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“投資会社”ソフトバンク、なぜ負債膨張でも株価好調?携帯世界2位へ加速するアクセル
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140113-00010003-bjournal-bus_all
Business Journal 1月13日(月)14時57分配信
11月18日、ソフトバンク前取締役、福岡ソフトバンクホークス前代表取締役社長兼オーナー代行を務めた故・笠井和彦氏の「お別れ会」がホテルニューオータニ東京で催された。その会でソフトバンク社長の孫正義氏は弔辞を読み、一時、同社の上場廃止を考えていたことを明らかにした。
「2008年秋のリーマン・ショックが収まってきたころ。株価の大きな変動を受けて孫社長は笠井氏に「アナリストやジャーナリストへの説明が面倒。いっそ個人で会社を背負おうかと思う」と相談。これに笠井氏は「夢をちっちゃくしていいんですか」と強く反対した。孫社長は、『あの時止めてくれなかったら、その後のスプリント買収も無理だっただろう』と、絞り出すような声で感謝を述べた」(11月19日付朝日新聞より)
笠井氏は表にはあまり出なかったが、孫氏の軍師だった。富士銀行(現みずほ銀行)副頭取、安田信託銀行(現みずほ信託銀行)会長を務めた笠井氏は2000年、孫氏から三顧の礼をもってソフトバンクに迎えられた。そして、ボーダフォン日本法人(現・ソフトバンクモバイル)やスプリント・ネクステルの買収などソフトバンクが大勝負を決断する際には必ず、銀行時代に為替ディーリング部隊を率い「為替の神様」といわれた笠井氏が為替や金利の見通しについて指南していた。
孫氏が上場廃止を考えたのは、08年9月に米投資銀行リーマン・ブラザーズが倒産した、いわゆるリーマン・ショックの直後である。同年8月半ばまで2000円台で推移していたソフトバンクの株価は、10月28日には636円に大暴落した。あらゆる銀行で融資先への姿勢が厳しくなるとの見方が強まり、借入金の多い会社に危険信号が灯った。その代表格がボーダフォンの買収で有利子負債が2兆4949億円(08年9月末)に膨れ上がったソフトバンクだった。当時、孫氏は「まるで経営が破綻するかのような勘違いを(金融市場は)している」と語り、風聞を意に介さないそぶりを見せていたが、実際は笠井氏に相談するほど追い詰められていたのだ。
●再び膨れる有利子負債
そして今、スプリントの買収により、ソフトバンクの有利子負債は再び膨れ上がっている。
ソフトバンクの13年上期(4〜9月期)の連結決算(国際会計基準)によると、スプリント買収日(13年7月10日)の有利子負債は2兆7582億円だったが、9月時点では8兆8401億円の3.2倍にまで増えている。スプリントがソフトバンクにとっていかに大きな買い物だったのかがうかがえる。
ソフトバンクはM&A(合併・買収)攻勢で13年度中間期決算の売上高、営業利益、純利益がいずれもNTTドコモやKDDI(au)を上回り、国内大手携帯電話会社3社の中で1位となった。売上高は2兆5986億円(前年同期比72.7%増)、営業利益は7150億円(同66.6%増)、純利益は3949億円(同84.1%増)。売り上げには買収したスプリントの分が上乗せられた。同社の営業損益は赤字だが、ゲーム会社のガンホー・オンライン・エンターテイメントやPHS(簡易型携帯電話)事業を手掛けるウィルコムを子会社化にしたため、その利益が加わった。一連のM&A効果で14年3月期は売上高が6兆円以上、営業利益は1兆円以上になると予想している。
ソフトバンクはボーダフォンを買収した時と同様に、スプリント買収では自社の体力をはるかに上回る投資に踏み切った。有利子負債は大きく膨れたが、今回は株価の暴落は起きなかった。リーマン・ショックで金融市場が収縮していた時とは一変し、現在はアベノミクスを追い風にして株式市場が活況に沸いているという環境の違いが大きかったとみられる。
●“投資会社”ソフトバンク、市場は高評価
実際にソフトバンクの株価は絶好調だ。昨年11月25日の東京株式市場では、同社の時価総額(終値)は10兆円を上回った。三菱UFJフィナンシャル・グループに約1兆円の差を付け、トヨタ自動車(約22兆円)に次ぎ第2位となった。12月11日には、06年1月の株式分割後としては初の9000円台に乗せ、終値は前日比160円(2%)高の9060円。売買代金は東証1部で首位の1827億円。東証1部全体の売買代金の1割近くを占める大商いとなり、さらに12月19日には9100円の高値をつけた。
株価上昇のきっかけは、約37%を出資する中国の電子商取引(EC)最大手、アリババ集団の企業価値についてRBCキャピタル・マーケッツが1500億ドル(約15兆円)と試算したことだ。この情報が伝わりソフトバンクの株価が急騰した。
外資系証券会社のアナリストは「海外では、ソフトバンクは投資会社としての評価が高まっている」と語るが、同社の13年度中間期決算における負債・資本合計は15兆6045億円と、事業会社としては大きな額だが、投資会社として見れば驚くような金額ではない。ソニー株式の買い占めを進め、エンタテインメント事業の分離を求めている米投資ファンド、サード・ポイントがソフトバンク株式を約10億ドル(約1000億円)分取得したのは、ハイリターンが期待できると踏んだからだ。
投資会社は次々と新しい投資先を開拓しなければならないが、ソフトバンクも昨年10月15日、フィンランドのオンラインゲーム会社、スーパーセルを1500億円で買収。その4日後には、米携帯端末卸大手、プライトスターを1230億円で買収した。立て続けのM&Aが投資会社としての評価をますます高め、株価が上昇した。
M&Aの次の標的は米国4位の携帯電話事業会社、TモバイルUS。ソフトバンクが子会社にした同3位のスプリントを通じ、今春にもTモバイルUS株式の大半を取得する。昨年12月13日付ウォール・ストリートジャーナル電子版によると買収額は2兆6000億円になる見込みだというが、これが実現すればソフトバンク・グループの携帯電話事業の年間売上高は7兆円に達し、中国移動(チャイナ・モバイル)に次ぐ世界第2位に浮上する。
最先端のモバイルネットサービスが生まれ、今も成長を続ける米国市場でソフトバンクは足場を固める。スプリントとTモバイルUSを合わせて早期に1億人の契約を達成し、米ベライゾン・ワイヤレスなど米国2強に対抗できる事業規模にする。
ソフトバンクは今年も、とどまることを知らずにアクセルを踏み続ける。
編集部
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