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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第59回 公共事業費増額のウソ
http://wjn.jp/article/detail/9721686/
週刊実話 2014年1月23日 特大号
昨年の12月24日、安倍内閣が2014年度予算案を閣議決定した。
アベノミクスを引き続き推進するということで、一般会計の総額は過去最大の約95兆8800億円に達した。
上記を受け、例により朝日新聞などの大手マスコミが、
「家計に負担増を求める一方で、予算を大事に使って国民に理解を求めようとする姿勢は見られなかった」(朝日新聞 2013年12月25日一面「予算大盤振る舞い」より)
と、的外れな批判を展開しているが、ことは「家計簿」の話ではない。国民経済の問題なのだ。
現在の日本はデフレという問題を抱えている。デフレとは、バブル崩壊後に民間が借金返済を始め、国内の消費や投資が減り、物価が下落し、生産者の所得が縮小することで深刻化していく。
その解決策は「誰か」がモノやサービスに対する消費、投資を増やし、国内の需要不足を解消する以外にない。
安倍政権は2014年4月時点の消費税増税を決めてしまった(これ自体はデフレ促進策で問題)。少なくとも来年4月に、消費税増税前の駆け込み消費の反動がくるのは間違いない。すなわち、国民が「お金を使わなくなる」わけだ。
そんな状況で、政府までもが「予算を大事に使う(節約する、という意味だと思うが)」などとやった日には、国内でお金を使う経済主体がますます減ってしまう。
結果的に、別の誰かの所得が縮小し、ますますおカネが使われなくなり、デフレが深刻化していくことになる。
というわけで、デフレ脱却を目指す安倍政権が政府の予算を拡大すること自体は正しい(デフレ対策として)。
問題は予算拡大の内容であるが、マスコミでは相も変わらず、
「族議員の活動が活発化、『国土強靭化』を旗印に建設・道路族が予算確保に突き進んだ結果、公共事業費は約5兆9600億円に達し、前年度から12.9%の大幅増となった(2013年12月24日、時事通信)」
と、いつも通りのレッテル貼りや印象操作に加え、大本から間違った報道がされていたので、本稿にて修正しておきたい。
現実には、2014年度の公共事業費は実質的には全く増えていない。
それにもかかわらず、見かけの公共事業費は13%近くの増加になってしまっている。なぜだろうか。
実は、'13年度まで「社会資本整備事業特別会計」として特別会計に計上されていた予算(6167億円)が、特別会計改革により一般会計予算に移ってきたのだ。
すなわち、これまでは一般会計として予算化されていなかった社会資本整備予算の一部が、'14年度から「公共事業費」として計上されるようになっただけなのである。
社会資本整備事業特別会計の上乗せ分を排除すると、'14年度一般会計における公共事業予算は5兆3518億円。対前年比ではわずかに1.9%の増加である。
しかも、2014年4月には消費税が5%から8%に増税される。
すると、'14年3月まで105で購入されていた財やサービスの名目的な価格が、税率アップにより108になるわけだ。パーセンテージで書くと、政府の公共事業といったサービスを含め、否応なしに2.78%価格が上昇することになる。
公共事業予算が1.9%しか上がらないということは、これは実質的には「予算削減」と同じである。
公共事業関係費にしても、政府の支払いの時点で消費税が課せられている。消費税分は土木企業、建設企業などがプールしておき、事業年度が終わると「政府」に戻ってくることになる。
というわけで、公共事業を受注する企業側から見ると、
「見かけの予算は確かに1.9%増えたが、消費税として政府に支払わなければならない金額がそれ以上に増えてしまった」
という話になり、実質的には「マイナス予算」になってしまうのだ。
実質的には民主党政権期までと同様に、公共事業費が削減されているという話だ。
無論、公共事業関係費の中には、土木企業、建設企業に支払われるわけではない「用地費」などがあるため、土建企業への発注金額がプラス化するか、マイナス化するかは、かなり微妙なところではある。それにしても、時事通信等のマスコミが書いている「前年度から12.9%の大幅増」というのは、明らかに「ウソ」だ。
加えて、公共事業費1.9%増とは、消費税増税の影響を除いたとしても、大した増加率ではない。
何しろ、政府が閣議決定した一般予算総額の増加率は3.5%だったのだ。それにもかかわらず、公共事業費は1.9%しか増えない。
相対的に見ると、公共事業費は他の予算と比べて「増えていない」というのが真実なのである。
'97年の橋本政権以降、我が国では公共事業費には「マイナス・シーリング」が適用され続けてきた。マイナス・シーリングとは、「前年よりも必ず予算を減らす」という意味になる。
しかも、'14年度に公共事業費が1.9%増えるとはいえ、比較対象は「コンクリートから人へ」という、日本の国土的条件には全く合わない思想に侵されていた民主党政権下の予算なのである。
民主党に政権交代する前、麻生政権期に組まれた'09年予算では、公共事業費は当初予算で7.1兆円だった(さらに、リーマンショックのダメージを食い止めるために、1.7兆円の補正予算が組まれた)。
'14年度の公共事業費が「名目的」に増額されたとはいえ、いまだに麻生政権時代を回復していないというのが真実だ。
現在の日本は、橋本政権以降の公共事業削減や「公共事業の一般競争入札化」という規制緩和の影響で、土建企業の供給能力が小さくなってしまっている。我が国の建設業許可業者数は、ピークの小渕政権期(60万社)に比べ、すでに13万社も減少している有様なのだ。
土建企業の供給能力を回復するためには、長期的な公共事業の需要(予算)を政府がコミットする必要があるが、'14年度の「公共事業費の名目増」で果たして十分なのだろうか。
現実の予算を見る限り、「とてもそうは思えない」というのが普通の見方ではないだろうか。
三橋貴明(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。
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