01. 2013年11月04日 22:17:22
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JBpress>日本再生>今週のJBpress [今週のJBpress] お年寄りには席を譲らない、優先席に座らせない 健康的な老齢社会のために(1):バリアフリーも大間違い 2013年11月03日(Sun) 川嶋 諭 統合医療というちょっと聞き慣れない医療が注目を集めている。この治療により末期がんで余命数カ月と宣告された患者が次第に快方に向かい、ついにはがん細胞がきれいさっぱりなくなってしまったという例がいくつも出てきているのだ。死に直面して生きることの意味を知る 今週のランキング 順位 タイトル 1 車に乗らなくなった米国人 2 中国が尖閣諸島を絶対にあきらめない理由 3 プア〜な韓国人たち、ただいま急増中 4 違法行為がまかり通る日本の労働事情 5 アップルはなぜソフトウエアを無料化したのか? 6 切り札は日本の潜水艦技術、中国の覇権主義を封じ込める妙手とは 7 豪華なJRタワーとお粗末な線路保守、JR北海道・経営陣の勘違いとは 8 機械式駐車場の撤去が始まった熱海、その理由 9 サムスンが利益率50%の子会社を売却するワケ 10 米国の最先端研究が明らかにしたカロリーゼロの恐怖 11 「イデオロギー」の力が消えた中国社会 12 大人の学力テストに表れたドイツの隔靴掻痒 13 中国など忘れ、ジンバブエやメキシコを見よ 14 中国が世界の人権弾圧を監視する不条理 15 福祉国家は死んだのか 16 終息に向かう「地球温暖化」騒動 17 韓国人の愛国心をくすぐる詐欺が新登場 18 ユーロ圏:もう1つの欧州債務危機 19 馬英九総統を悩ます「現状維持」の足か 20 「コメをやめて野菜を作れ」は無茶な要求 今回は日本におけるそうした統合医療の草分け的存在であり、患者さんにとっては“奇跡”を次々と生み出している東京女子医大の川嶋朗准教授にお話を聞く機会があった。 川嶋准教授は腎臓病が専門で、米国のハーバード大学に留学経験もある。最近、『医者が教える 人が死ぬときに後悔する 34のリスト』(アスコム、税抜き1100円)を出版して話題になった。 問 早速本題に入ります。先生の提唱されているクオリティ・オブ・デス(QOD)という考え方は面白いですね。クオリティー・オブ・ライフ(QOL)はよく言われてきましたが、死に方の質を上げようというのはとても斬新です。 人間は死を意識して初めて生きていることの大切さを本当の意味で知ることができ、生きている間の時をムダにせず充実した生活を送れるようになる・・・。 この発想が先生の中で生まれたきっかけは何ですか。末期がんの患者さんたちと向き合われてきた実体験ですよね。 答 そうです。私のところには末期がんなどほかの病院から見放された患者さんがたくさんやって来ます。そういう患者さんたちに接していくうち、人間は死を意識したときに後悔がたくさんあることを知ったのです。 例えば「もっと生活習慣を変えておけばよかった」とか、「人を憎んだり恨んだりしなければよかった」、「しり込みせず自分の夢に挑戦しておけばよかった」などです。 私たち人間は何もないときには死を意識しません。だから時間はいくらでもあるように勘違いしてしまう。でも、いざ死というものが目の前に迫ってくると、人生の本当の意味を考えるようになるんです。 問 そのときはもう取り返しがつかない状況になってしまっている。人間とは何とも悲しい存在ですね。 答 私は終末期医療の専門家ではありません。患者さんに穏やかな死を迎えてもらうために相談に乗っているのではないんです。患者さんが死と直面したときに出てくる後悔。ここに治療のヒントがあるからなのです。 死と直面することで治療法が見える 『人が死ぬときに後悔する34のリスト』(川嶋朗・東京女子医大准教授著 つまり、病気になる原因がそこにあるんです。暴飲暴食などは分かりやすいですよね。体に悪いとは知りながら続けてしまう。そして後悔する。あ〜、やめておけばよかったと。あるいは、誰かを深く恨んでしまった。
そうしたことが原因になって大病を発症してしまっているケースが実に多いのです。だったら、病気の原因を取り除いてあげれば治る可能性が出てくる。 問 末期がんなどでほかの病院から見放されてしまった患者さんなどでも希望は持てるのでしょうか。 答 はい。ほかの病院で余命3カ月と宣告された患者さんが、私のクリニックで治療を施したら、がんがみるみる小さくなって元気になったというケースは少なくありません。 患者さんも死と向き合って、生きようと必死になる。そこに病気の原因を取り除く治療を施すと効果が大きいんですね。ほかの病院で「助からない」と言われた患者さんもどんどん回復していきます。 日本では医者は神様のように思われているかもしりませんが、実は医者にできることは限られています。医学はどんどん進歩して新しい治療法、新薬が次々と開発されているけれども、それらは対処療法に過ぎません。一時的に病気を抑え込むのが精一杯なのです。 これだけ医療が進歩してきても、根本的な原因が分かっている病気はほとんどありません。ですから、医者にかかっても根本治療はできないわけです。どんなに名医でも原因が分からないことは治せません。 検査技術も著しく進歩しているので、「病院で検査を受ければ病気の原因はすぐ分かる」と考えている人が多いようですが、全くの誤解です。検査して分かるのは病気の症状を起こしている直接原因くらいで、その病気がどこから来ているのかはほとんど分かっていないのです。 問 末期がんや医者がさじを投げた患者さんが、奇跡的に回復したという話は聞いたことがありますが、そういうことなんですね。たとえ末期がんでも根本的な治療ができれば回復する見込みがある。 答 患者さんが死に向き合ったとき、よく言うのが、「自分はまだ死にたくない」です。で、私はそういう患者さんに聞くんですよ。「なぜ死にたくないのか」と。 そうすると「まだ両親が健在で先には逝けない」とか「まだ成人していない子供のことが心配だ」などと理由を話し始めます。自分で生きる理由がはっきり分かると気持ちが前向きになってきます。 患者が前向きにならなければ治療の効果が上がらない 川嶋朗・東京女子医大准教授 両親のため、子供のため、1日でも長く生きよう。そうした前向きな気持ちはホルモンを刺激して体に良い環境になってきます。
どんな治療をするにも患者さんが後ろ向きでは効果が期待できません。逆に前向きになれば、どんどん変わってくる。私の経験に裏打ちされた真理です。 問 ということは、少し話が脱線しますが、深刻な病気に悩んでいない人でも、日頃から自分の死を考えておくといいということですね。 死と向き合うことで、自分の生きる意味が明確になり、それが明確になれば生きるための努力をするようになる。 答 そうです。昔と違って核家族化が進んだ現在は、おじいちゃんやおばあちゃん、おじさんやおばさんなど親戚の死に直面することが少なくなりました。親戚の死であってもそれを間近に経験すると、死について考えるものです。 それに、江戸時代までは武士は切腹する文化があったでしょう。だから死は日常生活の中に同居していた。死を受け入れながら生きてきたのです。 京都大学のカール・ベッカー教授が日本人の意識調査をしたことがあります。それによると、1970年頃を境に日本人の死に対する考え方が大きく変わってきたそうです。70年頃までは日本人は世界でも有数の死を受け入れる民族だった。 ところがそれ以降は、死から逃れ、死を考えない生活スタイルに変わってしまったというんですね。 答 ベッカー教授は元々人間科学的な研究をされていて、ハワイにいた時に日本人の死に方に非常に興味を持ったようです。ある時、日本人が臨終の前にいろいろな人を呼んで自分の言いたいことを言い、さぁこれで全部終わりというところで、きれいに死んでいったというんです。 「日本という国はこういうふうに死を受け入れている国なのか、凄いぞ日本」と思ったようです。そして、日本に来て京大で教鞭を取るようになるわけですが、2000年頃に同じ調査をしてみたらびっくり。 今度は世界でも4番目くらいに死を受け入れない民族になっていたというんです。 死が良くないと言う医者が悪い 問 確かに、かつての日本には辞世の句があって、それが象徴しているように死を受け入れていました。しかし、いまはそういう文化は全くありません。どうしてこのような急激な変化が起きてしまったのでしょう。核家族化だけでは説明がつきませんね。 答 医者のせいだと思いますよ。悪いのは。医者はとにかく死はいけないもの。生きていてなんぼのものって、ずっと言い続けてきました。死ぬのは良くない、良くない、良くないで生かし続けてきたんです。 そして、日本人は世界でも稀に見る医者に丸投げの国でしょう。医者の言うことは正しいと頭から信じて疑わない。だから、医者が死が良くないと言えば、国民がみな信じてしまう。 おまけに医者の言うことを聞いていれば、寿命は確かに伸びた。日本の平均寿命は世界でも1、2位を争うようになっているわけですから、医者に対する信頼はますます厚くなった。 平均寿命が50歳くらいだったらそれでも良かったんですよ。しかし、長く生きるようになると、医者の手に負えないことが実は山のように出てくるんです。例えば、歳を取って膝が痛いとか肩が痛いとか・・・。 問 お医者さんではどうにもならないことが増えてきたのに頼りっきりになることで問題が出てきたわけですね。長く生きるなら生活習慣を変えるとか運動するとか自分で解決しなければならないのに。 答 そうです。そして悪いことに文明がお年寄りを甘やかすようになった。体を使わずに楽な方へ楽な方へと。エアコンもそうだし、乗り物でもどんどん楽にしていく。エレベーターやエスカレーター・・・。 「お年寄りを労わりましょう。電車では席を譲りましょう」って当たり前のように言うでしょう。しかし、ちょっと待ってくださいね。 健康で長生きしたいなら優先席に座るな お年寄りが健康に長生きしたいなら、体を使わなければだめです。楽ばかりしていると運動機能が低下して、何かの拍子に寝たきりになってしまう危険性が高くなる。それで次は介護ですか? 違うでしょう。お年寄りを長く生かしたいなら、健康に生かさなければなりません。だったら、歩いてもらわなければならないし、電車では立ってもらうべきなんです。 電車の優先席があるでしょう。優先席ではお年寄りに席を譲りましょうというのは、私は反対です。むしろお年寄りに席を譲らない運動をしたいと思っているんですよ。 問 それ面白いですね! 答 ですよね。だってお年寄りを生かすんでしょう。住宅でも同じことが言えます。最近はバリアフリーを強調する住宅が増えてきました。お年寄りに優しいからと。しかし、ちょっと待ってくださいね。本当ですか? 日頃からバリアがほとんどない生活を続けていたら、危険を察知する能力が退化してしまうし、脳に刺激が少なくなってぼけるのが早まる危険性があります。 ですから、住宅でもバリアフリーではなくて積極的にバリアは作って、ただし万が一転んでも怪我はしにくい住宅にするのが正解だと思うのです。 歳を取ってくると、だんだんに動くのが億劫になる。だから無理やりでも歩いたり運動したりするような環境を作ってあげないと足腰が弱ってしまうんです。まじめに、優先席には健康なお年寄りは座らないでください、というくらいで丁度いいんです。 問 私の知り合いの経営者が、定年後は多くの人が地方に移住して農業をできるような仕組みを作りたいとまじめに考えています。農業は体力が必要ですから、自然と健康になり、医療費が削減できる。 また良い作物を作ろうと思ったら頭もフル回転させなければならないから、ぼけの防止にもなる。ただし、そういう町には専門のお医者さんに来てもらって、予防医療を徹底してもらう。そんな夢を実現しようと考えています。 答 それは良いアイデアだと思いますよ。病気は医者に治してもらうものでなく、自分で治すものです。医者はそれを助けるだけ。日本はどうもそこのところに大きな誤解があるようです。 お医者さんに行けば、何か魔法の粉をかけてもらって、病気が治ってしまう。ちょっと大げさに言えばこんなイメージでしょうか。でも当たらずとも遠からずですよ。再三言っているように、根本原因が分からなければ、どんなに名医だって病気を治すことはできません。 できるのは対処療法だけ。それでは症状が一時的に緩和しても、病気は治らない。 また、日本では西洋医学に対して必要以上の期待があるようですが、それも間違いです。私は30年間、腎臓内科医をやっていますが、この30年間という長い年月の間に腎臓病の治療方法はほとんど変わっていないのです。 ステロイドホルモンや免疫抑制剤の投与が中心で、症状を緩和するだけです。 また高血圧症だって、根本を取り除く治療は行われていない。薬で血圧をコントロールしているだけでしょう。これも対処療法です。 こうした対処療法は確かに進歩しています。それによって延命もできる。でも間違わないでくださいね。根本的な解決は何もできていないのです。 逆に、世界的にも優れた国民皆保険制度によって、誰もが進歩した治療が受けられることで、「病院に行けば何とかしてくれる」という気持ちが定着してしまっていることが問題なのです。 その結果、延命治療延々と続けられ、寝たきりの患者さんがたくさん生まれてしまう。 問 日本は簡単に比較的高度な治療が受けられるから、そこに安心と期待が集中してしまい、病気は自分で治すという基本が疎かになって、お医者さん頼みになってしまうというわけですね。 米国でバラク・オバマ大統領が苦労しているのは、これと正反対のことですよね。日本には世界に誇れる保険制度があるけれども、寿命が延びたことで弊害の方が大きくなってきたということでしょうか。 人間の寿命が延びて西洋医学だけでは解決が難しくなった 答 西洋医学は急性疾患や感染症などの原因究明と治療方法の開発によって発展してきました。その半面、生活習慣病などの慢性疾患や原因不明の病気には治療方法が見つからないという例が少なくありません。 先進国では寿命が延びた結果、実は生活習慣病など治療方法が見つからない疾病が大きな問題となっているわけです。ですから、現代の病気は医者に頼っているだけでは解決できないのです。 欧米では、伝統的な西洋医学におけるこのような欠点を補うために、最近は相補・代替医療が盛んに行われるようになってきました。相補・代替医療とは、人間が本来持っている自然治癒力を使って治療しようという方法です。 問 川嶋先生は、米国に渡ってハーバード大学医学部に留学されています。西洋医学の粋を身につけてこられたわけですが、その経験から逆に西洋医学だけに頼るのは危険だと思われたのですね。 答 ええ。私が医者になったときは西洋医学の全盛期でした。だから本場の米国へ行ってもっと勉強してやろうと思ったのです。しかし、学べば学ぶほどその限界が見えてきました。そこで、相補・代替医療に注目し、その勉強を始めたのです。 例えば、中国や日本には古来から漢方がありますよね。その漢方では「冷え」の問題を重視しています。しかし、西洋医学には「冷え」の概念がないのです。 漢方では冷えは万病のもととされています。それにはちゃんと理由があって、冷えると人間の体の中にある様々な酵素の働きが鈍くなるのです。私たちの体の中にある酵素は深部体温が37〜38度で最も活発になります。 ところが、1度温度が下がると約半分にまで活動を抑えてしまうことすらあるのです。これらの酵素は脳内伝達物質や各種ホルモンの合成に不可欠です。つまり、体が冷えるとがんやアルツハイマーにかかりやすい体質になってしまうということです。 例えば漢方のこのような考え方を取り入れて、西洋医学とともに総合的に患者さんを診察、治療することができれば、西洋医学だけでは手に負えなかった病気も治る可能性が高くなるでしょう。いいとこどりをすればよいわけで、これを統合医療と言います。 問 西洋医学で手に負えなかった末期がんの患者さんでも、治る可能性があるわけですね。そして、そうした治療が効果を上げるためには、西洋医学、そしてお医者さんに頼りっきりではいけない。 それには、日本人がかつて持っていた死を受け入れることから始めるべきだというわけですね。どうもありがとうございました。 次回は、川嶋先生のご専門である腎臓病にまつわる日本の医療の問題点を中心にお聞きしたいと思います。 (つづく) http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/39079
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