01. 2013年8月20日 05:32:44
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JBpress>海外>USA [USA] よれよれの老人が筋骨隆々に! 米野球界スキャンダルが暴いたアンチエイジングの実態 2013年08月20日(Tue) 石 紀美子 7月7月、米大リーグの4人の野球選手が、50試合から最長211試合の出場停止処分を受けた。 211試合出場停止という最も重い処分を受けたのは、ニューヨーク・ヤンキースのスーパースター、アレックス・ロドリゲス選手。米野球史に残る名プレイヤーと言われた彼の名声はあっという間に地に落ちた。 他にもミルウォーキー・ブルーワーズのライアン・ブラウン外野手や3人のオールスタープレイヤーが処分を受けた。 理由は禁止薬物を使用していた疑いが濃厚だということだ。運動能力を向上させるための薬物で、男性ホルモンの一種、「テストステロン」と「ヒト成長ホルモン(HGH)」の2種類が今回のメジャーリーグによる調査の対象禁止薬物だった。 一斉処分となったきっかけは、フロリダ州にあるアンチエイジング専門のクリニックに捜査が入ったことだった。アンチエイジングの看板を掲げながら、裏でスポーツ選手にHGHなどの運動能力向上の薬物を不法に与えているという内部告発があったのだ。 この調査で芋づる式に超有名選手の名前が出たという。野球ファンの間に、動揺、失望、怒りが嵐のように巻き起こったことは日本でも報道された通りだ。 しかし、このスキャンダルでにわかに予想外の注目を浴びたのは、全国に急増しているアンチエイジングクリニックの存在と、その利用者たちだ。 スポーツ界では禁止されているが、一般人は合法的に利用できるテストステロンやHGHは、いつまでも若々しくいたい老人たちに「魔法の若返り薬」と呼ばれており、これらを利用した若返りホルモン治療の市場は、毎年3倍とも言われるほどの急成長を遂げている。 爆発的な成長が見込まれる米国アンチエイジング市場 70代、80代という年齢の男性がホルモン治療を受け、首から上は老人だが体は20代のボディビルダーのように筋骨隆々となった「スーパー老人」が現れている。野球界スキャンダルによって広く知られるようになった、老いつつあるベビーブーマー世代の希望の星だ。 テストステロンを服用すると、筋肉が増量し、記憶力、集中力がアップし、性欲が増し、活力が出てくるとされている。またHGHは、筋肉増強作用と体重減少効果があるとされている。 米国の著名なスーパー老人、ジェフリー・ライフ医師(74歳)のサイト。テストステロンを用いたアンチエイジング処方を行っている 拡大画像表示 アンチエイジング治療には他にもいろいろあるが、この2つを使ったホルモン治療が最もポピュラーだ。実際の効果については、医学界の意見は割れている。副作用もあると言われているが、利用している年配の人たちは、副作用で病気になることよりも、死ぬ前にもう一花咲かせることの方に価値を置いている。
実際の病気の治療以外では、プロのボディビルダーや、かつて禁止されるまではスポーツ選手が使っていた。健康な一般人に広まったのはつい最近のことだ。バイアグラやステロイドはもう古いということらしい。 テストステロン系の薬だけでも、2011年にはおよそ1600億円の売り上げがあったという(IMS Health/Bloomberg Data)。あるマーケット調査会社は、2015年にはアンチエイジング関係の市場は11兆4000億円ほどになると予想している(Global Industry Analysts)。主力消費者は、ベビーブーマー世代だ。 若返りホルモン治療は、ただ薬を使うだけでなく、定期的な運動ときちんとした栄養管理をしないと、目に見えた効果が出にくい。治療を受けているだけでなく、自分も頑張っているという気分高揚が、努力が好きなベビーブーマー世代に受け、さらに若返りの相乗効果となっているという。 老人差別が根強い米国 市場急拡大の背景には、寿命が延びているために「老後」という概念が変わり始めていることが1つ。引退後も、20〜30年もの人生が待っているので、元気でいなければ、と考え始めている。 もう1つは、米国に根強くある「若さ信奉」。若いということが、仕事でも人間関係でも、社会的に非常に価値が高いと考えられていることにある。 日本では、老人の経験や考え方に敬意を持つ文化があるが、米国は反対だ。 老人に対する差別を証明するのは難しいが、最近プリンストン大学が興味深い研究結果を発表した。 学生たちに男性が出ているビデオを見せる。学生には、何らかのコンテストに一緒に組んで出るとしたら、ビデオの相手でいいかという質問をする。ビデオは3種類あり、似た男性が同じ格好、似た話し方をするが、年齢が1人は25歳、もう1人は45歳、もう1人は75歳だ。ビデオの男性全員が、「良い人」的な発言と「意地悪な人」的な発言の両方を含む話をする。 結果は、25歳と45歳に対して、何を言っても好感を持つ学生が多かったが、75歳の男性は圧倒的に好感度が低かった。 米国は老人に対してやや冷たいのである。 実際に、年配の人が職を失うと、再就職までに若い人より2〜6カ月多くの時間がかかり、新しい仕事があったとしても以前よりずっと給料が低くなる(米労働調査局)。 現在、55歳以上で仕事を探している失業者は200万人いる。米国の労働問題で、政府の頭痛の種は、55歳以上の失業者だ。ローンを抱え、子供がちょうど大学に行くような年齢を迎え、資金が必要な時に再就職ができない。さらに失業期間もこの年齢層は平均1年と長期になる傾向がある。この年齢層の失業率は、経済が回復しても一向に改善しない。 「老人的」ということが、ますますネガティブな印象になりつつある昨今、アンチエイジングが大流行するのは当然と言えば当然である。不自然な若々しさや、不気味なくらいスタミナがある米国老人は、ハリウッドやセレブの世界だけでなくなっている。 日本人には馴染みにくい方法ではあるが、米国ではこの国なりに、長くなった人生をどう生きるかという問題に、懸命に答えを出そうとしているのだ。 http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/3/f/-/img_3fb47bbd191c6cffd309397c86d08943250242.jpg |