http://www.asyura2.com/13/hasan84/msg/895.html
Tweet |
http://president.jp/articles/-/11645
PRESIDENT 2013年10月14日号 伊藤博之=文
これから日本は急速な「生産年齢人口の減少」「後期高齢者の増加」の時代を迎える。そうしたなかで一体どういったことが起きるのか? 社会保障給付費の負担増にともなう現役世代の苦しい生活の姿が垣間見えてくる。
現役世代にとってますます身動きのとりにくい時代になっていくようであるが、何か起死回生策はないのだろうか。実は、現役世代にのみ負担をかぶせるのではなく、高齢者にも負担増を求めようというのが、第一生命経済研究所主席エコノミストの永濱利廣さんである。
「裕福な高齢者は多く、リタイア後も社会保障を支える側に回ってもらいます。現役並みの所得のある高齢者の方には介護保険で負担を増やしてもらうことになりましたが、所有している資産にも応じて、年金や医療費なども含めた社会保障の負担を求めていくのです。その資産の掌握には16年から始まるマイナンバー制度を利用していくことが有効な手段になるでしょう」
12年の家計調査を見ると、世帯別の貯蓄残高は30〜39歳=567万円、40〜49歳=1033万円なのに対して、60〜69歳=2249万円、70歳以上=2197万円となっている。一方で負債額は、30〜39歳=909万円、40〜49歳=978万円なのに対して、60〜69歳=197万円、70歳以上=96万円であり、貯蓄から負債を引いた純資産は高齢者ほど多く、十分に余裕がありそうだ。さらに日本総合研究所主席研究員の藻谷浩介さんは、年金支給に税金を投入するのをストップすることを提言する。
「いま払い込まれた保険料を、いま生きている高齢者に年金として給付することに徹します。現状は年金が大量に貯蓄されてしまい、その結果、経済波及効果は極端に低くなっています。それに現在の高齢者は、自分たちが払い込んだ以上の年金を受け取っていてアンフェアです。だから税金を投入せず、厳正に年金を運用すべきなのです。年金が減額されて生活が苦しくなれば、手元にある貯蓄を取り崩せばいいのです。貯蓄がなくなったら、正々堂々と生活保護を受けましょう。生活保護はそのためにあるのですから」
そうなれば“異次元の金融緩和”などせずとも、市中にお金が回るようになる。実需をともなっているので、ダブついていたモノも動き出して、現役世代の新しい雇用の場も生まれる。「自分たちが高齢になった場合に支えてくれる子どもを産んでいく必要があることに、現役世代が気づくきっかけになるかもしれません」と藻谷さんは話す。
最近、高齢者の仲間入りをした団塊の世代が、自分たちの親の世代から相続を受けるケースが増えている。ほとんどの場合、彼らはその相続した資産を使わずにため込んでしまう。そこで相続税の見直しを提案するのが学習院大学経済学部教授の鈴木亘さんである。
「毎年85兆円も発生している相続資産に対して、相続税収はたったの1兆4000億円。それならすべての相続資産に対して一律に15%の相続税を課税すれば、12兆7500億円の税収増につながります。消費税を5%引き上げた際の税収増に近い規模になるのです。そうでなければ、払い込んだ以上にもらっていた年金と同額分を、相続資産から戻してもらうことも検討してもいいのではないでしょうか」
永濱さん、藻谷さん、鈴木さんの3人の意見に共通しているのは、高齢者の間に退蔵された資産を還流させていこうということ。さらに高齢者から現役世代へ所得を移転させていくことも重要だ。それには団塊の世代のリタイアで浮いた人件費を現役世代に回していくことがポイントになる。年金の支給開始年齢引き上げにともなう定年延長や再雇用などで高齢者の雇用がいつまでも維持されたままだと、現役世代に雇用の機会が回ってこない。
■家事専業女性1000万人の活用が急務
図4 2040年の就業者数は4480万人へ減少
http://president.jp/mwimgs/6/d/-/img_6dbb2c60b4074c8c41094a24bb61be1e59130.jpg
ここで「少子化でこれからますます人手不足になっていくというのに、どこで働き手を探せばいいのか」という疑問を持つ人がいるかもしれない。それに対する明快な答えを持っているのが藻谷さんで、「10年から15年までに就業者数は220万人も減少します(図4参照)。しかし、15〜64歳の家事専業女性は約1000万人もいて、彼女たちの5人のうち1人が働き出せば、十分にカバーできます」という。
女性の就労を促すメリットとして藻谷さんは、(1)家計収入が安定して保育所を利用できるようになり、出生率がアップする、(2)家計所得の増加で税収が増え、年金の保険料収入も安定していく、(3)モノの消費が増えて消費税収が増加する、(4)外国人労働者の受け入れと違って教育コストや福祉コストが低くて済む――などをあげる。この(1)に関して興味深いデータが図7で、出産適齢期の女性が働いている県の女性のほうが、そうでない都道府県よりも生涯に産む子どもの数が多いのだ。
女性が就労するのなら、1つの会社でキャリアを積み、経営の一角を担うようになるのが理想像の1つであろう。
「しかし、女性の就業割合を年齢別で見ると30〜39歳の子育ての時期を底に“M字カーブ”を描いています。さらに雇用形態別に見ると、正社員の割合は20代後半をピークに落ち込む“ヘの字型”で、再就職が派遣やパートで占められていることがわかります。能力が発揮できずに“宝の持ち腐れ”になっている可能性が高い女性が多いのです」とみずほ総合研究所上席主任研究員の堀江奈保子さんは指摘する。
女性が会社を辞めずに、子育てと両立させていくためのポイントについて藻谷さんは、「3年の育児休業ではなく、3カ月で職場復帰できるようにすることと、夫である男性が定時退社して子育てを分担することだ」と断言する。働く女性にとってキャリアの中断は避けたい。だから、3年間の育児休業などもってのほかなのだ。そして、その希望をかなえるためには、保育所を増設して待機児童ゼロを実現する必要がある。また、子育てに対する役割と責任を夫婦で分担することで、仕事に集中する余裕が生まれ、メリハリのある生活のなかで第2子を持つ意欲も湧いてくるかもしれない。
図7 「働いている女性」「専業主婦の女性」どちらが子どもを産むか?
http://president.jp/mwimgs/e/7/-/img_e7061f46a54080cf5a19cb3139c6490530871.jpg
しかし、年配の男性ほど出生率の向上を口にする一方で、「女性は家にいて子どもを育てるもの」という意識を強く持っていたりする。それでは子どもが増えないことは、図7のデータが示す事実でも明らかだ。新興国の台頭で「低価格製品の大量生産」というビジネスモデルが行き詰まり、その転換が強く求められている。男性とは違うセンスを持った女性を積極的に登用していくことで、画期的なブレークスルーが生まれる可能性が高まるだろう。
これまで厳しいシミュレーション結果を示してきたが、日本はどこの国よりも早く「生産年齢人口減・高齢者増」を迎えた。ということは、日本は世界における“大潟村”のポジションにいち早く到達するということでもある。課題は山積しているが、今後の対策次第では世界における“下條村”のポジションにつけることだって夢ではない。それが実現できた暁には、安定した新しい国の形として世界のモデル国家になれるだろう。
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。