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コラム:2014年の金融市場に関する5つの予測=カレツキー氏
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPTYEA0502D20140106
2014年 01月 6日 12:47 JST
アナトール・カレツキー
2014年が幕を開けた。2008年の金融危機以降、投資家やエコノミスト、ビジネスマンが新年を祝う挨拶を皮肉抜きに言えるのは今年が初めてだ。
昨年は2012年と比べて世界の経済成長がやや減速するなど数字の上では期待外れだったが、金融市場や企業マインドについての「評決」は、私の予想に近いものとなった。明らかに成長が減速したにもかかわらず、株式市場は1990年代以降で最高のパフォーマンスを見せ、長期金利は上昇、世界の消費者マインドは2013年末時点で、年初と比べてはるかに改善した。
この矛盾を説明するのは簡単だ。統計的に見た2013年の「弱さ」は、米大統領選や中国指導部の交代に関連して、冬の間に「非常に弱い」期間があったことに起因するからだ。実際、第2・四半期までに米国や中国の経済は復調し、英国や日本では成長に拍車がかかった。
昨年1月時点での見方が悲観的過ぎたというのは、その後の金融市場で株式投資が債券投資を記録的にアウトパフォームしたことで裏付けられた。今ではほぼ全ての人が楽観的になった。
では、2014年の市場や企業にとってサプライズとなり得る「予期せぬ出来事」は何だろうか。私なりの予想を5点、以下に挙げた。当たり前のようなことや、突拍子もないものも含まれているかもしれないが、いずれにしてもこの5点は今のところ市場には織り込まれていない。
1.予想上回る米経済の成長
私は米経済の成長率が約4%に達すると考えている。これは国際通貨基金(IMF)やその他の主要な経済見通しで言われている2.5─3%を上回っている。
こう考える理由はシンプルだ。昨年12月に発表された第3・四半期の米国内総生産(GDP)確報値は前期比年率で4.1%増、民間セクターでは4.9%増となっていた。連邦政府予算をめぐる攻防も一段落し、短期金利はゼロ付近にとどまっていることを考えれば、成長減速を予想する根拠はどこにも見当たらない。
仮に米経済が約4%の成長となれば、世界経済の成長率も同等程度になり、この4%は企業の経営・財政計画上で想定されている2%の成長率と置き換えられる。また世界の期待インフレ率は3%に達すると見られ、これによって名目経済成長率が約7%まで押し上げられる。
2.上昇トレンドは継続
世界の主要株式市場が今年も20%を超える上昇を繰り返すとまではいかないまでも、多くの市場で株価は上がり続け、債券価格は下落していくだろう。
株式市場を楽観視するのには2つの理由がある。米株が13年にわたる取引レンジを突破したことは、世界的な上げ相場が向こう何年も続くきっかけになることを強く示唆している。私は世界経済の名目成長率を6─7%と予想しているが、これは企業収益にとっても同様の成長をもたらし、それに伴って株価も上昇する可能性がある。
株価のバリュエーションは依然として長期的な平均水準を若干上回っているだけであり、企業が潤沢な資金を抱えていることも考えれば、多くの市場で株価の上値余地が存在すると言える。
株式市場にとって最大の問題は金利の上昇だ。米10年債の利回りは米経済の加速に伴って少なくとも3.5%に上昇するだろう。それでも過去の歴史を振り返れば、短期金利の低い状態が続く場合、経済の回復期では株価と債券利回りは同時に上昇することが多い。
株式投資家にとって幸いなことに、米連邦準備理事会(FRB)はどれだけ経済が加速しようと短期金利をゼロ近辺にとどめるとのコミットメントを維持する方針だ。なぜならFRB高官らは、5年に及ぶ深刻な景気後退を経て訪れる急速な成長は、自然で歓迎すべきものだと考えているからだ。
3.欧州危機は経済から政治に転移
しかし残念ながら欧州の中銀関係者は全く異なった見方をしている。彼らにとって急速な成長とはインフレの兆しであり、経済が上向くとすぐに金融引き締めをほのめかし始めるだろう。
強い成長と金融緩和のジレンマは、すでに英国で表面化している。英国の経済活動が改善しているのは、ひとえに不動産市場の活況によるものであり、イングランド銀行(英中銀)はその過熱感に歯止めをかけようとしているものの、成功の見込みは薄く、同国は2014年に深刻な政治的問題を抱える国となりそうだ。
結果としてポンドは上昇し続け、中銀の独立性は危ぶまれ、英国経済はこれまで以上にバランスを失う。そして、対GDPで世界最大の貿易赤字がもたらされる。
対照的に、ユーロ圏ではしばらく弱い経済が続くが、5月の欧州議会選でナショナリストやネオ・ファシストらの政党が大勝してドイツで混乱が広がり、これを機に拡張的な金融・財政政策へとシフトするだろう。その結果ユーロは下落し、南欧経済の回復は第2・四半期以降になってようやく始まるだろう。
4.日本は再び「自滅」する
日本は2014年の期待を裏切る主要な国となる可能性が高い。昨年アベノミクスで沸き上がった市場への楽観も損なわれてしまうだろう。
4月に行われる消費増税は、景気の腰折れを防ぐためのその他の措置を考慮したとしても、日本を第2・四半期までに景気後退へと逆戻りさせ、株式市場も暴落する。日銀が金融緩和を強化し、これ以上円安が進んだとしても結果は変わらないだろう。
5.新興市場の復活
米国が4%、中国が7─8%の成長を達成することで、新興市場も本領を発揮するようになる。新興市場の多くでは、堅調な経済と商品市況上昇によって生み出される利益が、金利が少々上昇したことで生じる損失を上回るからだ。
ただもちろん例外はある。トルコやブラジルのように、貿易赤字が巨額であったり政治的な「不始末」があったりする国では、金融問題が深刻化する可能性がある。
一方で、今でこそ「のけ者」扱いされている2つの国では、驚くほど良い結果が生まれる可能性がある。まずロシアでは先日、プーチン大統領の政敵として知られる元石油大手ユコス(破産)のミハイル・ホドルコフスキー氏に恩赦が与えられた。このことは同国が個人資産の権利を尊重するようになったことの表れとも取れる。またイランとの核協議で合意に至ったことは、潜在的に強い経済を持つイランを文明社会に呼び戻し、中東の地政学をも変えてしまう可能性も示している。
それにしても今の段階でこうした話をするのは、新年の幕開けに浮かれているのだとしても少し楽観し過ぎなのかもしれない。
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