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軽自動車が持つ「日本一人勝ち」潜在能力 クルマ業界2014展望
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20140105-00000001-wordleaf-nb
THE PAGE 2014/1/5 08:00
日本の自動車技術と言えば、多くの人はハイブリッドを思い浮かべるだろう。もちろん日本がハイブリッドにおいて最先進国なのは間違いではない。だが、実は自動車の世界で注目を集めている日本の技術は他にもある。国内では増税で優遇を削がれつつある軽自動車だが、世界市場に打って出ることができれば、日本の一人勝ちが起きてもおかしくない。
今なぜ軽自動車増税か?
年末のニュースをにぎわした話題のひとつに軽自動車税の値上げ問題があった。まずはそのあらましから見てみよう。現在の軽自動車税は年間7200円。排気量1リットル以下の普通車の税金が2万9500円であることと比較すれば極めて割安だという事がわかる。これが4月販売の新車から1万800円に引き上げられる。
官公庁の用語は一読しただけではわかりにくいが「4月販売の新車から」とは「それ以前に売られたクルマは従来通り7200円でOK」という意味になる。つまり現在市場に出回っている中古車や、3月中に購入したクルマなら当面引き上げの対象にならず、来年以降も毎年7200円しか課税されない。
これを見て、4月以降の軽自動車新車販売の好調を予想する人はいないだろう。順当に考えれば、3月までに大量の駆け込み需要が発生し、加えて中古車価格は高止まり。当分の間新車販売は振るわないことは予想がつく。不思議なのは、日本経済に光が射し始めたこのタイミングで、エコカーと共に自動車産業をけん引している一方の雄、軽自動車の税率をどうして見直さなければならなくなったのかだ。それには理由がある。
消費税増税の「玉突き」
最初に構図を説明してしまえば、消費税増税の玉突きが軽自動車税にまで及んだ結果で、簡単に言えばとばっちりなのだ。現在、国も地方も税収不足に悩まされている。そこで懸案の消費税引き上げが決まったわけだが、税の引き上げは常に様々な方面から反対意見に晒されるもの、何がしかの見返りを用意しないわけにはいかない。そこで「消費税率が10%になったら」という条件付きで自動車取得税が廃止されることになった。
しかしこれに待ったをかけたのは地方自治体だった。やり玉に上がったのは税の取り分だ。現在の消費税率5%は国に4%、地方に1%配分される。ところが自動車取得税は税率5%(軽は3%)が全部が地方の取り分。地方自治体にしてみれば看過できる話ではない。「国の増収と引き換えに地方の税収を差しだすのか!」と猛反発。この内ゲバを納めるために白羽の矢が立ったのが、地方税の軽自動車税。自動車取得税廃止による地方税の減収を軽自動車税増税で辻褄合わせする計画なのだ。
トヨタ以上の技術力を持つスズキ
ユーザーやメーカーから見るとやるせない話だが、お正月からそんな話ばかりしていても仕方が無いので、これを機に日本車が大躍進できる可能性を考えてみたい。
世界の自動車マーケットで、現在もっとも期待されているのは『ヴィッツ』や『フィット』よりさらに小さいクラス。フォルクスワーゲンなら『up!』、フィアットなら『パンダ』、ベンツの子会社であるスマートなら『スマート・フォーツー』といったミニマムクラスだ。おおよそ全長3.5メートル、全幅1.6メートル、排気量は800〜1000ccというラインに収まっている。世界的に見て最も小さいクラスだが、価格も安価なため新興国を中心に需要が増加しており、専門家の中にはその期待成長率を40%と見る人もいる。
日本独特の「軽自動車」規格
ここで思い出したいのが日本の軽自動車の規格だ。全長3.4メートル、全幅1.48メートル、排気量660cc。全ての数値がワールドミニマムクラスに比べてわずかに小さいが、極めて近い。そしてここからが大事なのだが、1955年に軽自動車規格ができて以来、国内メーカーは激しい切磋琢磨を繰り返して小さなクルマづくりの膨大なノウハウを貯め込んできた。ミニマムクラスのクルマづくりにおいて、世界一技術を持っているのは間違いなく日本なのだ。「そんなことは当たり前」という声が聞こえてきそうだが、問題はその世界一技術を持っているメーカーだ。それはトヨタではない。大方の予想を覆すそのNo.1メーカーはスズキなのだ。
2009年末、フォルクスワーゲンはスズキと提携した。当時開発中であった『up!』を魅力的な商品に仕上げるためにスズキのノウハウを必要だったと考えられる。狙いはスズキの持つ軽自動車技術だった。スズキの技術の特徴はコストと性能の高次元な両立にある。乱暴な言い方をすれば、お金をかければどこのメーカーでも良い商品を作ることができるが、簡素で安価な仕組みを用いてちゃんと走るクルマを作るという意味では世界にスズキに勝るメーカーはない。フォルクスワーゲンはそこに注目したのだ。しかしながらこの提携はたった2年で破綻した。イーブンなパートナーであったはずのフォルクスワーゲンがスズキの経営を管理すると言い出してスズキの激昂を買ったのだ。
爆発的な成長を期待されるクラスがあり、その製品を作るノウハウについて日本がリードしているなら、参入しない手はない。スズキももちろん独自にこのクラスを開発中で、2015年を目標にタイ工場での生産開始が決まっている『Aスター』がまさにこのワールドミニマムクラスの先兵になるはずだ。
「世界戦略」へ何が課題か
しかしまだ問題は少なくない。このクラスにおいて、最もポテンシャルが高い日本メーカーはスズキとダイハツだ。残念ながら体力には限りがある。規模からみても、国内販売の柱である軽自動車とワールドミニマムクラスの二正面作戦を戦うのはいかにも辛い。しかし優劣はつけられない。どちらも大事な局面だ。最良の方法は、日本のガラパゴスな軽自動車規格をワールドミニマムクラスに合わせてしまうことだ。それによって資本も人材も重点的に投入でき、生産設備や資材のコストも抑えることができる。国内戦略車と世界戦略車が共通化することでともにポテンシャルアップし、コスト競争力が増すのだ。
カーディーラーも整備拠点もない途上国で、他に先駆けて販売整備店網を築き上げてしまうことは、将来的に見てもメリットが大きい。特に初めて買う自動車、つまりスタートアップ商品の独占に成功すれば、理想的な形で地域と顧客にいち早く根差すことができる。先進国の例を見れば明らかな様に、経済発展した暁には、より大きなクラスに乗り換えが進み、労せずして利益率の高いクルマへシフトして行くことが可能になる。
かつて、米国の社会学者エズラ・ヴォーゲルは「Japan as Number One」で世界に日本型経営のブームを巻き起こした。軽自動車には、日本に誇りと実りをもたらすNo.1への可能性が詰まっている。そのためには軽自動車枠の戦略的見直しが欠かせない。世界で売るという目的を持つ以上、ガラパゴス規格を捨てて世界のスタンダードを受け入れるべきだろう。具体的には、全幅規制を1.65メートルへ拡大、排気量1リッターへの拡大、衝突安全の強化が望まれる。
カギは軽自動車規格の見直し
軽自動車税が普通自動車に比べて異様に安かった時代の終わりは、裏返せば「優遇」と引き換えに軽自動車が普通自動車を肩を並べないように、ある種罰則的に決められていた軽規格の枠組みを見直すチャンスでもある。TPPの行方はまだわからないが、米国からは軽自動車規格が非関税障壁であるとの指摘は永らく受け続けている。状況、市場、ニーズ、外圧とあらゆる要素が軽自動車の変化を求めているように見える。
「Japan as No.1」に向けて、マーケットも技術もある。あとはその実現に向けて国が具体的な地図をきちんと書いていきさえすればいい。日本の未来を切り拓く軽自動車技術には大きな希望が満ちているはずだ。
(池田直渡/モータージャーナル)
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