01. 2013年9月19日 01:25:17
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【第69講】 2013年9月19日 三谷宏治 [K.I.T.虎ノ門大学院主任教授] ネット依存症とパチンコ依存症 〜プチネット断食のススメ[5] ネット依存症、大人は900万人? 2013年8月1日に、厚生労働省研究班が出した調査結果は、世間に大きな波紋を呼び起こしました。「インターネット依存症の中高生が全国で約52万人(*1)」との推定を示したからです。比率では、男子の6.4%、女子の9.9%が「ネット依存症の可能性」とされました。 その判定方法は単純なもの(*2)で、以下の8問に「はい」「いいえ」で答えるもの。まずはみなさんもやってみてください。
「はい」は、いくつありましたか? 5問以上「はい」なら、あなたも「ネット依存症」です。 「そんなことはない!」と思いますか? 「そうだなあ」と感じますか? 中高生には「睡眠時間」や「最近1ヵ月間の午前中の体調」も聞いています。すると「ネット依存症」とされた子どもたちの43%が「睡眠時間6時間未満」で、体調が「常に悪かった」「しばしば悪かった」との回答も24%に上りました。いずれも、そうでない子どもたちと比べて、1.6〜2.7倍の高率でした。 みなさんはどうですか? 睡眠時間はとれていますか。午前中の体調は維持できていますか?
おそらくこの基準でいくなら、大人の相当数が「ネット依存症」と判定されるでしょう。それが仮に中高生と同じ程度で10%程度だとしても、母数が巨大なので、実数は52万人どころではありません。900万人近く(*3)に達するでしょう。 大人のほうがよほど、問題です。しかも、子どもの頃からの耐性がない分、罹ると重症です。 *1 厚生労働省の推計は51.8万人。それを産経ニュースが「約51万人」との見出しで報じたために、ネットには「51万人」の数字が踊った。本文を読めば約52万人であることはわかったはずだが…。 *2 アメリカのKimberly Young博士によって開発された「インターネット依存度テスト」を一部改変したもの。久里浜医療センターのHP上で簡単に自己診断できる。ちなみに私は40点。 *3 厚生労働省による2008年の推計では、成人のうち271万人が「インターネット依存傾向にある」とされた。 パチンコ依存症から学べること 大人の病的依存症として有名なのは、薬物とアルコールでしょう。国内では約10〜20万人が薬物依存症、50〜80万人がアルコール依存症で苦しんでいます。 そういった深刻な、しかし、比較的発見しやすいものと違い、「ギャンブル依存症」は、本人の自覚もなく、周りも気づきにくいものです。国内で男性480万人、女性80万人の計560万人がそうだと厚生労働省は推計しています(2009年発表)。 そしてその多くが「パチンコ・パチスロ(以下パチンコ)」依存症なのです。特に女性の場合はギャンブル依存を自覚するヒトの94%が、パチンコをその対象として挙げています(NHK『あさイチ』調べ)。それはパチンコが、他の賭博に比べて敷居が低いからです。 ギャンブルとしてのパチンコの特徴は、「いつでもできる」「どこでもできる(*4)」「手軽にできる」「考えなくてできる」ことだと言われています。まるでスマートフォンそのものです。そして、多くの大人たちが、主婦が、のめり込みます。 では、そのパチンコ依存症からの脱出策はあるのでしょうか? 対処法はまず「自覚」から始まります。自分は依存症なんだ。単なるカモなんだ。パチンコやめるぞ!と思うことです。インターネット依存症も、同じ。自分がインターネット依存症なのかどうか、ぜひ、こちらのサイトから、自己診断を。 40点を超えていたら、要注意です。 *4 過去20年減少を続けているが、なお1万2000店を数える。店舗の大型化が進んで、マシンの設置台数自体は横ばい。
病気なんだと割り切る でも依存症を、意志の力でどうにかなると思わないこと。どの依存症でもそうですが、依存者はみな「いつでもやめられる」と思っています。残念ながら自らの意志は、パチンコやインターネットという魔力の前では無力なのです。 ちゃんと「この依存症は病気なんだ」「ちゃんと対策を打たないと自分の身や家族の人生を危うくするのだ」と、認めること。そこからはじめて、本格的な対策(治療)が取れることになります。 強度のパチンコ依存症だった「ひこたま」さんが実践した対策は、 ・物理的な制限を設ける:財布に3000円しか入れない。クレジットカード もキャッシング枠はゼロにする。 ・仲間による制限を設ける:ギャンブラーズ・アノニマス(GA)などの同 志の助けを借りる。会自体は「言いっぱなし・聞きっぱなし」が原則。 ・ほかに楽しみをつくる:欲しいものリストをつくる(1万円以下)。 ・緊急退避策をつくる:どうしても行きそうになったら、欲しいものリスト のモノを即座に買う(ことでパチンコ代を使ってしまう)。 というものでした。なかなか強力です。 これでもダメなら入院治療しかありません。そのインターネット版が「1週間のネット断食合宿」なのでしょう。しかし政府が打ち出してネット住民たちの総スカンを食っていた「ネット断食合宿」は、あくまで(人格形成期にある)青少年向けのもの。 もう育ってしまった社会人は、自己責任。自分でやるしかないのです。 対策を決めて、仲間をつくってやってみる しかしながら、実際にはハードな「ネット断食合宿」や「完全脱却を誓うコミュニティ」形式のものはハードルが高く、リバウンドや脱落がほとんど、とも指摘されています。だから、「プチネット断食」なのです。 プチなので、ネットを断つのは週末2日間だけでも構いません。その間も、朝夕のメールチェックは許しましょう。でも、四六時中、スマートフォンを触り続けたり、ネットサーフィンをしたりするのはNGです。 病気の治療なのですから、ちょっとマジメにやりましょう。 ・物理的な制限を設ける:週に2日は電話としてだけ使う。その他にも家に いるときには持ち歩かず充電場所に置いたり、散歩のとき家に置いたりす る。メールやメッセージのpushをしない。 ・仲間による制限を設ける:仲間にプチネット断食を宣言する。一緒にやる 仲間をつくる。 ・ほかに楽しみをつくる:手軽に出来る趣味を増やす。読書の復活でも可。 電車の中でSNSをやるくらいなら音楽を聴く。 ・緊急退避策をつくる:面白そうなテレビ番組を撮り貯めておく。どうして もネットが気になったら、そのビデオを見てヒマをなくす。 そんな対策をちゃんと決めて、自分がしっかりできるかどうか、チェック(や応援)役を家族や友人に頼むのです。せっかくだから、子どもと一緒にやるのも、いいでしょう。 子どもたちは、大人のことをしっかり見ています。ネットに負けない・依存しない姿を大人自ら見せることこそが、子どもたちの将来への力とつながるのです。 参考情報 「『ネット断ち』で生活変わるか 記者が2日間挑戦」日本経済新聞2013.09.07 「続「増えるギャンブル依存症「四国新聞「追跡シリーズ」2008.09.28 「ネット依存のスクリーニングテスト」久里浜医療センター 「『ネット依存症』は不安な気持ちが根底に 誰かとつながりたい…」産経新聞 2013.08.22 「厚労省推計でネット依存の中高生国内に51万人、判定するとあなたも?」高橋暁子のソーシャルメディア教室 2013.08.20 「パチンコをやめる方法」パチンコ依存症を治したい 「主婦がはまる!? ギャンブル依存」NHK『あさイチ』2011.11.22 お知らせ 『経営戦略全史』、5刷、3万部突破です! academyhillsのサイトでは先日行った出版記念講演内容のほぼ全文が、順次掲載されています。『三谷宏治が語る、経営戦略の100年〜経営の本質はつながりとストーリーから見えてくる』をご覧ください。また、『親と子の「伝える技術」』のセミナーは「うちの近くでやって!」のご要望あれば、ぜひHPまでお寄せください。Official Websiteの「お問い合わせ」で受け付けています。 http://diamond.jp/articles/print/41899
【第167回】 2013年9月19日 池上正樹 [ジャーナリスト] “大人の発達障害”の人が依存症に陥るケースも 一筋縄ではいかない依存から脱却する方法 大人の発達障害の人たちの中にも、強迫症状や依存症に悩む人たちが少なくない。 そんな人たちが「脱ひきこもり」して、自ら生活する術を身に付けるために、周囲はどう支援していけばいいのか。 そうした発達障害の支援の在り方を考える、9月13日、東京都世田谷区主催の『発達障害の支援のあり方を考えるシンポジウム』が、区内の成城ホールで開かれた。 その第1部「脱ひきこもり!ゆるサバイバル術」のパネルディスカッションの中で、こうした話題が取り上げられた。 「脱ひきこもり」には “褒める”がカギ 今回パネリストを務めた発達障害当事者の家族であり、NPO法人「東京都自閉症協会」理事長の今井忠氏が、この問題に取り組み始めたきっかけは、長い間、製造業の会社に勤めていたことだ。 在職中、管理職としてマネジメントの任に就いたとたん、期待した行動がとれなくなる人たちが周囲に一定程度いた。そこで、発達障害のことを勉強し、いかに雇用管理していくかを模索してきた。 今井氏は、「発達障害の診断名がどうとかいうことよりも、発達障害の人に関わってきたことで得られた、人間をどの角度から見ていくのかの人間観のほうが有益」だとして、こう提案する。 「こういう行動をしてもらいたいと周りが思っていることと違う行動をとったとき、本人なりの理由がある。外的な状況に対して、本人がどう捉え、どういうアクションをとるのかの相互関係を見ていくことが本人を活かしていくうえで有効なのではないか。ちょっと変わってると思っても、そうかもしれないと思って対応して、損することはない」 その後、会場からパネリストへ「自己肯定感を高めながら、サバイバル術としてのスキルをどう身に付ければいいでしょうか?」という質問が紹介された。今回の「脱ひきこもり!ゆるサバイバル術」のメインテーマだ。 パネリストの都立小児総合医療センター副理事長の田中哲氏が、こう答えた。 「子どもの場合、いいところを見つけて褒める。大人の場合でも同じなんだと思う。成人は、自分を自分で褒めることができる。自分のいいところを見つけて、自分で自分にご褒美を出す。あるいは、自分のいいところを人にアピールして、自慢しているみたいでも、人に認めてもらえるようになるということは、肯定感を高めながら、サバイバルしていくことにつながっていくのではないか」 ただの依存症とは違う 発達障害の人たちの依存症状 続いて、発達障害かもしれないものの、そのことに気づいていない人たちに、どのようにアプローチしたらいいのか。発達障害当事者で、都内の社団法人『発達・精神サポートネットワークNecco』のIT広報アドバイザーを務めている山本純一郎氏は、こう思いを述べた。 「決めつけてしまうのは、予見の信用をなくしてしまう。あるべき姿にとらわれ過ぎてしまうと思うが、生きていて必ず意味がある。相手のいいところは、探せばきっと見つかる。自己評価の基準は曖昧で、大抵低めになっている。根拠もなく、やみくもに褒められると、かえって嫌な気分になる。お互いに腑に落ちる部分が、言葉以外の手段を使ってでもコミュニケーションをとっていけるよう、向き合ってほしい」 興味深いのは「アルコールやギャンブルなどの依存のある人に、どう支援したらよろしいでしょうか?」という質問だ。 今井氏は、毎月開く定例会の中でも、必ずギャンブルやアルコールなどの依存の問題が出てくるものの、発達障害との関係については、これから取り組まなければいけない手探りの状況だとして、こう指摘する。 「依存症については、基本的に『底つき体験』をさせて、そこから這い上がってくるというグループワークの確立されたプログラムはあるものの、この方法は発達系の人たちにはまったく通用しない。 何かにハマる。何かをずっと追究せずにはいられなくなるという性質は、そう簡単に変わるものではないので、その性質をいいことに使う。向かっている方向をやめさせようとすると、むしろ負の強化になって、どんどん意識がいくようになり、手放せなくなる。だから、それとは違う別の道として、それにハマっている限りは悪くない、社会的にも両立するような別のものにハメていく戦略のほうがいいのではないかと言われています」 今井氏は、この分野を追いかけて実践している人に接触することを勧める。 なぜ“大人の発達障害”の人が 依存へ陥ってしまうのか 「大人の発達障害の方の中にも依存の方が何人かいる」 こう指摘するのは、司会の社団法人「正夢の会」(東京都稲城市)理事長の市川宏伸氏。 「なぜ依存に陥るのかを考えると、自己イメージが悪いからなんです。だから、自己イメージをどのように変えられるか。私の経験で言うと、自閉症と診断されているかもしれないけど、ADHDも重なっている人が多い。そういう方に、ADHDの治療薬が出ているので使わせてもらうと、パチンコ依存症の人が変わることもあるんです」 これに対して、今井氏がこう説明する。 「お金を使い過ぎる依存症の場合、就労してお金が入っても、それ以上に出費のほうが多くなって、生活の質が悪くなっていく人がいるんです。だから、就労支援だけやっても、生活の部分に依存症があると、なかなか成功しないんです」 会場から「特性を持った人に、親として、どのように接するのがいいのでしょうか?」という質問も寄せられた。答えたのは、都内で発達障害当事者のスタッフだけによる「Necco cafe」を運営する「Necco」理事長の金子磨矢子さんだ。 「うちの子どもの場合、6〜7歳の頃から、ひどい強迫神経症になって、1日中お風呂に入っていて、日常生活を送れない状態になったんです。そのときは、腫れ物に触るように接しなさいと言われて…。褒めるのがいいと思うんですが、褒め過ぎるとつけあがる。指摘すると、ちょっと本当のことを言われただけで、カチンときてしまう。どうしてうちの子は人と違うんだろうって、どうしてこれができないの?と、ついつい言ってしまうことがあった。 ただ、発達障害の診断を受けてからは、私自身、発達障害のことに気がついてあげられなかったことがわかったので、本当に何回も謝って…。いまでも、私のことをわかってくれないと言いますけど、理解というのは、その人に成り変わることができない。自分のこともよくわからなくて、上手く説明できなかった。子どもについては、理解しようと努力しているということしか言えない」 発達障害の「アスペルガー」や「ADHD」の診断について、市川氏は、今年5月、米国の精神医学会の診断基準であるDSMが改訂され、12月頃に日本語版が出るだろうと紹介。新しい分類では、これまで「アスペルガー」などと診断されていたすべてを「自閉症スペクトラム障害」と診断することになる見込みだという。 無理をしないで、みんなで一緒にできることを考えていく。これからの時代は、当事者も周りの人たちも、そんな意識をもつことが大事なんだと気づかせてくれる場だった。 この記事や引きこもり問題に関する情報や感想をお持ちの方は、下記までお寄せください。 teamikegami@gmail.com(送信の際は「@」を半角の「@」に変換してお送りください) ☆―告知―☆ ※池上正樹 新刊のご案内※ 『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書) 9月18日発売予定 価格 780円(税別) 生きづらさの正体とは…。 ●「ひきこもり大学」に関するお問い合わせが多いので、フォームをつくりました。話をしてみたい、話を聞いてみたい、アイデアを提供したい…など、こちらからお願いします。 http://katoyori.blogspot.jp/2013/09/hikikomoridaigakuform.html |