法」というお話をしてくださいました。これは昨年、「女子大生と考える〜遺伝子組換え食品のなぜ嫌われる」でいただいたお話をバージョンアップしたもので、花粉症に悩まされている人も多く参加しました。
山が大好きな斎藤先生 斎藤先生のお話の概要 山を愛し、研究の道へ
医学部を退学して山小屋で働きたいと思うほど山を愛していたが、未踏峰、ヒマラヤのガネッシュ・ヒマールV(6950メートル)登頂などの経験を通じ、研究は山登りに似ていると思うようになり、卒業後は迷わず研究の道へ。慈恵医大が夏期、槍ヶ岳で開所する診療所で毎年、活動。年間15,000人ほどが泊まる山小屋の隣に診療所がある。最近は日本でも高山病での死亡者が出ている。来年度は高山病の初期兆候をとらえる4,000名のデータをとる予定。スポンサー募集中。 学生アンケートに見る花粉症 慈恵大学423名に花粉症のアンケートをしたら42%が花粉症であることがわかった。 花粉症の人も非花粉症の人でも他のアレルギー疾患を持っている割合が変わらないことから、花粉症は単独のアレルギー疾患と位置づけられる。家族の花粉症の割合を調べると、本人が花粉症の家族では81%、非花粉症では56%と、花粉症は遺伝と関係があるかもしれない。 深刻な花粉症の病態 4−7%のニホンザルが花粉症にかかっているようだ。序列でナンバー4だったモクちゃんは花粉症になってから、地位を保てなかったのか、群れから消えてしまった。 ディーゼルと花粉を与えたマウスの鼻粘膜細胞を染色すると、肥満細胞にIgEがいっぱい結合しているのが観察される。皮内の肥満細胞も同じようにIgEが結合している。 花粉症はどのように発症するか スギ花粉のアレルゲンタンパク質を貪食したマクロファージがヘルパーT細胞への抗原提示細胞となる。T細胞が活性化するとB細胞に働きかけ、B細胞がIgE抗体を作るようになる。作られたIgE抗体は肥満細胞につく(感作の成立)。 さらに花粉が飛んできて、肥満細胞に結合しているIgE抗体をアレルゲン蛋白が架橋すると、肥満細胞は脱顆粒し、花粉症の症状(はなみず、くしゃみなど)がでる。(発症の成立)。 アレルギーを起こす原因によるふたつの流れ ヘルパーT細胞は、その機能から2つのタイプに分けられる。花粉アレルゲンに反応して即時型アレルギーを起こすTh2細胞とウィルスやバクテリアに反応して遅延型過敏症をおこすTh1細胞。Th1とTh2細胞はお互いに抑制する。したがって、Th1を増加させてTh2の流れを抑えると花粉症は発症しない。 アレルギーに対する治療法 薬物療法:主に肥満細胞からのヒスタミンをおさえる。 減感作療法:アレルゲンをごく微量から投与して長時間与えて免疫反応を抑制する治療法。時に激しいアレルギーを起こす恐れがある。このため、微量のアレルゲン投与から治療が開始される。その結果、治療期間が長く、患者にも忍耐が必要。 ペプチド療法:T細胞はペプチド(アミノ酸の連なったもの。タンパク質より長さは短い)を認識するので、アレルゲンを与えなくてもペプチドを使えばいいのではないか。ペプチドは短くて肥満細胞に結合したIgEを架橋できず、副作用が起こる恐れがない。 中和抗体療法:IgE抗体が花粉症の発症に重要なら、IgE抗体を中和するような抗体を投与すれば良いとする治療法。臨床試験がなされているが、中和するために多量の抗体を筋肉注射する必要がある。価格も相当高いらしい。 DNAワクチン療法:バクテリアの非メチル化DNAがTh1の誘導に重要。そこで、このDNAを合成してアレルゲンと共に皮内投与すると、Th1細胞が優位になり結果的にTh2主体の免疫反応が抑制される治療法。 BCG療法:BCGを接種するとTh1が誘導されるために、花粉症の治療として有効かもしれない。また、乳幼児のワクチンとしてBCGワクチンを最初にするとTh1が誘導されるので、Th2主体のIgEを介した即時型アレルギーは起こりにくくなる。 最近のアレルギー増加は、Th1細胞が減少しTh2細胞が優位になったため。清潔になりすぎた環境下では感染症が少ないためにTh1が減少したと考えられている。 減感作療法とペプチド療法の長所と短所の整理 減感作療法(アレルゲンを利用する) 長所;アレルゲンタンパク質そのものが使える 短所:アナフィラキシーの恐れがある 微量から長期間行う必要あり ペプチド療法(アレルゲンの一部のペプチドを利用する) 長所:副反応のおそれなし 短所:対象になるペプチドを見つけるのが大変。ペプチドを合成しなくてはならない。 スギ花粉症ニホンザルでペプチド療法の有効性を確認。しかし、有効なペプチドをすべて使わないと症状まで良くならない。 「食べるワクチン」というアイディアへ ペプチド療法に用いるペプチドを発現させたスギ花粉症緩和米を経口摂取することで花粉症の症状を改善しようとする方法。 経口免疫寛容:経口摂取した蛋白に生体の免疫反応は応答しないことがよく知られている。 うるし職人がうるしを少しずつなめるのはこれを利用している。 イネを利用した理由は、イネの研究は日本が世界一で、量産でき価格も安い。日本人は主食で使っておりそのまま炊けばいいので加工する必要がない。 ペプチドはコメ胚乳のプロテインボディに発現する(1粒に50μg、コメ1gに2.5mg、コメ1合で約500mg発現している) 価格で考えると、精製アレルゲンはかなり高い(Cry j 1: 50μg 28000円、Cry j 2: 25μg 28000円)が、お米では大量に発現できるので安くなる。 コメで発現させたペプチドは花粉症患者用に作製したものであるが、あるマウスのT細胞が認識することがわかった。 そこで、前もってスギ花粉症緩和米をこのマウスに経口摂取させると普通の米を食べさせた群に比較してT細胞の反応が優位に低下していた。さらに、後から治療的に経口摂取させてもIgE抗体の産生が半分以下に低下することが判明した。 スギ花粉症米の供給は、パック型加工コメを医者から供給する形を想定。現在、パック型加工米を動物に投与して安全性試験を行っている。 なお、パック型加工の過程でペプチドの発現量に変化は認められない。 さらに、スギ花粉症緩和米から、ペプチドを取り出すこともできる。コメを使って、試薬作りができることもわかった。 研究の流れ この研究は、16-18年度にアグリバイオのプロジェクトで行なわれている。基礎研究として組換えイネを作成。モデルマウスでの有効性評価、イネでの発現量・有効性の調査が行われた。 17年度: 実験動物を用いた安全性の確認を、マウス、ラット、カニクイザルで実施。 18年度:患者のスクリーニング 少数の健康人対象に安全性確認をする予定。 さらに、少数の患者対象に有効性を確認したうえで、時間はかかるが、多数の患者対象に有効性確認する予定。臨床試験は費用がかかるので大変。 注射は痛いから嫌ですよね 参加者のみなさん 質疑応答 (・は参加者、→はスピーカーの発言) ・たんぱく質はアミノ酸に分解して吸収されるはず。抗原性を保ったまま大きい分子で腸までくるのか。 →タンパクは唾液、胃、腸で分解されることになっているが、実際はペプチドまで分解して体内に入っていく。 ・体に入るペプチドはどの位か? →タンパクにラベルして血液をとりながら、どこまでペプチドがこわれているかを調べられないかと思うが、それは難しいらしい。 ・人によって消化の様子は異なるのではないか →コメはプロテインボディに入っている。米はペプチドの運び屋として適している。 ・斎藤先生らしい研究だと思う。 ・研究と山との関係は→好きな山に行く、好きな研究をする 大きな違いは、研究は人の世界にアピールしないといけない。論文にしたり、発表したりとか。山は自分が満足すればいい。人に批評される必要はない。 食べましたか →科学者には寄生虫のたまごを飲んで実際どのようになったのか身をもって研究することが昔は美談でありましたが、現在は売名行為と思われる。また倫理を軽んじていると非難される。したがって、食べたかどうか私は答えられません。 ・食品として考えるなら、今、用いられている遺伝子組換え食品の評価方法によるものだけでいいのではないか →今、私達が食べている物の中では普通の交配の方が遺伝子まで調べていないので怖いという人もいる 組換えはどんな遺伝子がどこに入っているかがわかる。 ・日本人はわかっているとこわくて、わからないとこわがらない傾向があるような気がする。少数の患者での有効性がわかると、協力するボランティアも多いのではないか。 →第三者機関を通した臨床試験をする予定 ・私たちに恩恵が届くのはいつごろですか →大規模な研究が必要で、結果を見ながら進める ・海外で食品にペプチドをいれたものは →そういうものはない。薬をつくる植物の研究・開発もこれからは進むはず ・どのくらい食べて効果がでるのか →マウスとヒトでは異なるので実際に食べてみないとわからない。マウスでは経口摂取6ヶ月後でも、効果が持続していた。ボランティアにどのくらいの量をどの位の期間与えたらいいのか、今後調べる必要がある。 ペプチドだけを錠剤にすればいいのではないか →コメは安くてたくさんとれるので、コメから大量にとれたらいいという考えを持っている。 寄生虫の藤田先生は花粉症になっていないというが →寄生虫とアレルギーは相関しているという話はある。花粉症は肥満細胞に花粉に対するIgEがついたときに起こるので、寄生虫にかかると肥満細胞を寄生虫のIgEが取り囲んで花粉症のIgEが着く場所がないという考え方ができる。疫学調査によると、養豚業がさかんなところで豚回虫がヒトについていることもある。豚回虫を持っている人といない人の花粉症を見たら、豚回虫に対するIgE抗体価の高い人の方が、花粉症に対するIgE抗体価や花粉症の発症率が高いという結果が出た。また、寄生虫などの感染では非特異的なIgEの抗体価が高くなると、肥満細胞のIgE結合力もあがるために、花粉症特異的IgEが結合するのを抑えるのは困難と思われる。 ・ピロリ菌のある人は花粉症になりにくそうというのは→わからない。 ディーゼルと関係があるのか →ディーゼルと花粉を混ぜてマウスに点鼻すると花粉だけよりはIgE抗体価は高くなる。しかし、関東ロームや火山灰と花粉をまぜてもIgEはあがることが観察されているので、ディーゼルだけが悪いとも言い難い。 ・山の木の伐採をする人がいなくて花粉はふえたのではないか →背景として考えられる環境の変化として、感染症の減少。花粉が増えた、大気汚染などにより環境は悪くなった。 ・花粉症には心理的な要素が働くようだが →アレルギーになるのは気合が足りないという人がいた。私はマウスアレルギーで、気合をいれて動物実験を行ったら少しいいような気がしたことがある。 ・花粉症対策のマスクは、日本赤十字から始まり、プリーツ型やカラステング型があり、いろいろなメーカーが工夫して作っている。 ・花粉暴露室を作ってボランティアに試験をした研究者もいるそうだが →暴露室に入る前の自然花粉暴露のバックグランドが、かなり結果に影響すると私は考えている。花粉症暴露室に入る人がかわいそうな気がしてしまう。動物実験のような気がして。 ・花粉症をお米で治すアイディはどこから →ペプチド療法は注射。食べた方が患者の負担は少ない。組換えコメは企業イメージに影響するといって消極的になるメーカーが多いようだ。 ・今の組換えは生産者サイドのメリットが大きい。消費者へのメリットを訴えるので受け入れられやすいのではないか。 ・これは突破口になると思うのでしっかりステップをふんで、世の中に出してほしい。斎藤先生、期待しています!
http://www.nias.affrc.go.jp/seika/nias/h17/nias02009.html スギ花粉症緩和米のマウスでの有効性確認 [要約] スギ花粉アレルゲンT細胞エピトープを集積する米(スギ花粉症緩和米)を開発した。花粉症モデルマウスへの投与試験の結果、アレルギー反応やくしゃみの回数が抑えられたことから、スギ花粉症緩和米を食べることで、アレルギー症状が緩和されることが実証された。 農業生物資源研究所・新生物資源創出研究グループ・遺伝子操作研究チーム [連 絡 先]029-838-8373 [分 類]技術開発 [キーワード]スギ花粉症、遺伝子組換え、アレルゲン免疫療法、T細胞エピトープ [背景・ねらい] アレルゲン免疫療法は、アレルギーの原因となるアレルゲンやその一部であるT細胞エピトープを投与して、アレルゲンに対する過敏性を抑制する治療法であり、アレルギーの根本的な治療法として期待されている。そこで私たちは、遺伝子組換え技術を利用して、スギ花粉アレルゲンのT細胞エピトープを集積させた米(スギ花粉症緩和米)を開発した。さらに、スギ花粉症のモデルマウスを用いて、スギ花粉症緩和米の有効性を調査した。 [成果の内容・特徴] スギ花粉症緩和米を開発するため、スギ花粉アレルゲンT細胞エピトープをイネ種子の中で作らせる発現プラスミドを構築した(図1)。 本研究で開発したスギ花粉症緩和米の有効性を検討するため、花粉症モデルマウスへの経口投与実験を計画、実施した(図2)。 遺伝子を導入していない普通の米を食べたマウスと比較して、スギ花粉症緩和米を食べたマウスでは、アレルギー反応の指標となるT細胞の反応性やIgE抗体の産生量が抑制された(図3)。 さらに、スギ花粉症の症状に対する効果を調べるため、マウスのくしゃみの回数を測定したところ、スギ花粉症緩和米を食べたマウスではくしゃみの回数が抑制された(図4)。この結果から、スギ花粉症緩和米を経口投与することにより、アレルギー症状が緩和されることが明らかになった [成果の活用上の留意点・波及効果・今後の展望等] 今後、スギ花粉症緩和米の実用化を目指して、生物多様性への影響評価や食品としての安全性を確かめる。 T細胞エピトープを米の中で生産できることから、ご飯を食べて花粉症を緩和するという極めて簡便な治療法として活用できる。 消費者へ利益を提供する実用的組換え作物の具体例として、その利点や可能性を社会にアピールするという波及効果が期待される。 [具体的データ] 図1:発現プラスミドの構造 発現プラスミドの構造 図2:投与実験スケジュール 投与実験スケジュール 図3:IgE 抗体産生抑制効果 図4:くしゃみ抑制効果 IgE 抗体産生抑制効果 くしゃみ抑制効果 [その他] 研究課題名 :遺伝子組換えにより健康機能性を増強した米の作出 予算区分 :アグリバイオ 中期計画課題コード:B131-6 研究期間 :16〜20年度 研究担当者 :高岩文雄、高木英典、楊麗軍 発表論文等 :Takagi H, Hiroi T, Yang L, Tada Y, Yuki Y, Takamura K, Ishimitsu R, Kawauchi H, Kiyono H, Takaiwa F (2005) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102:17525-17530. |