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危険な空き家、なぜ多数放置?国・自治体で対策の動き相次ぐ〜解体費用補助、税軽減…
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140112-00010000-bjournal-bus_all
Business Journal 1月12日(日)7時55分配信
少子高齢化や核家族化などが進行したことに伴い、自宅を空き家のままにして高齢者施設に入居したり、または居住者が亡くなり相続人がそのまま放っておいたりするといった例が増加している。今後、1980年代後半のバブル期に駅から離れた郊外に戸建住宅を購入した人たちが定年を迎えるが、郊外は交通の便が不便なために、空き家にしたまま居を移す人がさらに増えていくことが予想される。
5年に1回実施される総務省の「住宅・土地統計調査」(2008年)によると、全国の総住宅数5759万戸のうち空き家は757万戸。03年の調査に比べて約97万戸(14.8%)増加し、空き家率は13.1%に達しているのだ。
●空き家放置の背景
では、空き家を放置したままだと、どのような状態になるのだろうか。東京都大田区にある不動産会社の社長は次のように指摘する。
「空き家を放置することは、危険といつも隣り合わせ。空き家への不法投棄でゴミのたまり場になり、周辺に悪臭を漂わせると、周辺住民は本当に迷惑。放火など犯罪の温床になる可能性もある。さらに地震が起きた時には空き家が倒壊し、避難経路を防いだり、周辺の住宅まで延焼してしまうことだって考えられる。そうなった場合は、所有者は損害賠償責任を求められることも十分にあり得る」
危険であるとわかっているが、所有者の多くは空き家を放置したままだという。その背景には、所有者それぞれのさまざまな事情が存在する。
「空き家が増え続ける原因のひとつとして、空き家を解体し、更地にすると税制面の優遇措置が受けられなくなることが大きい。空き家を解体すると、固定資産税額が跳ね上がってしまう」(前出の不動産会社社長)
つまり、たとえ空き家であったとしても税制上は「家屋」として扱われるので、その敷地は「住宅用地」となり、更地に比べて固定資産税が軽減されるのだ。例えば敷地面積が200平方メートル以下の住宅用地の課税標準額は、固定資産税評価額の6分の1、200平方メートルを超える部分は3分の1となるため、税金対策としては効果的ということになる。
具体的なケースで見てみよう。更地の固定資産税評価額が5000万円の場合、その土地の1年間の固定資産税額は「5000万円×1.4%(固定資産税率)」で70万円となる。それが、空き家でも家屋として扱われれば、「70万円×1/6」で11.5万円となる。建物の固定資産税評価額は、老朽化した空き家では極めて「ゼロ」に近いと考えていいだろう。空き家があることで固定資産税額は11.5万円だけとなり、建物があるとないとでは大きな違いとなる。
また、空き家を処分しても、新たな建物を建設できないケースもある。建築基準法では住宅の敷地は原則として道路と2メートル以上接していなければいけないが、古い建物によっては道路条件を満たしていない場合も多い。その場合、そのまま放置するしか方法がないのだ。
加えて、解体費用は高額で、戸建住宅を解体する場合、小さな木造住宅でも100万円前後の費用を要することになる。
こうして空き家のまま放置された土地は私有地であるため、これまで行政が簡単には手を出せなかった。また、所有者を特定しようにも、空き家は所有者が亡くなるなどして相続人が登記書類の書き換えを行っておらず特定が難しいケースも多い。よって、自治体による改修や撤去の指導が困難な状況にあったのである。
●対策に乗り出す自治体相次ぐ
そこで自治体は空き家条例を施行することで、問題解決を図ろうとした。
10年10月、埼玉県所沢市は全国で初めて「空き家対策条例」を施行。施行以前は、空き家の苦情に対応する担当部署が明確でなく、所有者の指導に法的根拠がないなどで、打つ手がない状況が続いていたという。所沢市の条例では、所有者に適正な管理を義務付けると共に、住民から情報提供があれば市が実態調査を行い、所有者に助言、指導、勧告を行うことができ、さらに従わない場合には氏名を公表、最終的には警察等に依頼し、撤去を行えるようにした。条例施行前は年に数件だった自主的な撤去が、施行後は空き家の撤去が10件を超え、条例制定に一定の効果があることが証明された。
所沢市の条例がきっかけで、全国で条例制定が続いた。昨年10月時点で272の自治体で条例が制定されている。
東京都足立区は11年11月に都内で初めて空き家条例を施行。注目されるのは解体費用を助成する内容になっていることだ。足立区では、勧告に従って住宅の解体を行う場合は解体費用の9割、上限100万円を補助している。3年がかりで補修を呼びかけていた住宅で外壁タイルが落下する事故があり、老朽建物への対応を検討していたところに東日本大震災が発生し、一気に条例制定にまで進んだ。条例を施行して以降、これまで45軒が解体された。
空き家の撤去を促すためには、行政代執行のような強制的な手段だけではなく、場合によっては撤去するための費用を自治体が援助することは有効な手段といえる。秋田県大仙市では12年3月に行政代執行が行われたが、解体費用180万円の回収の目途は立っていないという。
東京都内の空き家問題を担当している自治体職員は語る。
「行政代執行の場合、所有者に解体費用を請求できるが、支払い能力がないために、ほぼ戻ってこないと考えていい。解体費用も高額なので、何軒も解体というわけにはいかない」
こうした実情を踏まえると、解体費用を助成することによって迷惑空き家を解決するほうが賢明な判断と言えるかもしれない。
●国、政治レベルでも対策への動き相次ぐ
しかし、自治体の努力だけでは限界がある中で、ようやく国土交通省も対策に乗り出したところだ。個人が空き家を解体する費用の5分の4を国と自治体が助成する「空き家再生等推進事業」が13年度からスタートしている。自治体で条例制定していない都市部を含めて、全国どこでも支援を受けられるようにすることが国交省の狙いだ。
しかし、解体費用の助成だけでは、解体して建物がなくなると住宅用地の優遇措置から外され、固定資産税が数倍に跳ね上がってしまい、解決にならない。
そこで、空き家対策は国会の場に移されようとしている。自民党の空き家対策推進議員連盟(宮路和明会長)は、空き家の解消を促す税制措置を盛り込んだ「空き家対策の推進に関する特別措置法案」をまとめた。国による基本指針を策定し、市町村による空き家対策の計画を策定するための必要事項を定めるというものだ。空き家の所有者に対し、解体や修繕が必要な場合は、市町村は指導、助言、勧告、命令ができることになり、さらに要件が緩和された行政代執行が可能になる文言が盛り込まれている。今後は全国的に空き家の増加が予想されており、国が基本方針を打ち出すことは大きな前進といえるだろう。現在、同議員連盟は次期通常国会での法案提出を目指し、自民党の関連部会や公明党と調整中である。
同法案の中で特に注目したいのは、建物を自主的に撤去した所有者に対して、住宅用地と同様に扱う固定資産税の軽減措置が講じられる点だ。これによって、更地にすると数倍になるはずの固定資産税が一定の期間免除される。
自民党の同議員連盟関係者は次のように語る。
「ポイントは、空き家の所有者に、自主的に処理してもらうことだ。固定資産税の軽減措置を行うと税収が少なくなると懸念する自治体もあるが、今のまま対策を取らなければ空き家は増え続けるだけだ。税収以上に不経済な空き家を解決することのほうが重要。所有者も軽減期間に新しい建物を建設できれば固定資産税額が増えることはない」
もし同法案が可決すれば、空き家増加に対して一定の歯止めが期待できるかもしれない。また、同法案は空き家の解体を促し、その土地を活性化させることを目的としており、今後は空き家を解体するだけでなく、空き家をどのように有効活用するかについても考えなければいけないだろう。解体を促進させるだけでは限界がある。
空き家を迷惑施設と考えるのではなく、空き家を再生して街を活性化するような処方箋も国、自治体は持ち合わせたいところだ。解体と再生の両輪の政策が、空き家問題の根本的解決のために求められている。
藤池周正
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