01. 2014年1月07日 08:40:47
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/39595 2014年の世界経済:危ない楽観主義 2014年01月07日(Tue) The Economist (英エコノミスト誌 2014年1月4日号) 世界経済の成長に関する朗報は、金利を押し上げ、政治家の改革意欲を削いでしまう恐れがある。 金融危機が終息してからほぼ毎年のように、年初になると米国の予測筋の間ではバラ色の予測が披露される。2014年も例外ではない。 株式市場は上昇し、消費者信頼感も改善する中で、2014年に向けた成長予測は引き上げられている。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)500株価指数は、2013年に30%上昇し、過去最高水準にある。これはここ20年ほどの間で最大の年間上昇率だ。 米国に牽引され、全世界の成長率も購買力平価(PPP)ベースで4%近くに達する可能性も見えてきた。これは2013年より1ポイント近く速い成長ペースであり、ここ数年で最高の数字だ。 しかし、新年の祝賀ムードの最中で、思い出してほしいことが1つある。金融危機が起きてからほぼ毎年のように、楽観的な予想は裏切られているということだ。そして今回、最大の危険は楽観主義そのものだ。 緩む財政 世界中の先進国では、状況が改善しているように見える。英国は成長のペースを上げている。日本経済は間近に迫る消費税の引き上げを乗り越えられそうな程度には力強く見える。欧州でさえも、見通しにこれまでほどの暗さはない。ただし、こうした回復を牽引しているのは米国だ。 米国の成長には強固な基礎がある。第1に、家計や企業のバランスシートが良好だ。民間の債務がほとんど減っていない欧州と異なり、米国は金融危機の遺物と既に決別している。住宅価格の回復がその証拠だ。 第2に、エネルギー価格が安く、数年にわたって賃金が抑制され、ドルが比較的弱いおかげで、米国には競争力がある。この2つの要因によって雇用が速いペースで拡大しており、株価の上昇とあいまって、今後は個人消費の堅調な伸びと投資の増加につながると見られる。 最後に、財政緊縮が緩和の傾向にある。2013年、連邦政府の増税と歳出削減により、国内総生産(GDP)は1.75%抑えられた。成立したばかりの予算決議によれば、2014年は財政緊縮の影響がGDP比0.5%まで減る見込みだ。これらすべてを総合すると、2014年の米国経済はトレンド成長率をはるかに上回る約3%の上昇を見せる可能性がある。 米国の企業や家計が消費を増やせば、めぐりめぐって、中国からドイツに至るあらゆる国で商品やサービスへの需要が押し上げられる。 米国の外国製品への購入意欲はかつてほどではない(経常赤字はGDP比2.2%と、15年ぶりの低水準にある)が、経済規模が非常に大きいため、消費が増えれば世界中の輸出が引き上げられる。これが成長の下支えとなり、その結果、欧州や日本でも国内の景況感が改善するはずだ。 問題は、米国経済が世界に影響を及ぼす道筋は貿易チャンネルだけではなく、さらに言えば主要な道筋ですらないという点だ。 現在の株価の急上昇を見れば分かるように、金融市場の影響力は貿易を上回っている。米国の経済が勢いづく中で、2015年半ばに予定されている1回目の金利引き上げについて、投資家は米連邦準備理事会(FRB)がこれを前倒しすると考えるかもしれない。こうした憶測は国債利回りの急上昇を招きかねない。 FRB側は、債券買い入れのペースは遅くするが、金利の引き上げを急ぐつもりはないと明言している。それでも、経済成長のペースが上がれば、投資家がこの誓約に対して疑念を抱く可能性は高まる。 英国では既に、経済成長のペースが上がったことで、イングランド銀行はそのような意図はないと断言しているにもかかわらず、金利引き上げへの期待感が生まれている。もし米国の急速な経済成長が国債利回りの急上昇につながるとしたら、かえって成長に水を差すことになりかねない。FRBが世界の金融情勢に及ぼす影響力を考えると、他国の成長に打撃を与える恐れもある。 山積する課題 さらに、より分かりにくいが、やはり有害なリスクとして、現状への満足がある。政治家は常に、厳しい改革に取り組むよりも、成長を自らの手柄にすることに熱心だ。例えば、ユーロ圏は12月も銀行同盟について先送りの態度を示したが、これは経済の回復によって課題への取り組みがおざなりになっている証しだ。先進国は取り組むべき課題が多いゆえに、こうした態度は問題だ。 米国は大量の長期失業者を抱え、障害者手当の受給者が急増している。英国は規制を緩和し、空港や道路といったインフラへの投資を強化しなければ、上昇する住宅価格に危険なほど依存する状況が続くだろう。ユーロ圏では、民間の過剰な債務が減り、若者が労働市場に戻らなければ、真の繁栄を享受することはできない。もしあまりに楽観的に感じ始めたら、以上の事柄を心に留めてほしい。JBpress>海外>Financial Times [Financial Times] 社説:高騰する米国株、バブルの危険に要注意 2014年01月07日(Tue) Financial Times (2014年1月6日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 投資家が続々と休暇から戻ってきて、取引所の立会場では2014年が世界の資産にどんな展開をもたらすかという予測が飛び交っている。とりわけ米国の株式市場が注視されている。過去12カ月間で大幅高を演じた後、米国株はいつ弾けてもおかしくないバブルだということに賭けようとする悲観論者には事欠かない。 今のところ、そうした懸念は恐らく行き過ぎている。現在の見通しは、過去の大規模な過剰投機に伴った激しい過信とほとんど共通点がない。だが、バブルの前提条件が整っていると考える根拠は存在する。リスクは、米国株が再び悲惨な興奮状態に追い込まれ、その後に崩壊が続くことだ。 マクロ経済でも企業業績でも正当化できない株高 現在の米国株に関する事実は、株価が大幅に過大評価されている可能性を示唆している。最も幅広くフォローされている米国株式市場の指標であるS&P500株価指数は信用危機後、2009年初めに大底を打って以来、約170%上昇した。2013年の1年間だけでも3分の1近く上げた。多くの人がパッしないと批判する景気回復を遂げる弱い経済という背景にもかかわらず、これだけの株高が達成されたのだ。 過去2年間の企業の利益成長は鈍く、それだけでこのような株式市場反騰を正当化するのには到底十分ではない。 特にある1つの指標が、懸念の原因となっている。エール大学のロバート・シラー教授によって世に広められたCAPEレシオ(景気循環調整後の株価収益率=PER)も株価が高すぎることを示している。長期の株価バリュエーションについては意見が分かれるが、株価を企業の利益の10年平均と比較するシラー教授の指標は、過去に正確だったことが分かっている。 米国株式市場のCAPEレシオは現在25倍。信用危機に先立つ2007年後半に相場がピークに達した時とほぼ全く同じ水準である。 また、CAPEレシオは、米連邦準備理事会(FRB)のアラン・グリーンスパン前議長が「根拠なき熱狂」について警鐘を鳴らして株価を押し下げようとした1996年12月や、長期の強気相場がピークアウトし、1970年代前半のはるかに困難な状況に道を譲った1966年当時も今と同じくらいの水準だった。 1929年の株価大暴落以降のすべての株式相場のピークを見ると、CAPEレシオの平均は21倍だった。この水準から大きく上昇することは不健全だ。だが、CAPEレシオが44倍でピークをつけた2000年のドットコム・バブルが実証したように、そのような高騰はたやすく発生し得る。 証券会社や学者はここ数カ月、指標としてのCAPEレシオの信用を落とそうとしてきたが、そのような試み自体が過剰投機の症状なのかもしれない。この状況は、投資家が企業は利益ではなくキャッシュフローに依拠して評価されるべきだと考えるようになった1989年の日本や、インターネット企業が利益の欠如ではなくクリック数やアイボールで評価された2000年の米国を彷彿させる。 整っているバブルの条件 だが、相場が既に高すぎるように見えたとしても、株価がさらに大幅に高騰する条件が整っている。すべてのバブルには、安価な信用供与が必要だ。FRBが昨年12月に毎月の債券購入を徐々に減らし始めることを決めた後でさえ、信用は低利で潤沢だ。FRBは予想以上に長期にわたり翌日物金利をゼロに据え置くと公約することで、投機を狙う人々に潤沢な資金を確約する一方、機関投資家が債券市場にとどまることを一段と困難にした。 バリュエーションは株価が通常下落し始めると思われる水準にあるが、投資家は古いルールはもう通用しないと自分に言い聞かせている。このような状況においては、政策立案者はバブルのリスクを警戒し続けなければならない。 持続可能な景気回復を確実にするために必要とされる限り、緩和型の金融政策を維持しなければならない。だが、経済成長がついに加速し始めるや否や、FRBは低利資金というパンチボウルを持ち去る用意ができていなければならない。
虚ろに響くアングロサクソンの勝利宣言 米国や英国の景気回復を素直に喜べない理由 2014年01月07日(Tue) Financial Times (2014年1月6日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 今年は、アングロサクソン諸国による勝利の雄叫びが世界に響き渡ることになるかもしれない。心の準備をしておくべきだろう。米国の景気は今年こそ完全に回復するという予想は2010年以降毎年外れてきたが、この予測に携わる人々は、2014年は違うと断言している。実際、今年は5度目の正直となりそうだ。 英国も、今年は他の欧州諸国を上回る経済成長を遂げる公算がある。オーストラリアとカナダは、今年は減速するかもしれないが、金融危機以後はほとんどの国を上回る成長を遂げている。コンマ数パーセントの差かもしれないが、英語を母国語とする国々は今年、他の裕福な国々を一歩リードしそうに思われる。 少し昔を振り返ると、アングロサクソンの国々が自慢をするようになったら警戒する必要があることが分かるだろう。 アングロサクソンの自慢には要注意 前回は1990年代にこれが見られた。米国ではインターネット革命が始まり、ニューヨークとロンドンの金融セクターがグローバル化を果たした。「歴史の終わり」が喧伝され、経済の自由化を促すワシントン・コンセンサス*1が幅を利かせた。ロンドンは地球上で最もかっこいい都市だった。 今では、ワシントンの教義は概ね無視されている。終わったはずの歴史も、中国の台頭によって蘇った。しかも世界最大の経済大国の座に近づいているこの国は、主に米国のアドバイスを無視することによってここまでのしあがってきた。 ただ2014年に入り、来るべき米国の復活が再び注目されつつある。最も有力な新材料は米国のエネルギー革命だ。米国は来年、サウジアラビアを抜いて世界最大の石油産出国になりそうだ。1970年以来の返り咲きを果たす格好だ。 サウジとは異なり、米国の供給ショックの発端は自らの創意工夫にある。自国で育てた技術により、以前は手の届かなかったエネルギー資源をくみ出せるようになったのだ。ただ、これを事態を一変させる「ゲームチェンジャー」とまで持ち上げるのはやりすぎだろう。 確かに、2020年までに500万人の雇用が新たに創出されることは大きな助けになる。だが、既に約1億7000万人の労働力人口を擁する国だけに、劇的な変化を生み出すには至らないだろう。 また、ガス価格の下落が米国内にもたらす恩恵は短期的なものにとどまるだろう。米国がエネルギー重商主義に抵抗していることに世界は感謝すべきだ。シェールガスの埋蔵量が最も多い国は中国であることも覚えておくべきだろう。 *1=世界銀行、国際通貨基金(IMF)、米国政府などが交わした途上国政策についての合意 成長率が高まっても、やはり史上最も弱々しい景気回復 米国の短期的な好調は、ユーロ圏の冴えない見通しによっても引き立てられている。しかし、米国の経済成長率が高くなったとはいえ、現在の景気回復は同国史上最も弱々しいものであるという事実を覆い隠すことはできない。英国も同様だ。 いくら持ち上げたくとも、米国は西側世界の美人コンテストで「最も不美人でないで賞」を取る(そして今年は、吹き出物のある英国が第2位になりそうだ)としか言えないのだ。 米国は前回の景気循環の拡大局面で、雇用については1つ前のピークを回復することしかできなかった。またそれは拡大局面の5年目(および最終年)に当たる2007年のことであり、1930年代の大恐慌以来のスローペースでの雇用回復だった。2009年半ばに始まった今回の拡大局面では恐らく、8年目までにその水準を回復できれば幸運だと言えるだろう。 また、その頃になっても、家計所得のメジアン(中央値)の減少傾向に歯止めがかかって増加に転じるということにはならないだろう。足元の数字は、景気回復が始まった時点の値をほぼ7%下回っている。こうした状況は英国でも同様である。 2014年は、こうした傾向がすべて力強く好転する年になり得るだろうか? 筆者の親友にはエコノミストが数人いるが、彼らは過去5回の景気後退のうち10回を予想したといち早く認めている。景気回復の想定ならもっと正確にできると考えられる理由はほとんどない。 止まってしまった時計でも1日に2度は正確な時間を指すように、今年はエコノミストの予想がついに当たるかもしれない。すべての条件が同じであれば、米国は今年、ざっと3%の経済成長を果たすだろう。英国は2.5%成長になりそうだ。ユーロ圏は逆に、1%成長できれば運が良いと言えるだろう。 歴史的な金融緩和で「買った」景気回復 だが、ほとんどのエコノミストは今年も、米国の――そして英国の――トレンド成長率を押し下げる構造的な要因を過小評価し続けるだろう。 経済には素人である筆者は、次のような懸念を抱いている。世界は、実体経済が活気を帯びる前にウォール街バブルの領域に突入するという状況になりつつある。米国と英国の景気回復は、歴史的な金融緩和で「買った」ものであり、それによって押し上げられた資産価格には既に割高感が漂い始めている。 米国の労働参加率はほぼ40年ぶりの低水準に張り付いており、その一方で、米国株式市場の株価収益率(PER)は既に平均を大幅に上回っている。 山積する懸念材料 2014年で最も気がかりなのは、大半の米国人が景気の回復を実感する前に、米連邦準備理事会(FRB)が利上げによって景気回復を減速せざるを得なくなることだ。また、その危険性は英国の方が高い。インフレ率が米国のそれよりもはるかに高いからだ。 また、米英両国の中間層には不振から立ち直る回復力があるなどと安心してはいけない。米国の中間層は、住宅ローンや自動車ローンで再びお金を借り始めている。個人消費の回復は景気循環の回復に後れを取っており、現在の金利は歴史的な低水準にある。借入金利がわずかに上昇しただけでも、個人消費の伸びは鈍ってしまう恐れがある。 一方、英国政府が住宅ローンをさらに伸ばすために展開している持ち家購入支援プログラム「Help to Buy」は、アルコール依存症患者に見られる特徴をすべて示している。「あと1度だけ不動産ブームを体験させてくれ。そうしたら絶対にやめるから」というわけだ。 また、米英両国における金融緩和の影響で所得の不平等は拡大しており、これ自体も経済成長の阻害要因になっている。とはいえ、どちらの国の景気回復も引き続きゼロ金利を基盤としている。 大半の豊かな国々から見れば、これらは贅沢な悩みかもしれない。ローマやリスボン、アテネの人々にはとても魅力的な話に聞こえるに違いない。しかし、先進国というものは、国民の大多数にどの程度の恩恵をもたらしているかによって評価されるべきだし、自国の労働力に対して行っている投資の質によっても評価されるべきだろう。 この程度で済んでいるという安堵のため息を米国がつくことは理解できる。英国については特に理解できる。両国はしかし、この経済成長を買うために支払った高い代価を軽く見るべきではない。また、好景気はすぐそこまで来ているなどと思い込むべきでもない。 By Edward Luce
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