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[グローバルオピニオン]世界は総需要が足りない 米コロンビア大学教授 ジョセフ・スティグリッツ氏
2008年のグローバル金融危機の発生からすでに5年が過ぎた。先進国に住む大半の市民の所得はほとんど増えていない。14年も同じような状況が続くと考えている。
欧州は景気の二番底を13年に終えたが、回復に向かっているわけではない。スペイン、ギリシャでは若年層の半数以上がなお職に就けない。国際通貨基金(IMF)によると、スペインの失業率はこれから数年間、25%を上回る。
欧州で真に危険なことは現状肯定の感覚が定着しかねないことだ。単一通貨ユーロ圏で制度改革のペースが鈍ってきた。ユーロ圏には銀行同盟と、加盟国が共同発行する債券が必要だが、いずれも1年前より進んだとはいえない。
二番底を誘発した緊縮政策が復活する気配もある。景気低迷の長期化だけでも悪い材料なのに、ユーロ加盟国で新たな危機が発生しかねない。
米国は欧州よりいくらかましという程度だ。経済格差が広がり、所得の不平等は先進国の中で最悪である。政治の二極化も顕著だ。政府機関を一部閉鎖に追い込み、国家を債務不履行の瀬戸際に立たせた共和党が愚挙を繰り返すことがなくても、次の引き締め転換で景気は収縮、成長が停滞するだろう。大がかりな課税回避が指摘されるシリコンバレー企業と活況のエネルギー産業だけでは、緊縮の重荷を打ち消すことはできない。
米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和第3弾(QE3)がいくらか縮小されても、事実上のゼロ金利策の打ち止めは15年以降になるだろう。
QE3が米経済にもたらした利点は極めて少なく、国外でリスクを高めた可能性がある。グローバル金融市場の動揺は、13年前半のQE3の縮小論議がきっかけだった。
幸いにも主要新興国の大半は外貨準備が潤沢で、衝撃に耐えられる強固な経済体質を備えていた。それでも新興国の減速は期待はずれだった。14年も続く可能性が高い。
事情は様々だ。インドは不透明な政治と物価安定への不安が要因。ブラジルは貧困と不平等の解消で過去10年間に大きな成果をあげたが、繁栄の恩恵を広く共有するにはなお課題が山積する。抗議デモが広がり、増える中間層は政治的な影響力を持ち始めた。
中国の減速は原材料の輸出国に深刻な打撃を与えた。だが、持続可能な水準に移行するのならば、長期的には中国にも世界にも好ましい。
13年の世界経済の根本課題は総需要の欠如だった。インフラ整備をはじめニーズ自体はあったが、これらを満たすために世界の余剰部分を再利用する作業を民間の金融システムはできそうにない。14年の世界経済は前年よりいくらか上向くかもしれないが、そうでないこともあり得る。
((C)Project Syndicate)
Joseph E.Stiglitz クリントン政権で米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長。世界銀行チーフエコノミストなど歴任。2001年にノーベル経済学賞。70歳。
<記者の見方>米国のけん引に期待
世界全体の実質成長率が3%を割り込むかどうか。それが世界同時不況の分岐点になるといわれた時代があった。IMFによると、13年の実績見込みは2.9%。スティグリッツ氏のいう通り、総需要が足りず停滞感が強まったのは確かだろう。それでも14年は3.6%に持ち直す。日中は低下するが、米欧や東南アジア諸国連合(ASEAN)は上昇する。なかでも金融危機の傷が癒えつつある米国への期待は強い。量的緩和を縮小しても、世界経済をけん引できるかが問われる。
(編集委員 小竹洋之)
[日経新聞1月6日朝刊P.4]
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